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商い物
夢のような話など何処にもない・中※

魔王に痛覚を快感へと変えられてから、半年。
魔族の苗床となった勇者一行が、死んだと聞かされた。
死体は、かつて勇者一行が攻撃・破壊した国境の監視として置いていたゴーレムの素材になるとか…。
因果なものだ。



オレはといえば、未だ玩具として夜な夜な魔王に遊ばれている。



「あ、ひぁっ、あ、あんん…っあ!」

「ぐちゃぐちゃだな…ふっ…う!」



美しくとも魔族のペニスは人間の規格外で、限界以上に開かれたソコは、括約筋が切れてしまい、自力で閉じることはおろか、締めることすらできなくなった。
だから、肉体改造を施されたうえ、汚物を食べ、潤滑油がわりにもなるスライムを魔王の手によって腹に寄生させられた。
本当に玩具にされているのだという感覚に、精神は崩壊寸前だ。



どくりと中出しされた精液を感じ、オレ自身もその衝撃で射精する。



「…そろそろ頃合いか。」

「な、に…?」

「ふっ…こちらの話だ。それにしても、愚かな人間共は全員良い苗床となった。」



記憶から呼び起こされる凄惨な勇者一行の姿。
休む暇もなく、様々な魔族に犯され孕まされ、男でありながら出産を繰り返す勇者一行のそれは悪夢に等しい。
きっと、殺した魔族以上の数を生み増やした。
けど、散々な目にあっていたからか、大して何も思わなかった。
勇者が泣き叫んで、オレを呼ぼうとも何も思わなかった。
今更赦しを請われても困るし、今の状況が変わるでもない。
あぁ、でも一つだけ強く思ったことがある。



「魔王、オレはいつ殺すんだ?」

「唐突になんだ?死にたいのか?」

「わかんない。でも、オレは何も役立たずに生きてるだけだ。苗床になれるのすら、」



ーーーオレには羨ましい。



狂気の沙汰。
そうだろう。
転校生に関わってから、人生は滅茶苦茶になった。
大勢の人から死すら求められた。
けど、それ以前のオレは顔面偏差値や家柄から取るに足らない、友人とすらされないひっそりした生活を送っていた。
何も求められない日々は、空虚で自分がそこに居るのかいないのかわからなくなる。
人の目に映らないオレは、オレがわからなくなる。
生きてるのか、死んでるのかも…。



「お前はつくづく、変な人間だ。」

「オレに飽きたら、魔物の苗床にしてほしい。死んだら素材にしてもいいし、屍肉を食らう魔物の餌にしてもいい。オレは、少しでもこの世界に映っていたいよ…。」



転校生のように自分を見ろ、愛せとは言わない。
少しでいい。
欠片一つだけでも、そこに在りたい。



見向きもされず、ボロボロになった心が壊れて流れ出した本音。
魔王は珍しくオレの話を聞いていた。



「…お前が産む同胞(はらから)は、魔物にはならないだろう。」

「ハハッ!まともな苗床にすらなれないのか…オレは。」

「屍肉も食われることは愚か、使われることもなかろうよ。」

「っ…そ、うか…。うん、オレはそういう人生、なんだろうな…。うん…う、ん……。」



魔王の言葉は、鋭い棘のように刺さり胸のあたりがじくりと痛んだ。



それからまた半年後。
丁度、1年経った日。
オレは魔王に飽きられたのか、魔王城から連れ出されて暗い森に置いてけぼりにされた。


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