[携帯モード] [URL送信]

記念物


生まれてこの方、自分をこれほど恨んだことがあっただろうか?



「もう二度と俺に近寄んな。」



足元が崩れる。
深い暗闇に飲み込まれて、もう動けそうもない。
死んだほうがマシという絶望感に苛まれる。



それからオレは学校に登校できなくなった。



始まりは神咲がオレの受け持つ裏庭花壇に逃げ込んできたことからだった。
神咲はファンとΩから常に逃げていた。
生徒会長を務めるその男は、鋭い目つきをしながらも整った顔でいるため人気で、稀少な女はもちろん、男にもモテた。
ある意味悲劇だな。
ちなみに何故Ωからも逃げているのかというと、唯一の番以外には触りたくないとのこと。
案外、ゆるそうでゆるくない男だとわかった時はびっくりした。



…薄々気がついてるかもしれないが、神咲はαだ。
ただし、家柄は普通。
鳶が鷹を産んだわけだ。
それこそ一時期は、養子にくれ!!といろんな財閥から声が掛かったようだが、家庭崩壊させようとする人間なんかの元に誰が行くものか、と神咲が怒ったらしい。
家族もその言葉に、我が子を守ろうと固く誓ったとか…。



それからの男の経歴は華々しいものだった。
たった9歳で特許を取得し、その財で12の時に会社を興し、17の今は名誉会長という地位に収まり、既に生涯暮らしていくに困らない財を成した。
そんな奴がなんで高校なんぞにいるのかというと、自分の番探しだという。
これだけはどんな天才的な頭で考えても、番探知機みたいな物は生み出せなかったということだろう。



オレは自分の受け持つ花壇…まぁ、小さな温室もついた小庭園みたいなものだけど。
そこでそういった話を神咲から聞くようになった。
こっちからしたら自慢かよ!?って感じだ。



けど、嬉しかったこともある。
神咲の能力や姿故か、心安らげる場所がなかったらしく、お前のそばは安心すると言われた。
オレの手入れしてる花や緑じゃないんかい!ってツッコんだのは、単なる照れ隠しだ。
だけど、同時に罪悪感もあった。



神咲は、オレのことをβだと思っているらしい。
だが、本当はオレも神咲が逃げているΩなのだ。
オレがΩだとわかった両親は、徹底してΩだということを隠すように言った。
どういう巡り合わせか、神咲が開発して特許を取得したΩフェロモン抑制剤を発情期の時はずっと飲んでる。
でも1ヶ月に1度7日間、薬を飲んでいたらバレるから、平日の日は抑制剤と色形、パッケージが似ているビタミン剤を飲んで、他人の目を誤魔化していた。



17の今まで、家族以外の誰にもバレずに来た。
これから先もΩだということを誰かに告げようとは思わない。
最初は番を見つけたいとも思ったけど、そんな少ない確立のために弱い存在であると暴露してリスクを負う勇気はなかった。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!