記念物
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結論から言おう。
…腰が壊れそうなくらい痛い。
発情期が過ぎたオレは、さらにボロボロになって、ベッドの住人だ。
「水飲むか?」
「…いる」
カッスカスの声で、何とか神咲の声に応えるがそれすら億劫だ。
だが、喉の渇きには変えられない。
身体を支えてもらいながら、腰の痛みをなんとか騙して水を飲ませてもらう。
もう一度横たわると、痛みに詰めた息を吐いた。
それにバツの悪そうな顔をする神咲。
…そんな顔もイケメンとか、うざい。
「…何だよ?」
「………。」
ベッドのへりに座って、オレをジッと見つめるそいつに多少潤った声で、尋ねると黙ったまま少し唇を開けた。
が、やはり何も言わずに閉じた。
「…切ればいいだろ。αからなら契約は切れる。」
そう、うなじを噛まれ番の契約が成されても、αが一方的に切ることはできるのだ。
きっと神咲もそれを言いだそうと思ったんだろう。
騙してきたんだ。
それくらいの罰は受けてやる。
これから先、オレは二度と番を持てなくなったとしても…。
言葉にしてそう言えば、胸のあたりがツキンツキン…と痛んだ。
「お前、ずっと真の番を探してただろ?その人見つけるためにもさ、切って」
「契約破棄する気はないっ!」
…ビックリした。
どちらかと言えば、自分のことは二の次で言葉を選んで発する神咲が声を荒げたことなんてなかった。
「どう、いうこと?」
意味がわからない。
すると、ゆるりと頭を撫でられた。
なんだか恥ずい。
「アヤ、アヤ…綾世。」
「だから何よ?」
「綾世が誰かにとられたらどうしようか、って思うと殺人でもできそうな気がした。」
また物騒なことをいきなりぶっこむ…。
オレ、ボロボロなんですけど。
心臓までボロボロにする気か?
「アヤとあの温室で別れてから、考えたことだ。そりゃ初めは裏切られた、って気持ちでいっぱいだった。…けど、会わない日を1日1日と過ごす度に、今頃誰か別のαやβといるかと思うと…殺したくなった。」
ーーーアヤは俺のものなのに、って。
どくりと身体と思考が熱くなる。
いや待て、オレ。
落ち着け。
耳へ届いた独占欲の声に、喜ぶ自分がいることに戸惑いを覚えた。
「5日くらい経って、気がついたらアヤの部屋の前にいた。頭の芯がグラリと揺れて、俺だけど俺じゃない声が脳内に聞こえた。俺の番がこの部屋の中にいる、って…」
その後は、生徒会長特権の1つであるマスターキーを使用して部屋の中へ入り、オレと番の契約を結んで組み敷いたと…。
「そんな、都合の良い話…」
あってたまるか、と震える声で言おうとしたら、ひたりと手を下腹部に当てられた。
「もし、お前が俺以外のαやβをこのナカに迎え入れてたとしたら、そいつを探し出して殺してたよ。孕んでたら、堕胎させてた。」
ぞくりとした。
仄暗い…けれど本気の眼差しで当てた手の場所を見る神咲を、αという存在を初めて怖いと思った。
「でも、お前は俺だけだった。嬉しかった…。」
「…そんで、オレを抱き潰した訳ですか?」
「悪い。」
オレはちょいちょいと手で神咲をより近くに呼ぶ。
そして、
「あいたっ!!」
パチコーン、とデコピン(全身全霊の力を込めた)をそのイケメンな顔に食らわせてやった。
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