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商い物
誰が殺したクックロビン・下

主人は言った。



「場は整った。」

「では、ヨラン様を解放するのですね。」

「…いや?アレは死ぬまで解放などしない。」

「と、言いますと?」

「私とお前は弟を殺した共犯者だ。ならば、亡霊を背負うのもまた共にしなくてはな?」

「ご主人様も人が悪いですね…。お可哀想に、ヨラン様。」

「何を言う。お前などに愛されてしまって我が弟は本当に可哀想だ。哀れで哀れで…可愛い。」



2人で笑う。
可哀想な駒鳥は、私達の手の中で狂わされ、愛されて、それでも何処までも不自由だ。
主人と共にその羽根をむしり、細い脚に紐を繋いだ。
洗脳の仕込みで、それなりに聡明だった弟君は、幼子のようになってしまったが、それはそれでとても素直に、懸命に言葉を紡ぐものだから愛しく思った。
あれほど疎ましそうにしていた主人が、実の弟に欲を抱くくらいには可愛らしいのだ。



「大神官名義で全神殿が我がバーネット家の傘下になった。無論、アレとの戯れは今日が最後と伝えた上でな。」

「よく飲みましたねぇ?」

「この間、取り入れた映像記憶魔導装置が仕事をしてくれた。こちらには、アレと戯れる姿のネタがあるから、今後いくらでも『商談』できる。」

「あぁ、神殿は性交渉禁止ですからね。姦淫すれば、性器切断の上良くて破門、最悪死刑ですし…。」

「飢えた獣は操りやすくて助かる。あぁ、お笑い種だったのは、アレに騎士の誓いを立てた男もいたな。」

「笑っては可哀想ですよ。それに彼は、今後ヨラン様と会えずとも、味方となってくれると言ったのでしょう?」

「それを近衛騎士隊長が言うか、って話だよ。全く、この国の中枢連中は誰も彼もが己の欲まみれだ。」

「おやおや、それはご主人様も一緒でしょう?」

「まぁな。」



昼間の爽やかな笑みとは違う、雄らしくニヤリと笑う主人の顔は悪役も真っ青だ。



私の淹れた紅茶を飲み、手に持っていた契約書に破棄および紛失防御魔法をかけると、今日までに交わした契約書と共にファイリングした。
仕上げに目くらましの魔法をかけて、主人以外の目には認知できなくなった。
記憶を遡り、あの分厚いファイルは4冊目だ。
この国の要人はほぼ全てここへ来て、弟君と蜜月を過ごしたのではないだろうか?
その回を増すごとに、より淫らに艶やかに変貌する弟君は狂い咲いた薔薇のようだった。



もし、頭も凡庸であったなら、主人に目をつけられて男娼に落とされることもなかっただろう。
目立つ事のない公爵家の次男として、何処ぞかへ婿養子に出され凡庸な一生を男として終えられたのだ。
だが、捨て置けない程度には脅威だったがために、この国を傾けるほどの存在となってしまった。
下手な高級娼婦よりタチの悪い。



「今夜くらいは静かに休ませてやろう。明日からは、私とお前、2人の相手をしてもらうのだからな。」

「そうですね。ご主人様もお世継ぎが無事産まれてようございました。」

「ふん。お前がアレを独り占めしてる間に、当主としてやるべきことはやった。あとは文句は言わせない。」



世継ぎも生まれ、公爵家の地盤も盤石に整えた。
ルーティンの昼の仕事を除けば、あとはもう只管に弟君を愛し尽くしたいのだろう。



「ドロドロに愛して差し上げましょうね。」

「勿論だ。だがまずは驚く顔が見れるな。」



意地の悪い笑みを浮かべて、最後のひと啜りを飲み干すと、主人は弟君を見てくると2階へ上がられた。
私はティーセットの片付けをして、部屋の戸締りをしてから己の寝室へと向かった。



今夜くらいは邪魔せずにいてあげましょう。
ヨラン様の心は私のものですからね。



明日、実の兄に犯される顔はどのように歪むのだろうか?
とても楽しみだ。



ー〜〜あとがき〜〜ー
駒鳥はこれにておしまいです。
もしかしたら後日談を綴るかもしれません。

弟君のヨラン君が聡明だ、という事に着目して読むと、また違う物語と分岐が沢山生まれそうです。

今後もどうぞ円屋と艶夜をよろしくお願いします。

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