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商い物
サイゴノユメヲミル・前編*
【鬼畜裏社会管理者×下僕平凡】



裏社会では人が表よりもすぐ消えていく。
足を洗って消えられるのはごく僅かで、殆どが死んでるのか生きてるのかもわからないミッシングパーソンだ。



「それで?お前にどんな価値があるんだ?あん?言ってみろ。」



いつもの光景だ。
オレの主人で、裏社会の管理者の1人である剥寧暎都(ハグネイ アキツ)さんの前で、これから取引される代物の適正価格承認が行われているのだが、時々自分の価値はそんなものじゃない、と騒ぐ商品がいる。
気づいているかもしれないが、取引される商品は人間も含まれる。



「す、すんません、剥寧さん!」

「良い。そいつに喋らせてみせろ。二度と自由に話せなくなるかもしれねぇからな。なぁ、犬っころ?」



斜め後ろに控えてたオレを、ニィッと笑いながら見つめるその顔にコクリと頷き、隠していた鼻から下を露わにする。
大体の商品は、コレで自分の適正価格に異を唱えるなくなる。



「ひっ…!?」



剥寧さん以外が息を飲む。
オレの鼻から下、両口端から耳にかけて裂かれた傷跡と、唇の上下に開けられた穴に紐を通して勝手に口を開けないようになっているその姿は、それだけでも恐ろしいのだろう。
そして、見えはしないだろうが、オレの舌は剥寧さんに引き取られた日から、少しずつズタズタに裂かれて見るも無惨な姿で口の中に辛うじて存在する。



「どうした、喋らねぇのか?」

「あ、あたしは!場末ではあったけど、体張って金稼いでたんだ!!ま、まだまだ使える。そうだ、あんたに奉仕して証明してやるよ!!」

「ほう?それなら、やってもらおうじゃねぇか。だが、相手はオレじゃない。コイツだ。」



そう言って、親指で指し示されたのは勿論オレで。
本当にこの人は、最悪な方だ。
女の奉仕にオレを選ぶなんて。
それに、剥寧さんはオレと違って見た目だけならすごく魅力的だ。
長くしなやかな髪を後ろに流しながらまとめ、露わになっている顔は女の様だとも言われる中性的な作り。
切れ長の目に緑の眼が、翡翠のようだと管理下のチャイニーズからも言われていて、なるほどと思った。
ただ、片口端だけをあげて笑うその顔は、美しいのに悪魔のようでゾッとする。
笑わなければ美女、笑えば悪魔。
それでも美しいのだ。
そんな方に触れたいと思うのは、少ないわけもなくこの商品もそう考えたのだろう。
まぁ、オレにとっては、その悪魔の面、残酷無比で仲間すら道具と思い鬼畜とも呼べる所業を平気で行う中身も魅力的だと思っているが。



「おい、イヌ。早く逸物出せよ?まだ潰してなかっただろ?」



コクリと頷き、スラックスを寛げて商品の前に晒せば、チッと舌打ちしながらも奉仕を始めた。
舐め、吸い、食み、普通の男なら気持ちヨクなれるのだろう。
だが、オレは前の刺激ではイけない。
イけば酷い仕置が待ってるのも事実だから、イくわけにもいかない。
チュパチュパと水音だけが響く時間だけが過ぎ、少しずつ呼び戻される前の刺激への快楽にマズイな、と思い始めた時にパンッと手を打つ音がした。



「時間の無駄だ。お前の適正価格は変わらねぇ。せいぜい良い買い手が見つかると良いな。おい、イヌ…」



ーーー部屋へ行ってろ。



冷たい視線に、あぁ、またやってしまった…と思いながら、下半身を整えて剥寧さんの言う通りに、いつもの部屋へ歩いた。
その足取りは思い。
あの部屋が嫌いなのだ。


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あきゅろす。
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