記念物
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闇オークションの日。
会場へ移動され、そのすぐ後に開始されるはずだったオークションは、クロユリではない人物によって止められた。
「全て終わりです。父上、兄上…。」
「何故、お前が…ヒイロ。」
「全て知ってしまったから…。穢れた公爵家などもう要らないのですよ。」
ヒイロ様自身が、公爵家の悪行に終止符を打った。
その姿は凛としていて、誤って触れれば切れそうな鋭さを持っていた。
ヒイロ様の指示の下、捕らえられるアカガネ公爵と、次期当主、そのほか大勢の関係者。
終わりなど呆気のないものだった。
一番に愛していた者からの断罪は、何よりも重くのしかかる事だろう。
「キーロ!」
「ヒイロ様…。」
「無事でよかった…。君まで失いたくない。もう、これ以上は…」
枷を外され、苦しいほどに私を抱きしめるヒイロ様に鋭さはなく、やはり本質は優しい方なんだと思う。
しかし、私も任務が終わったわけだ。
迷惑ではあったが、ここまで懐かれたことがなかったのもあって、言いづらいが告げなければならない。
「ヒイロ様、申し訳ありません。」
「どうしたの?」
「私はキーロではございません。」
「ど、ういう?」
「私は国家諜報員です。アカガネ公爵家が黒か白かはっきりさせるために送り込まれました。」
無言のヒイロ様。
そして抱きしめられたまま…
ーーー…知ってたよ。
耳に吹き込まれるような声で言われ、ぞわりとする。
思わず距離を取ろうとするが離れない。
おい、ちょっと待て。
「知ってたっていうか、薄々気づいてた。」
「…ヒイロ様、お離しください。」
「キーロ、好きだよ。僕のものに」
その時、強い力でヒイロ様から離された。
「これは俺のものだ。」
「クロユ、うむっ!?ん…う…」
しかも、離されるだけならまだしも深い息を奪うようなキスのオマケ付き。
離してくれたのは百歩譲って良しとしよう…。
だが、このキスはいらん!!
「死神、か」
「くく…俺に目をつけられたくないなら、コレの事は忘れるんだな。」
コレって言うな。
ギロリと睨むがどこ吹く風のクロユリに苛立ったので、仕返しに視界に入っていた首に噛み付いてやった。
「っ!噛むなんて嬉しいことしてくれるじゃないか…」
…あ、ミスした。
これ完全に選択ミスした。
良い笑顔になったクロユリに抱えられ、ヒイロ様を振り返ることすらできずに私は連れ去られ1ヶ月間、またも閉じ込められみっちりとむせ返るほど愛し合った。
残り1ヶ月の休暇は、旅に出てクロユリに見つからないようあちこちを転々とした。
なかなか有意義な休暇だったが、戻ってみればクロユリに逆さに吊るされ、今にも火あぶりにされそうな上司を目の当たりにした。
…すみませんね。
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