商い物 腐乱 * 【執着元総長→平凡】 ※死ネタ、微グロが含まれます 腐っていく…腐っていく…。 アイツに触れられ、身体を暴かれ、束縛を感じる度に、この体も心も腐っていく。 ヤンチャな友人に無理やり連れてこられた不良の溜まり場は、一般人なオレからしてみれば、やべぇ…今すぐ帰りたい、以外の何ものでもない空間だった。 何でオレを連れてきたのかといえば、オレとも遊びたいけど、憧れの元総長にも会いたかったからだそうだ。 …憧れの総長、ではないんだな。 最初こそビビったけど、友人がオレの話を不良たちにしてたのか、わりと好意的に受け入れてくれ、10分くらいすれば不良に混じって、友人とダーツなんかしていた。 案外、良いヤツらだなぁ…。 そして、オレに人生最悪の瞬間が訪れた。 開かれた溜まり場のドア。 溜まり場の空気が変わり、友人の興奮した顔から、あぁ、憧れの元総長さんが来たわけだ、と視線をそちらへ向けた。 身長がめっちゃ高い上に、脚が超長いモデル体型。 顔面の作りなんか、大量生産型のオレのような平凡顔とは全然違う、神様渾身の力作!という感じの美形。 緩くクセのある黒髪、すっと通った鼻、切れ長の目、薄い唇…それらが全て、最上級品のパーツでバランス良く並べられていた。 オマケに右目の下に、色っぽい涙ボクロがあるから大人の色気も凄いわけで…。 あ、次元が違うわ、ってすぐ目を逸らした。 だが、すぐ目が合わさることになる。 元総長さんが、オレのとこに来たから。 「見ない顔だな。新入りか?」 「いえ、そこにいるヤツのツレです。」 「へぇ…」 すっと細められた目に、何故か悪寒がして一歩後退した。 そしたら、友人の方を向いて言い放った。 「お前のツレ、俺が貰うがいいか?」 「え、あ…」 有無を言わさない圧力があり、友人は首を縦に振っていた。 おい!?ってツッコミたかったけど、空気がおかしすぎて…。 そして、そのままオレは元総長に連れ去られた。 それから、元総長で現在実家の跡取りとしてヤクザをやっているソイツに、マンションの一室を与えられ監禁されている。 一度隙を見て逃げ出したら、翌日ボコボコになった瀕死状態の友人を目の前に転がされた。 「お前が逃げるなら、大切なものを一つずつ壊してやる。いいな、直樹?」 この部屋から逃げる事を諦めた。 代わりにアイツから逃げた。 優しくされようが、何されようが、友人の姿を思い出してしまって、好きになんかなれるはずもなかった。 そうしたら、今度は妹が目の前でレイプされかかった。 必死に許しを乞い、妹の目の前でオレは自ら身体をソイツに差し出した。 もうオレは逃げるという事を諦めた。 そうするしかなかった。 アイツの執着心はかなり強く、少しでもアイツ以外の名前を口に出せば、数時間後には瀕死状態のオレの知り合いが目の前に転がった。 アイツ以外の名前を口に出せない。 アイツ以外の人が来ない。 そんな閉ざされた部屋で、オレはだんだん腐っていく感覚を覚えた。 「直樹、直樹、愛してる…愛してる!俺のもの…俺だけのものだ!!」 快楽を教え込まれた身体は、只々悦びに跳ねてアイツを満足させる。 一頻り抱かれると、身体を清められ寝かされた。 アイツに抱きかかえられながら、寝具に沈みオレは腐っていく。 汚れなど無いはずなのに、ドロドロと溶けて異臭を放っている気がする。 このままではダメだ。 このままでは、本当にオレが死んでしまう。 赤い決意をした。 そして翌日、オレは1人きりで寝具に沈んだ。 久しぶりによく眠れた気がする。 自分の中の腐臭は消えていた。 その代わり、今度はアイツから腐臭が漂い始めた。 ベッドから降りたところに横たわる身体は、熱を失ってなお神様の最高傑作のようだった。 なんでかな? なんで…なんで殺されたのに幸せそうに笑ってるんだ? ソイツの案外柔らかい髪を触る。 普通、苦痛に顔を歪めるものだろ? なんでアンタは嬉しそうに笑ったんだ? 消えたはずの腐乱臭がまたオレから立ち込める。 …そうか、アンタはオレに殺されて、最期に見た景色がオレだったからなのか。 そうか、オレがアンタを殺して、アンタのことを忘れたくても忘れられなくなったからか。 腐っていく…腐っていく…。 このつきまとうその匂いこそが、執着というものなのだろう。 外からも内からも立ち込めて、逃げられない。 あぁ、失敗したな。 「やってくれたじゃないか。」 オレは初めて自分からアイツの冷たい唇にキスをした。 ドアが蹴やぶられ、向けられた黒い塊。 そしてそのままオレは…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |