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Limitless Conflict
疼く血の衝動
午前中の授業が終わった
授業に出たわけではないが、少し疲れた
実は、一度不良共から女の子を助けたのだが、去ったすぐ後に奇襲を受けたのだ
すぐ返り打ちにしたが、10人くらいが相手だったから疲れるのは当たり前だろう
「……ふぅ」
……もう、襲っては来ないようだ
周りを厳重に確認しながら、芝生に腰を下ろす
そして、さきほど購買で買ってきたパンを口に入れて、休む
「……平和……なんだよな」
不良に襲われるなどということは、普通の学生にとっては大変なことなんだろうが、俺は違う
俺は周りとは、違う
平和の基準すらも、違う
「平和、安心、幸せ……か」
……そして、至福……か?
少なくとも、俺にとって今は平和ではあるが、安心はしない。幸せもないし、至福もない
平和と幸せには、大きな差がある
平和=幸せ などという考えは、間違っている
仮に、生活が安定していて学校生活がきちんと送れていても、それは幸せと言えるのか?
言える者もいるだろう。だが違うと言う者もいる
欲しい物が手に入らない。これは平和な願いだが、幸せを遠ざける願いだ
明日が嫌いなテストだ。これも平和な言い分ではあるが、幸せを遠ざけている
……つまりは、
「……みんな、平和が欲しいんじゃなく、幸せが欲しいんだよな」
そうだ。平和じゃなくとも、幸せであればいい
それが人間の願いだ
そして、それはきっと俺も……
「……なにしてるの?」
「……ふぁ?」
気づくと、隣に人がいた
確か……今日助けた女の子だ
そして、パンを加えたまま考え事をしていて、随分とアホな格好になっていただろう俺に、彼女は言った
「……とりあえず食べきったら?」
「おふぉほはひはまへはへへほはいはふ(お言葉に甘えさせて貰います)」
ゴクンッ と一飲みにして、再び隣に目を向ける
「それで、なに?」
「……よく一飲みになんかできたわね……」
「お誉めをありがとうございます」
ふざけて言ったというのに、この少女は真剣に答えた
「……馬鹿?」
「違う」
即答して、とりあえず間を計り、距離を取る
「……?」
「いや、気にしなくていいよ」
俺の近くは、危ないから……ね
自分の意志に関係なく、近くにいると危ないんだ
「……まぁいいわ」
とりあえず、俺の秘密に気づかないことに安心して、話の続きを聞く
「あなた、あの後もう一度襲われたでしょ?」
「えっ!?」
見てた……のか?
「やっぱり」
……予想かよ!
ビビッた。秘密を少し知られたかと思った
「その……とりあえず、謝っとく。ごめんね」
ふむ、いつもならこの弱みを元に言葉で食ってかかりたいところだが……
普通に言っておこう
「……いや、いいよ。こっちも助かったし」

「……助かった?」

あ……やば……
「それってどういうこと……」
やばいやばいやばいやばい!
秘密が、バレる!?
「い……いや、深い意味は……」
これはマズイ……
逃げないと……
そう思った俺は、すぐに立ち上がろうとする
しかし彼女は俺を逃さない
彼女は、俺の左腕をきっちりと掴んできたのだ
「ーーーっ!?」
「逃がさない」
「や……やめろ! そんなに強く掴まれると……」
やば……い……血が……

 血が……疼く……

思考が反転する。なにも考えられなくなる
そして、体中にある衝動が走り出した
その衝動を引き起こす血は全身に回り、そして……

 全てを、殺すために……

「ーーーっ!? 離せ!」
しかし間一髪で、俺は彼女を引き離した
だが、彼女は問う
「……なに……いまのは?」
「……」

[Before][Next]

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