商い物 桜色+ 【美形養護教諭×平凡生徒】 ※死ネタです。ご注意ください。 私は罪を犯しました。 それはとても美しい日。 のどかな春の風に見た、心臓を潰されるのではないかと言うほどの衝撃。 桜の下に佇む1人の生徒。 虚ろな瞳で、桜を見ていました。 咲き誇る樹の下で、その光景はあまりにも対称的で、私の心を震えさせるに充分でした。 それが彼との出会い。 彼は度々、保健室へ訪れました。 他人が凡庸だと言う顔のせいで、傷だらけにされるのだと小さく言いました。 唯一信頼していた親友にも見捨てられ、彼は私に言わせれば愛らしい顔を歪めながらも、涙を流さずに諦めた顔で笑うのです。 それがとても愛おしくて、私は彼を大切にしようと思ったのです。 咲き誇った花と対称的な彼は、まるで枯れた桜のようでした。 私は彼に水をやり、栄養を与え、大切に大切にしました。 でも、ある時気がついたのです。 いつの間にか、他の生徒と話してあの頃とは違うものになっていることに。 ーーー彼は枯れていてこそ美しい。 だから、私は彼を再び枯れさせることにしました。 そしてまた枯れた頃、迎えに行きました。 ですが、また誰かの手によって違うものにされてしまうかもしれない。 私は彼を誰も知らぬ桜にしてしまおうと決めました。 枯れた彼がやがて腐り、かわりにあの頃より美しい桜の樹を私は愛おしみました。 あぁ、そういえば知ってますか? 桜の美しさは、人間の栄養を吸収してるからだと…。 冗談ですよ。 それにしても、枯れた彼は美しくなりました。 ほら、見てください。 泣きたくなるほど綺麗でしょう? でもね、もう私と言葉は交わしてくれないのです。 何も誰にも話さないのです。 私は罪を犯しました。 では刑事さん、私はこれで眠ります。 またもう一度目覚める頃には、枯れた彼と2人こう交わすんですよ。 ーーーおはよう。 あぁ、とても楽しみです。 それでは、私はこれで… ーーーおやすみなさい。 〜No side〜 その日のテレビで美しい桜並木が映った。 「本日、午前10時頃。××学園敷地内にて遺体が発見されました。現在身元確認中だと言う事です。次のニュースです…」 命を吸った桜は悲しげにそれでも美しく咲き誇っていた。 ーーー先生、おはようございます。 ーーーあぁ、おはよう。 2人が美しく咲いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |