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Accesses The Reality Cruelty
心読
「あ……ぁああ……うぅ」
 と、もうなにを言っても無駄だったクゥが急に泣き出し始めた
「クゥちゃん……?」
 ルーが名前を呼ぶが、まだ虚空を見つめている
「わ……私は……リョウスケさんは……ぅぁあぅ……どう、して……こんな……」
「どうしたんだ、クゥ!」
 コウタが肩を揺するけれど、まったく効果はなかった
「わ、わたし……が……お母さんを……まも、らなきゃ……」
 ドンッという効果音と共にコウタを突き放し、クゥは大通りのほうへと走り出した
「クゥ!」「クゥちゃん!」「クゥさん!」
 みんなの叫びも空しく、クゥは大通りの人混みに紛れて見えなくなった


「ノアさん、マーキングは!?」
「もう、大丈夫だと思ってたから、してない」
「っ……急いでさが」
と、セイスは俺の右肩に手を置いてその言葉を遮った
そして言う
「待ってください」
「っ! どうしてだ!」
「……追うより先に、確かめるべきことがあります」
 と、セイスがなぜかマンホールを見た
「いったい、なにがあったのか」
 ……落ち着け
「……どういうことだ」
その言葉にセイスは、ひと呼吸置いて答える
「バルハルトには、心読という特殊スキルがあるんです」
「心読……心を読む、ということか」
「そうです。通常、それは純粋な生き物にしか発生しないものなんです。純粋なモンスター、純粋な人間、純粋なエルフ,ドワーフと言ったように。エルフとドワーフの子、というような者には発生しません」
「それで、霊介の心を読んだ……?」
「そうです」
 しかし、とセイスは続ける
「クゥさんは、ただのバルハルトの子ではありません。人とモンスターの間に生まれた、例外です」
「……」
「これまで、クゥさんはあなたたちの心を読むようなことをしていましたか?」
「いや……」
「つまりそれは、できないということなんです。普通とは違い、純粋なものに心読が効かない」
「……なるほど。自分に近い存在の心だけが読める。そういうことか?」
「そうです。バルハルトはこちらの考えを読みとり姿を隠すので、滅多に出会えるものではありません。しかし1ヶ月近く前、『純粋な者の心が読めない』クゥさんは捕まった」
「そうか。そして逃げ出したクゥを、俺と霊介が助けた……」
「そういうことです。クゥさんは、混血……つまり同じように、自分に近い者の心が読めるはず。コウタさん、1ヶ月前、クゥさんはリョウスケさんの心を読めていなかったようですが……この1ヶ月に、なにかあったんですか?」
「……あぁ」
 あのとき
霊介が一人でダークフェニックスと相対していたとき
 俺は、僅かながら意識があった
銀色の髪、金色の瞳
 そして纏っていた、まがまがしい黒い力
あの魔神を蒼都が追い返したところで、なんとか俺は立ち上がれた
 そして、蒼都は俺にだけこう言った
『霊介は、魔王だ』
 レミリナという出来損ないの魔王から干渉を受け、魔王となったらしい
……………………確か干渉というのは口づけのことだと言っていたが、霊介はなにをしたんだ
 まぁあいつはラノベでよくあるアホなことを本当にやりかねないからな。あり得る
つまり霊介は、魔王の力を手に入れて純粋ではなくなったということになる
 ただの人間には、干渉を受けて生き残れるはずがないらしい
人間の魔王……か
「心当たりなら、ある」
思考を無理矢理閉ざし、俺はそう言い返した
「では、彼の心を読んだのは確実でしょう。彼の元へ行きましょう。なにがあったのか……確かめる必要があります」
「あぁ」
 わからないことが多すぎる
俺はマンホールに入りながら、そう思った

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