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Limitless Conflict
過去
体育館倉庫というのは、隠れるのに丁度良いところだ
静かに何かを考えたかったり、なにも見たくない時にも、丁度良いところだ
「……秘密を……知られた……」
暗い暗い倉庫の奥で、そう呟いた
「殺……す? いや……だ……俺は……もう……誰も殺したく……」
……せっかく……慣れてきたのに……こんなに動揺したままだと……また……
「くぅ……」
落ち着け……落ち着け……落ち着くんだ……
血を、抑えつけろ……
「…………よ……し」

……この血は、憎むべき血だ
 この血は、拒むべき血だ


17年前……西暦1998年、5月7日、22時00分。
俺は、その時に生まれた。
 そして同時に…………母親が、死んだ
出産に耐えられなかったという名目になっているが、本当は違った
俺は、知っている

俺が、殺したんだ

出産のための手術が始まると同時、俺は母親の腹をぶち破った
普通の赤ん坊には不可能だっただろう
だが俺は破った
そしてそのまま、内蔵の全てを壊し殺した
そうして、俺は生まれた

西暦1998年、6月13日。
その不可能をやってのけた俺の家に、医者がやってきた
 俺が母親を殺したという事実は、その手術に居合わせた人々しか知らない
その医者は、その一人だ
 その医者は俺の血を研究するために、金と引き替えに血を貰うことになった
母親の死体から検出した血からでは、駄目だったのだろう
俺の異常な血でなければ……
医者は注射で検出しようとした
そして、俺はその前に医者の注射を奪い取り、心臓に刺して殺した
周りの取り押さえようとした奴らも、殺した
そこから、この血は自己防衛時に殺人衝動に駆られ、身体能力が圧倒的に強化されることがわかった

1999年、7月3日
俺の父親が失踪した
まだ赤子だった俺は、義理の妹のいるお爺さん達の家へ預けられた
お爺さん達は医者の依頼などを全て断り、俺を守ってくれた

西暦2004年、3月24日
行方不明だったお婆さんの死体が見つかる
 これは、俺ではない
俺には他の子供と違って、3歳以下の全ての記憶があり、物心がついた頃から血のことを理解していたので、わかる

2004年、4月27日
激しくちょっかいを出してきた同い年の人間を半殺しにする
この頃から、血を抑えつけることを覚えた
 そして5月2日
半殺しにした人の友達と思われる奴らから大勢で仕返しを受けた
しかし、ほとんどの奴らを半殺しにして、一人を殺した
その後、俺は少年院に送られた

この頃の記憶は曖昧だ
西暦2004~2005にかけて、少年院で俺に激しくちょっかいを出してきた奴らを、全員殺害。
 警察がいろいろなことを検討し、最終的に俺はお爺さんの家へと戻された
しかし、学校に行かないという条件付きで
 その後、中学入学許可が降りた
そして特別教室授業での授業を繰り返し、卒業
 その後は一人暮らしになり、近くのこの区留伎高校に入学
そうして、今に至る


「くそ……嫌なこと思い出しちまった……」
……沢山の人を殺してきた
この血のせいで……
 ……いや、血のせいにしちゃいけないんだ
そう。俺が、殺したんだ

「……薄兎?」
倉庫の扉が、開かれる
外の光が、眩しい
「…………涼、か」

もう、俺は誰も殺したくないんだ
 だから……俺は……

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あきゅろす。
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