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Accesses The Reality Cruelty
いっしょ

 俺だけが無事に生き残った
あの事故で、俺だけが……たった一人
 他の人たちはかなりの重傷を負っているか、死んだかのどちらかだ
螢は前者に当てはまる
 ……どうして俺だけが無事に生き残ったんだ
頭に怪我をしていたのだが、それは命に何の別状も与えない軽傷だった
 俺は生き残ったもう一人の家族の顔を眺めながら、何度も自問自答していた
 どうして俺だけが生き残った
何度も何度も、螢の病室で考える
 俺は……成績は普通だし、人の話はあまり聞かないし……大した権力もない
なのに、どうして俺だけが生き残った
 螢のほうが……その価値があったはずなのに
 俺には生き残る価値なんてないはずなのに
「どうして俺だけが……」
 ……螢は……俺なんかより、ずっと優しくて……なのに……
「俺は……」
 俺はあの笑顔を取り戻すためなら、なんだってしてやる
螢のためなら……あのテロの犯人だって、突き止めて殺してみせる
 それが俺の生きた理由なのかもしれない
俺は、立ち上がる。それを実行に移そうとする
だがそれを止めたのは、昏睡状態のはずの螢だった
「パパも……ママも……」
「……ぇ」
「にぃにも……みんな……ずっといっしょ……えへへ」
 寝言……なのか?
 目を覚ますはずはない。ましてや声を出すことだって……
「みんな……いっしょ……」
「……あぁ……いっしょだよ……父さんも母さんも……俺だって」
「えへへ……」
「だから……」
 早く、帰ってきてくれ
 早く、目を覚ましてくれ
そう言おうとする頃には、もう完全に昏睡状態に入っていた
「……俺は……」
 違う。俺がするべきことは、復讐なんかじゃない
「……なんなんだよ」
 わからない。俺は、なにをすればいい
「……けど」
 俺は決めた
ここに誓う。自分に誓う。螢に誓う
 俺は……あの笑顔を取り戻す。絶対に。どんな手を使ってでも……
俺は1年前……そう、誓ったんだ


「……迷うなよ」
 テイルに魚を渡し、ギルド『グリード』の本部で寝転がりながら、言う
「俺は、誓ったんだ。あの笑顔を取り戻すためなら……なんだってしてやるって……」
 仲間を裏切ってでも……取り戻してみせる
たとえ、何が立ち塞がったとしても
「螢の……ためなら」
 たった一人の家族のためなら……仲間の母親だって、殺してやる
どんなに憎まれたって構わない。全部、背負ってやる
 これが俺の決めた選択なのだから

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あきゅろす。
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