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Limitless Conflict
化け物と人間
僕は、弱虫で、卑怯者で、臆病だ
僕には、何もできない
 そして小学、中学と……何年にも渡っていじめを受けていた
相手は冗談でも、こっちはもう、軽く死にたくなるような……そんな、気持ちだった
だから、僕は遠くで一人暮らしをして、知っている人のいない静かな日々を暮らすことを選んだんだ
なのに……
 僕は高校でまた、いじめられた
何がわるかったのだろう? 何をすればよかったのだろう?
 もう何もかも嫌になっていた
でも、そんな時
『お前ら、なにやってるんだ?』
僕を……如月涼を救ってくれたのが、親友 柊薄兎なのだ
僕の、たった一人の友達……
それは、僕の日常を支えるには十分すぎるほど、輝いてくれたんだ
そいつが今、苦しんでいる
悩んでいる。困っている。
 あの時のヒーローの姿は、どこにもない
 ただあの時の僕みたいに、苦しんでいる
だから、僕は恩返しがしたいんだ
 今度は、僕がヒーローになる番だ

「…………涼、か」
薄兎が、弱々しく言う
 その目は絶望に満ちていた
 その目は喜びに飢えていた
何もかもをこれから失うような、視線
  なんて、小さくてか弱い存在なのだろう
きっとあの時の僕も、こんな目をしていたはずだった
「……」
僕の後ろにいる女の子は、何も言わない
僕に時間をくれるのだろう
 薄兎を絶望から引きずり出す、時間を
「涼、お前はもう教室に帰れよ……授業が始まるぞ」
突き放すような視線を込めて、薄兎は言う
「戻らない」
「どうして」
「……親友が、苦しんでるから」
「俺はお前なんか親友だと思ったことはない。戻れ。目障りだ」
 言ってくれるね……
感動シーンになるはずだったのに、なんか腹が立ってきた
「あいにく『親友』は相互に刻まれているんでね。お前だけで消すことはできませんっ!」
「知るか! あいにく『親友』はこちらが削除したから、お前が勝手に親友だと思っているだけだ」
「それでも、守りたい『親友』があるんだぁああ!」
「ガンダムSEEDパクってんじゃねえ!」
大声で、怒鳴り合う
「俺はたくさんの人間を殺してきた! お前みたいな『平和』が、『非平和』に関わる必要はないんだ!」
「知るかっ! 『平和』も『非平和』も一文字違いだ! あんま変わらねぇよ」
「平凡な世界と、人殺しの世界がいっしょだとでも言いたいのか! クソ親友が」
薄兎が立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる
「殺してきたんだよ! 人間を! なんの罪もない人間さえ!」
薄兎が、僕の胸ぐらを掴み、叫ぶ
「それこそ、母親だって!」
……いつのまにか、薄兎の目には涙が溢れだしてきていた
「化け物なんだよ! 俺は! 人とは違うんだ! いつまでも友達じゃいられないんだよ……! ……お前を巻き込みたくないんだ……もう誰も殺したくないんだ……だから……もう、関わらないでくれ……!」
そう言って、手を降ろす
「……」
「化け物は、人とは生きられない」

化け物 人殺しの世界 母親殺し 罪のない人を殺した 誰も殺したくない ……関わるな?

「ふざけんなっ!」

今度は、僕が薄兎の胸ぐらを掴んで、持ち上げた
 こんなことしたの、初めてだよ……
だから、よく聞け
「化け物と人は友達じゃいられない? そんな規則誰が作った! いられないんなら、いられれば世界初の記録更新じゃねぇか」
僕は、叫ぶ
「だったら僕たちが、記録を作ってやればいい! 規則を作り替えればいい!」
「バカ言うなっ! 俺は殺人鬼だぞ!」
「殺したきゃ殺せ! どうせ目の前のヒーローに救ってもらった命だ!」
「っ!」

「さぁ答えろ親友! お前には二択しかない。僕を殺すか、僕と生きるか、だ」

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