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Limitless Conflict
秘密を知る
「薄兎……」
後ろから、声が聞こえた
 誰だろうか。私に知り合いなんてほとんどいないし、名前を呼ばれたのは目の前の少女なのだからーーいや、本当に名前があってるのかわからないがーー私には関係ないだろう
だけど、薄兎……っていうのは、男みたいな名前だなあ
「り……涼……」
目を大きく開き、驚愕の顔を晒しながら、目の前の少女は彼ーー涼という名前らしい茶髪メガネの少年ーーから一歩下がる
いや、今の私にとってはそんなことはどうでもいい
私が確かめないといけないのは、この少女があの血を持っているか……だ
場合によっては……
「どうして……ここに……」
薄兎という少女が、また一歩下がる
それに反応するように、少年は足を踏み出す
「窓から薄兎が見えたから」
「っ……!」
さらに、彼女は一歩下がる
「このタイミングってことは……涼、お前……見た……のか?」
そして、また彼も一歩踏み出す
「うん。見えたよ。さっきの……変わり様」
「っ!!」
彼女はまた一歩下がろうとしたが、足を踏み外して転ぶ
それほど動揺していたのだろう
しかしその代わり、涼という少年が一歩踏み出した
「じゃあ……じゃあ!」
震える声で、震える瞳で、彼女はさらに問う
 これほどまでに動揺するなんて……いったい……
「じゃあ……お前は……俺の秘密を……? 俺がこれまで内緒にし続けてきた……秘密を?」
……え? 俺?
「……多少は」
「っっっ!!!」
涼とやらが答えると同時、彼女……?は立ち上がって逃げ始めた
「あ、薄兎!」
それを彼は追いかけようとするが、私はそれを引き留める
「待て」
「うん? いつもなら喜んでお相手してあげられるんだけど、いまは……」
「いや、聞きたいことがあるだけ」
そう言って、私は人差し指を立てて、言った
「さっきの子って……男?」
するとこの少年は即答した
「そだよ」
「……ホントに?」
「うん」
……あんな姿なのに、男?
いや、確かによく考えたら姿以外、言動も何もかも男みたいだったけど……
「って」
いまはそれより、彼を追いかけないと
「行こう」
そうして、私はまだ初対面の相手といっしょに走り出した

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あきゅろす。
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