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記念物


どうして?
なんで僕がこんな目に遭ってしまうの?
僕はこれから先、ずっとずっと…。



早く、早く逃げなければ。
捕まったら、また殴られる。
今日こそ殴られるだけじゃすまないかもしれない。



「あ!優太、こんなところにいたのかよ!!早くみんなで遊ぼうぜ!!」

「稲次くん…」

「また苗字!!いけないんだぞ!そんなんだからオレ以外から嫌われるんだ!!謝れよ!」

「ご、ごめん…」



幸か不幸か、稲次くんが逃げた先にいたから、親衛隊の手から逃れることができた。
けれど、稲次くんがいるということは…。



「アレン!って…またお前かよ。」

「うわー…まだ生きてたんだ。」



いつも稲次くんといる、一匹狼と言われていた不良と、爽やか系で1年生なのに唯一レギュラー入りしたバスケ部の人からの悪態。
言葉は慣れっこでも、辛いものは辛いから苦手なんだ。
けれど、稲次くんに強く…痣ができるほどに強く掴まれてるから逃げることすらできない。



「こら!そんなこと言っちゃいけないんだぞ!!優太はオレの親友なんだから!!」

「騒がしいな。あ?なんだアレンか…。早く俺のものになれよ。」

「せ、センセーなんだろ!そういうのいけないんだぞ!!あ、でも卒業したらいいのか!」



ドンッと突き飛ばしたのはホストみたいな格好の担任。
とにかく、僕が稲次くんに接触してくることが嫌なようで、こうして力づくでも引き剥がしてくる。
その時に僕が尻餅つこうが、よろめいて頭をぶつけようが、階段近くでバランス崩して落ちようが御構い無しだ。



僕はそっと気づかれないように、寮へ帰ることにした。



僕はイジメられている。
始まりは時期外れの転入生、稲次アレンくんが来たことによる。
たまたま隣の席、というだけだったのに親友認定されてしまった。
それだけなら、良かったんだ。
声が大きくても、我儘でも、僕にはない明るさを持つ、僕にとって初めての親友だったから。
けれど、稲次くんはこの全寮制男子学園の生徒会や話題に上がるような…とにかく美形の人たちをも虜にしてしまっていた。
つい最近、もっさりした髪と瓶の底のような眼鏡の下の天使のような美貌を晒すようになってからは尚更で…。
そんな稲次くんの隣にいる僕は、小さい頃から不細工とイジメられている容姿。
あっという間に、親友には相応しくない、と親衛隊や稲次くんの友達から制裁という名のイジメを受ける対象になってしまった。
そしていつからか気がついた。
親友なんて体の良い言葉で、本当の意味で稲次くんは親友とは思ってないこと。
僕はただの引き立て役なんだろう…。
親友、って言葉にすがって助けを求めた僕を心底嘲る顔を見たあの日から、とてもとても彼の事が怖くなった。



学園を去ろうともしたんだ。
けれど、稲次くんが悲しむからという理由で退学届は受理されなかった。



日々受ける嫌がらせに、暴力、そして稲次くん自身から与えられるストレスに、心身ともに弱り果てていた。
いっそ、死んでしまった方が良いのかもしれない。
磨耗した心は、ついそんな事を考えてしまう。



「こんな世界からいなくなれれば良いのになぁ…」



いっぱい泣きすぎて、最近じゃ泣くことすら出来なくなった僕の頬に空から雫が落ちる。
その時だ。



「優太!!なんで勝手に帰るんだよ!」



生徒会の面々と、不良、バスケ部の人、担任を伴ってこちらに走ってきた稲次くんに、グイッと強い力で掴まれて、みしりと腕が悲鳴をあげた。
顔を歪めて、放してと叫ぼうとした瞬間。



ガッシャァァァアンッ!!



空が光ったと思ったら、凄まじい音が聞こえた。
そのあまりの出来事に気を失った。


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あきゅろす。
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