商い物
7
その後といえば、とりあえずバーに悠太を連れて行ったら、ガチでウザいくらい朔弥に絡まれた。
大人しくなるように沈めといたけどね〜。
それから、悠太がメンバーに改めて頭を下げてた。
悠太の弟くんも一緒なんだけど、これがまた異様な謝罪現場というかでさ〜。
「弟が迷惑かけました。本当にごめんなさい。」
「み、峰!とりあえず、足どけてやれ!!な?弟くん、死にかけてるから!!!」
顔がわからんくらいボコボコな弟の腹に足をめり込ませる悠太。
…本当に容赦ないね。
悠太の容赦なさに、死にかけてる弟くんを見ていられなくなったメンバーが救出し、手当てしに向かった。
おかしな話だよね〜。
仮にもチームを潰そうとした相手を助けるなんてさ。
でも、きっと助けなかったら弟くんあの世逝きだったもんね…。
「峰、って実は強いんだな…」
「強くない。暴力、反対。」
…ねぇ、どの口がそんなこと言ってんの?
「けど、あいつアレくらいやらないと話通じないから。…ごめんなさい。」
「いや、もういいって…」
くしゃりと頭を撫でられながら、小さくありがと、と言う悠太を見るとなんだかモヤモヤして来て、朔弥から遠ざけ自分の腕の中に囲った。
…嫉妬しちゃうよ、俺だって。
「そういや、お前らどっちから告ったの?」
「あは、朔弥ちょっと黙r」
「オレ」
「ちょ、なんで言っちゃうの!?」
平然として言う悠太とは逆に俺は赤面。
マジか、と言った少し後、大爆笑する朔弥はもう一度沈めといた。
「じゃあ何だ?峰が龍のこと抱くのか?」
「はぁ?んなわけないし〜。」
「抱きついたら、ダメ?」
そう言う意味じゃねぇっ!!!
そろそろ朔弥の腹筋は崩壊の時を迎えるのかもしれない。
それくらい今日笑ってる。
「峰、セックスはわかるよな?」
「前見ちゃったやつ。」
「そうそう。それから峰は俺に近寄らなくなって…」
思い出して、勝手に沈んでいる朔弥ザマ〜。
「まぁ、それを野郎同士でヤる時、女役か男役かになる訳だが、お前どっちよ?」
何でそう言うきわどい質問すんの?
これで俺を女役にしたいなんて言われたら、ちょっと…いや、悠太になら…うーん…。
少し考える悠太を、ちょっときつめに抱き締めると、ぐぇっと変な声を出して腕を叩いて来た。
ちょっと緩めてやろう。
「オレ女役。」
「へぇ?告白するくらい男前なのに勿体ねぇなぁ。なぁ?」
こいつ、俺を女役にさせたいのか?
そう言うことならお前の大切な息子を使い物にならなくしてやるけど?
…と、言う笑顔を向けると焦ってるあたり笑えた。
安心してよ、今までのよしみで玉一つで許してあげるからさ〜。
「龍くんに、その…キス、されて、そしたらこの先はどうなるのか、って考えたら、女の子みたいにして欲しくなった。」
だから、と続ける悠太。
ーーーオレを龍くんの女の子にして?
「っ!!あぁもう!理性が保たない!」
ぐいっと腕を引っ張って、バーの奥にある仮眠室へ向かった。
勿論、悠太を美味しくいただくために。
その日を境に、悠太との距離は一層縮まったわけで、あいも変わらず悠太は無口無表情無気力だ。
だけど、俺のことに関してはどうやら積極的になるようで、もうこっちが恥ずかしくなるくらい堂々と手は繋ぐし、寄り添ってくるし、キスを仕掛けてくる。
…下手っぴだけど。
けど、その俺にだけっていう積極性がとても嬉しかったりする。
意外と独占欲強かったんだなぁ、なんて自覚しました〜。
「龍くん?」
帰り道、手を繋いでいる俺の大切な子が、ボーッとしてた俺をジッと見てくる。
「悠太、大好きだよ?」
「ん。じゃあ、オレは愛してる。」
「っ!!」
惜しげも無く伝えてくれるあったかい気持ちと、少し笑顔になった無表情っぽい顔に心の中が愛しさで溢れそうになる。
…なるけど、悠太、その言葉は俺が言いたかったぁぁぁあっ!!
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