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夾月紗桃様(37000hits)
※ラビ→リナ


title:きつくきつく蓋をして



パタパタとゴーレムの羽ばたく音と、紙をめくる音だけが静かな資料室に響いていた。

コムイから「リナリー、ごめん。これを整理しといてくれるかな」と任された大量の報告書。
それを、「さてどうやって運ぼうかしら」と思案しているところにラビがたまたま通りかかった。
そして、二人で報告書を資料室まで運び、今リナリーラビは二人きりで報告書の整理をしている。




ラビは向かいに座り、報告書に黙々と向き合うリナリーを見つめた。

薄暗い部屋にオレンジ色のランプの灯がリナリーの象牙色の肌を染めていた。

その様子がとても綺麗で、ラビは食い入るように見つめた。

はじめは、じっくりとリナリーの顔を見つめていられるだけで充分だった。
しかし、時間の経過と共に、ラビの心はそれだけでは満たされなくなっていった。


ラビがどんなに熱っぽく見つめていても、リナリーはその視線に気付くことなく、黙々と作業を進める。

“気づかれない、寂しさ”

その寂しさに耐えきれなくなり、なんとかリナリーの注意をひけないだろうかと思案し、ラビが口を開いた。

「リナリーのブラコンはどうしたら治るんかな?」

突然の問い掛けに、リナリーはおどろいた表情でラビを見上げた。
やっとリナリーと視線が合わせることが出来たと、ラビはにっこりと笑った。

「…それを私に訊かれても…というかブラコンじゃないわ、私」

少しだけムッとした表情がまた可愛くて、更に頬が緩む。

「そっか…残念さ」

「ラビ…?疲れちゃった?少し休む?」

心配そうな表情で見つめてくる眸に、ラビはまた満足する。

「んー…別に。ただ一生懸命な顔のリナリーもいいなぁーと思ってさ」

「また、からかうんだから…」

「からかってねぇさ」

「そうかしら?」

リナリーとのこうしたやり取りが好きなラビは、ますます満足そうに笑みを深めた。


ふと、リナリーが手元の書類に視線を落とした。

そんな些細なリナリーの仕草が、ラビの心のスイッチを押した。

「…オレと話すより、コムイに頼まれた仕事をやりたい?」

ラビの二度目の問いかけに、リナリーの瞳は再びラビを映す。

「…さっきから兄さんの名前ばっかりね?」

「せっかくの二人きりのチャンスに他の男に夢中なのは面白くないさ」

いつものような軽い口調なのに、ラビの眸だけは笑っていない。

「…ラビ?」

居心地の悪い変な感覚がリナリーを襲う。

「…オレが怖い?」

心を見透かすようなラビの冷たい眸をリナリーは真っ直ぐに見つめる。

「…怖くないわ…」

「…ウソツキ」

「嘘じゃない…ラビは仲間だもん、怖いなんて思わない」

「仲間か…まぁいいけど。…なぁ、リナリーは、“こっち見て”って言わんとオレを見てくれねーの?」

「さっきから、ラビの言いたいことがよくわからないわ」

「リナリーが分かろうとしないだけさ」

「…“分かろうとしない”…?」

ラビから責められているように感じ、自分の知らぬ間に、ラビを傷つけるような何かをしてしまっただろうかと自問する。しかし、ラビを怒らせるような出来事を思い出せず、リナリーは泣き出しそうな表情を浮かべた。

そんな表情も可愛いと思い、それと同時にラビの心に罪悪感が生まれた。


君に抱く想いは美しくて
優しいものだけではない。
どろどろとした嫉妬も独占欲も劣情もある。

それでも

告げるつもりもない想いを、
“分かって欲しい”と思うのはエゴだ。




「うそ、ごめん。意地悪言って悪かったさ、リナリー」

テーブルにガバリと両手をついて、勢いよく頭を下げた。

「!?…ラビ…?」

「リナリーは何も悪くねーから!コムイから頼まれた仕事にちょっと飽きて、リナリーにかまって欲しくなったんさ」

「え?え?ラビ?とりあえず顔をあげて?」

ラビがゆっくりと顔をあげると、困ったような驚いたような表情のリナリーの顔が見えた。

ああやっぱり可愛い、とラビの心に愛しさが涌いてきて自然と笑みがこぼれる。

ラビの柔らかに笑みに、リナリーの心臓がドキリと跳ねた。
リナリーのそんな心の機微には気付かず、ラビが謝罪の言葉を紡いだ。

「ごめんな、リナリー」

「ラビ…」

先刻のラビの言葉の意味をリナリーは理解できないままだった。しかし、今、ラビに説明を求めたとしてもきっと上手くはぐらかされてしまうだろう、とリナリーは思った。
ラビと出会ってから2年。
その2年でラビの人となりをリナリーは大分把握してきていた。

それに…
ラビの優しい笑顔をみていると、まぁいいか、と許せてしまうのよね、とリナリーは思う。

「もう」と小さく呟いて、リナリーもラビに笑顔を向けた。

暫し、黙ったまま互いの笑顔を見つめ合う。

「…よし、そろそろ腹も空いてきたし、さっさとコレの片付けを終わらすかー」

「うん!」






深奥に沈めた想い










end.

2008/09/26




***********
アトガキ

夾月紗桃さま

お待たせいたしました!
ラビリナ切甘SS…です。

甘い…甘くないかもしれない…(反省)

楽しんでいただけたら幸いです。

これからもよろしくお願いします♪


えぃ。


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あきゅろす。
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