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Accesses The Reality Cruelty
メル
 表示名は『メル』。メル・バルハルト。……ルがたくさんあるな
服装はクゥが初期に着ていたものと同じで、大きな茶色いボロマントだ
「心が読めない人間に……この辺には住んでいないはずの鳥さん。不思議不思議……フシギな組み合わせですね」
「馬鹿言え。どうせ俺のことは、クゥから聞いてるんだろ? このテイルはともかくとして」
「……ヤナギリョウスケ」
「そうだよ」
「私を、殺しに来たんですか?」
「いいや、この出会いは偶然だよ。……ふむ、そうだな……じゃあ、こういうことにしよう」
 俺はバルハルトに指先を向けて、言う
「俺たちはお前に、宣戦布告をしにきた」
「宣戦布告、ですか」
「あぁ。俺たちは明日、お前に殺しにいく。その予告だ」
「たかが人間ごときに、私が遅れを取ると思うのですか?」
「なら、いま試してみるか?」
「……いえ、やめておきましょう。動物たちがおびえていますからね」
「なんだ。案外温厚な性格なんだな」
「あなたも、そうですよね?」
「……俺が?」
「取り繕っても無駄ですよ。あなたのことは、私の可愛い娘からいろいろと聞いています」
「……」
「あなたは二つの選択を迫られ、秤にかけました。そして決断した道とは……」
「それ以上言えば、俺は今ここでお前を殺す」
「……そうですか。なら、言うことはやめておきましょう」
 と、バルハルトは俺たちに背を向けた
「宣戦布告ですか。わかりました、いいでしょう。その勝負」
 と、振り返って……殺気に満ちた瞳で、俺を捉える
「承りました」
「……そりゃどうも」
 そう言い返すと、もう振り返らずに林の中へ消えて行った
「……帰ろう、テイル」
「グ……オゥ(あ……あぁ)」
 俺は決めたんだ。みんなと別れ、クゥの母親を殺す、って
もう迷うな。やるしかないんだ
 やるしか……ないんだよ


「お帰り〜」
 テイルを洞窟内の巣へと帰し、酒場へ行くと……なぜかエミアと螢がいた
「なぜここにいる」
 とりあえず聞く
「うん? じゃあリョウスケはどうしてここに来たの?」
「理由なんてないな」
「私たちもそうなの」
 螢が答えた
「まぁ強いて言うならコーヒーを飲むため」
「……美味しいの?」
「「苦い」」
 螢もなぜかよくコーヒーをよく飲むらしく、俺と声がハモる
「あ、そう……」
 二人と同じ机の席に座ったところで一息
「テイルとの釣りはどうだった?」
「中止だよ。ま、いろいろあってなー」
「そっかぁ……それなら後でテイルにお魚買ってあげてくれないかな?」
「あいよ、リリィ」
 螢と呼んでいいのはみんながいないときだけ、だそうだ
「……明日、だよ。二人とも」
 エミアがなにについて言い出したのかは、俺と螢はすぐに理解した
「……わかってる」
「明日……明日バルハルトの肝さえ手に入れることができれば……」

「マヤを、助けられる」

「……」
 ……そうだ、俺は選んだんだ。螢のために……螢が悲しまないようにするために、この決断をした
「血もつながってないのにボクたちに優しくしてくれて……親子のように私たちの面倒を見てくれた、お婆ちゃんに」
 エミアがそう呟く
「霊介……ありがとね。手伝う、って言ってくれて」
「……あぁ」
「その……クゥちゃんって子は大丈夫なの? 母親を「大丈夫だよ」」
 なるべく優しく、意識して声を発する
「バルハルトの子っていうのは……嘘だから」
「……ほんとに?」
「あぁ」
 ……まったく。最低だな、俺
「……もう行くよ。テイルに魚を買ってやらないといけないし」
 これ以上怪しまれるのは危ないと判断し、席を立つ
そしてその後の言葉も聞かないまま、外に飛び出した

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