如月さま(相互記念)
※桜子→アゲハ
title:ホワイト・バタフライ
夜科アゲハ
クラスが一緒になるよりも前からその名前は知っていた。
彼の名前を知ったのは偶然。
廊下に貼られた他のクラスの子達の絵をなんとなく眺めていたその時、一枚の絵に目を奪われる。
正確には絵じゃなくて、絵の下につけらた小さな長方形の紙に書かれた名前だ。その名前に幼い私は心を掴まれた。
夜科アゲハ
なんてきれいな名前、ただ単純に、けれど強くそう思った。
そっと、名前が書かれた紙に触れ、瞳を閉じる。
その名前に触れた時、夜闇に浮かぶ白い蝶々が心に浮かんだ。
朧気な光を放つ白い蝶々に幼い手を伸ばす。でも、届かない。ふわりと私の手をすり抜けていく蝶々。
私の近くを照らすように羽ばたいているのに決して触れることは出来ない。
触れたいのに触れられない。
それでも、どうしても私はこの白い蝶々触れたいと思った。
だって、とってもきれいなんだもの。
私はその蝶々に触れようと、何度も何度も夜闇に手を伸ばし続ける。
柔らかいものが身体を包む感覚に、意識が戻される。
ぼんやりとした視界の中に、私の生活にすっかり馴染んだ顔。
「…夜科…?」
あたりを見渡すと、そこは私の部屋。私の体にはタオルケットがかけられている。
私を現実に戻したのは、夜科がかけてくれたこのタオルケットだったのね。
「わり、起こしたか?」
今日も夜科のPSIの特訓をしていたことを思い出す。私はいつものようにベッドの上にいる。そうだ、こっちが現実。さっきまでの光景は夢。
「うんん、ごめんなさい。私、いつの間にか寝ちゃってた…」
「眉毛が下がったお前の顔とか久しぶりに見た」
そう言って、夜科が笑う。その笑顔に、あの白い蝶々が重なる。
「夜科…」
あの情景の夜闇は、私に孤独を突きつける広くて冷たいこの世界なんだわ。
「ん…?」
優しい夜科の声が体中に染みわたる。
不思議、傍らに誰かがいるだけでこんなにも安心できるのね。
ドサリ
身体が床に倒れる音が静かな部屋に響く。
ベッドから飛び出して抱きついた私を夜科が抱きとめてくれたから私は痛みを全く感じなかった。
「ああああああああああああ雨宮…っ!?」
耳元で聞こえる夜科の声は、やっぱり心地が良い。
「あったかい…」
「なななななななんだ!?」
「子どもの頃…何にも知らなかったから、毎日無邪気に楽しかったわ…」
「は?…雨宮?」
「でも…なんにも分からないフリをしていたのかも…どこかで“イイコでいなきゃ見捨てられる”って不安だったのかもしれない」
「よくわかんねぇけど…オレは雨宮を見捨てたりしないぞ」
「うん、分かってる。ありがと、夜科」
“夜科アゲハ”と“白い蝶々”と“夜闇に手を伸ばし続ける幼い私”が、今この現実とリンクする。
ねぇ、あの幼かった私は、こうなることを予知していたの?
あのきれいな名前の持ち主は
元気いっぱいの男の子だった。
お母さんを亡くしてからは
その悲しみを怒りで覆い隠す
かのように暴れていたけれど
それは
大切な人を想うからであって
そんな彼の真っ直ぐな優しさに
やっぱり私は
惹かれていたんだと思う。
闇に飲み込まれることのない
あの白い蝶々のような彼の光に
救われてきたのは私のほう。
ねぇ、幼かった私。
長い時間をかけて、ようやくあの光を掴まえられたよ。
「やっと触れられた」
「おい、雨宮?寝ぼけてるのか?」
「寝ぼけてなんかないわ。夜科には私の繊細な気持ちとか分かんないからいいの。教えてあげない」
「…いきなり飛びついてきてその態度か…」
「うん」
だって、もうあの白い蝶々は私のものだもの。
end.
2008/10/27
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如月様!
相互リンク、ありがとうございます♪
如月様よりいただく拍手やらコメントにどれほどのエネルギーをいただいたことか…っ!
本当にありがとうございます!
チキンゆえ、他サイトさまと積極的に交流できない私にとっては、こうやって声をかけていただけるととても嬉しいです。
これからも夜桜LOVE仲間としてよろしくお願いいたします。
そして、密かに結界師の良×時仲間としても大好きです!(最近夕→時に悶えてますが、基本は良×時です。というか良→時)
リクいただきました、桜子→→←夜科ですが…ちょっとでも楽しんでいただければ幸いです…。妄想甚だしいのですが…大丈夫だろうか…(自問)
あわわ。。書き直しもいたしますので、じゃんじゃん申しつけくださいませ☆
ではでは☆
あ、女王様ネタはまた違う形でアップしますね♪これは霧雨になるかもです☆
えぃ。
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