如月さま(41000hits)
※PSYREN 夜桜
title:本日は晴天なり。
早く来て
待っているのに
そんなところにいないで
此処…此処にいるの
今すぐ、今すぐ来て
早く私を見つけて…
「…姐さん、あんまりオレに授業をサボらせるなよ」
ただでさえも授業の中身なんて理解できなず留年の危機を感じているというのに、とブツブツ言うオレとは対照的に雨宮は上機嫌だった。
雨宮は珍しく鼻歌まじりで軽やかに歩く。
オレはその微かな声に耳を傾ける。
どこかで聞いたことのあるメロディ、ああそうだ、祭先生のピアノだ。
小さな声で音を紡ぐ横顔が楽しそうで、雨宮を楽しい気持ちにさせているのは祭先生の音楽なのか、オレが隣にいるからなのか、あるいはその両方か…なんてことを少しだけ考えて、止めた。
ひとまず、気になることを雨宮に訊いてみる。
「…で、なんで学校をサボらせたんだよ?わざわざPSIまで使って呼び出したりしてさ」
雨宮が鼻歌と歩みを止めてオレを見上げる。大きな眸にオレが映る。そして、雨宮は何も言わずに空を指差した。
雨宮が指した方向にオレも視線を動かす。
どこまでも青い空が広がっていた。
「…もしかして、」
嫌な予感がした。
そういや今日は平日なのに、コイツは制服しら着てねぇし。
「今日は一日中、気持ちの良い天気なんですって」
また珍しく雨宮がにっこりと笑った。
「…天気が良いから遊べってか?」
「そうよ」
オレに背を向け雨宮は鼻歌と歩みを再開した。
「…ご機嫌だな…」
小さな背中に向けて声をかけると、雨宮がくるりと舞ってまたオレを見る。
「うん、だって楽しいもん」
教室で見せる無表情とは真逆の顔で雨宮がそう言った。
「…そうかよ」
ああもう、お前が楽しいならまぁいっか、とか簡単に流されてしまうオレもオレだけど。
「ねぇ朝河くんも呼ぼうかな?」
子どもみたいに無邪気な表情でオレを見上げた。
「急に私の声が聞こえたら、夜科みたいに朝河くんもびっくりするかな?」
クスクスと笑い声をあげる。
『夜科みたいに』って、オレが学校で初めてテレパシーで呼び出されたあの時を、雨宮は何処からか見ていたのかよ?マジでか。
椅子から盛大にコケたことを思い出して情けなくなる。
雨宮は笑うことを止めない。こりゃまた変なテンションのスイッチが入ったか?
「前の映画みたいにまた3人で遊んだら楽しいと思うの」
瞳をキラキラと輝かせながら、雨宮が言う。
「…止めとけって、どーせ学校じゃあクールキャラとかなんじゃねぇの、アイツ。そんな奴が椅子からズッコケた日にゃ恥ずかしさのあまりに登校拒否になるぞ」
雨宮が少し黙ってから、笑った。
ヒリューが椅子からコケるところでも想像したのだろうか?その声が段々と大きくなり、口を開けて笑い出した。雨宮がこんだけ大笑いしている姿を見るのは謎の映画『スター・ニャーズ・エピソード5』以来だ。
「そっか、なら仕方ないね。夜科だけで我慢してあげるわ」
笑いすぎて溢れた涙を拭いながら雨宮が言った。
かわいいなぁ、オイ。
「…そーしてください」
体よくヒリューの参加を阻止し、雨宮との二人っきりでのデイツを手に入れる。
「何して遊ぼうか?」
「雨宮の好きなようにドウゾ」
「じゃあ、海に行きたい」
「電車に乗ってか?」
「ウン!ボールも買っていこう、フリスビーもいいね」
何を買っていこうかと、指折り数える雨宮。
映画デイツの日のキャッチボールを思い出し、またしごかれるのか、とオレは思った。
「早く、行こう!夜科!」
本当に楽しそうに笑う雨宮。こんな笑顔で海の波の水際でキャッキャッとハシャがられたら、オレは癒されまくるだろうな、なんて妄想しながら雨宮の隣りを歩く。
まぁ、きっと渾身の力で投げられたフリスビーを「ちゃんと受け取ってね」なんて無茶な要求もされるんだろうけど。
「ハイハイ、何処までもお供します」
雨宮の笑顔が見られるなら、それでいいかなんて思うわけです。
君が傍にいて、嬉しい
end.
2008/10/21***************
アトガキ
如月様!
41000Hitsを素敵に踏んでくださりありがとうございました。
大変お待たせいたしました。
夜桜でございます。
「ハイテンション桜子」ということでしたが、根暗な私のハイテンションはこんな感じとなってしまいました。。
すみません…。
でも、夜→桜な感じが書いていて楽しかったです♪
よろしければもらってやってください♪
素敵なリクをありがとうございました。
ではでは、これからもよろしくお願いいたします♪
えぃ。
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