[通常モード] [URL送信]
シュウさま(40000Hits)
※アレ→リナ
※初期の頃っぽいイメージ




title:call me






任務の為、アレンはフードを目深にかぶり、久しぶりに町を歩く。

人の多いところは、その数が多い分だけアクマに遭う確率が上がる。
だから、緊張感を保ち続けなければならない。

周囲の音がやけに冴え冴えとアレンの耳に届いた。

不意に「だーれだ?」という明るい声と、「きゃあ!」という短い女性の悲鳴が響き、アレンは反射的に声のした方に振り向く。

そこには若い女性と、その背後に若い男が立っていた。青年は背後から手で女性を目隠ししている。
アレンの左目は、彼らがアクマではないことを告げる。
新手の痴漢だろうか、もしそうならあの女性を助けなくてはならない、と思いアレンはその光景を見つめ続けた。

若い女性が「もぅ、ジャックでしょぉ?」と甘えた声を出す。

どうやら、それは彼女の背後に立つ青年の名前のようで、名前を当てられて嬉しそうに笑顔を零した。
青年は照れくさそうにその女性から手を放す。彼女は幸せそうな笑顔を青年に向けた。

それから互いの指を絡ませ手を繋ぎながら、仲睦まじく二人で人混みの中に消えていった。

ほんの数十秒の光景が、ひどく鮮明にアレンの心に残った。

「ああいうの…流行っているんですかね…?」

ポツリと独り言をこぼす。
そして、

「ホームに帰ったら、アレ…リナリーにやってみたいな…」

突然の目隠しにも怒らずに、リナリーも「アレンくんでしょう?」と言って微笑んでくれるだろうかと、心の中であの光景に愛しい人を重ねながら、そうアレンは呟いた。





任務が終わり、ホームに着く。

コムイへの報告を早々に終え、アレンはリナリーを探し始めた。心の中の光景を現実のものとするために。

背後からそっと近付いて


リナリーが、多くの時間を過ごしている科学班のラボにはいなかった。

この手で可憐な瞳を覆い


広いホームの中を愛しいひとを求めてアレンは歩く。

可愛い耳元へそっと囁く


「あ…」

「だぁれだ?」と君に囁く。


アレンは前方に、一人で歩くリナリーを見つけた。

“ごっこ”遊びで十分だから
あの幸せな恋人たちの光景を

君と


駆け出したい逸る気持ちを抑える。
ゆっくりと気付かれないように気配を消しながら、リナリーに近付く。

あと少しで、手を伸ばせば触れられる距離。

手を伸ばせば…

この呪われた手で

君に触れることは赦されるの?












アレンの足がピタリと止まった。
リナリーはアレンの存在に気付かずに歩き続ける。

二人の間の距離が少しずつ広がっていく。
それを見ていたくなくてアレンは目をギュッと閉じた。

グローブをしているとはいえ、こんな異形の手で触れられて気分が良い筈がない、浮かれてそこまで考えが至らなかった自分を責め罰を与えるかのように、アレンは自分の左腕を強く掴んだ。




「アレンくん…?」



優しい声に導かれ、アレンはゆっくりと瞳を開いた。
目の前にはリナリーの顔があった。
これは夢だろうか?とアレンは思った。

「リナリ…?」

アレンから名前を紡がれたリナリーはにっこりと笑った。

「アレンくん、おかえりなさい!任務おつかれさま!怪我とかない?…顔色がちょっと悪いみたい…?大丈夫?」

「だいじょ…ぶです…でも、どうして、僕に…?」

言葉足らずなアレンの科白だった。それでも、リナリーにはアレンの言いたいことが伝わった。

「なんとなく、名前を呼ばれたような気がして振り向いたらアレンくんがいたの」

リナリーの表情が心配げに曇る。

「…ねぇ、アレンくん。さっきから、左腕を押さえてるけど、痛いの?顔色も悪いし…」

白い手が伸びてきて、アレンの左手に触れた。

「あ…」

細い指がアレンの左手に絡められる。

「痛い?しびれるの?私の手を握れる?」

自分の指の間にリナリーの指が絡まっていることに現実感がもてず、他人事のようにアレンは眺めた。
数秒間ぼんやりと手を見つめ、不意に昼間に見た、若い恋人達の光景を思い出した。
あの恋人達もちょうど今みたいに互いの指が絡まって、ただ手を握るよりずっと近しい感じだったと思うや否や、アレンの思考が覚醒した。

「っ!!!!…ハイ!!!!握れます!」

急にハキハキと話し出したアレンに、リナリーは驚いた表情を向ける。
アレンはリナリーの手をギューっと握った。
そこで、はたとアレンの表情が曇った。うかがうようにリナリーを見つめる。

「……嫌じゃないですか?僕がこうしてリナリーに触れるのは…?」

リナリーはキョトンとした表情を浮かべて、それから優しく笑った。

「どうして?私から『握って』って言ったのよ?」

「…でも…この手は……」

「アレンくんはアレンくんだもん」

繋いだ手をリナリーも強く握り返した。

「アレンくんのこの腕は守る腕だもの」

真っ直ぐとアレンの瞳を見つめ、リナリーは力強く微笑んだ。

「ありがとう、リナリー」

ああ泣いて縋ってしまいそうだ、そうアレンは思った。









あの恋人達の光景に
こんなにも心惹かれたのは

互いの存在を
赦しあっているように
見えたから…

“ごっこ”でもいいから
こんな僕でも
君の近くに存在してもいいと

赦されたかったんだ。




2008/10/08


end.



*************
シュウさま

記念すべき40000打を素敵に踏んでくださりありがとうございました♪
アレリナです。

アレンさんがちょっぴりヘタレになりすぎた感があり…ご、ごめんなさい…;;

あああ愛だけは…愛だけはあるんです…;;

こんなのでよければお持ち帰りください♪

シュウ様に限りましてお持ち帰り可です。

ではでは、素敵なリクをありがとうございました☆

えぃ。


[前へ][次へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!