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商い物
5

問題の夜から、朔弥の言いつけ通り小田峰の送り迎えをしている。
とりあえず、爆弾発言の事は後回しだ。
それにしても最近、また生傷が増えた気がする。
まぁ、手当てもしてあるし大方転んだのだろう。
鈍臭い奴め…。



「じゃあな、小田峰。」

「ん。」



玄関先で別れようとしたところ、小田峰が開けるより先に玄関が開いた。
出てきたのは、小田峰にどことなく似ているが、どちらかといえば俺寄りのイケメン。
女が放っておかなさそうなやつだ。



すると、小田峰がいきなり俺の腕を掴んで、やや背中側に引っ張った。
なにごと!?



「あ、兄さんお帰り。帰ってこないから迎えに行こうかと思ったよ?全く最近僕に心配させすぎでしょ。…で、その人誰?」



小田峰に合わせられていた視線が俺に移る。
笑顔にうまく隠されたそれは、確かな殺気だった。



「送ってもらったんだ。…絡まれそうになったから。」

「へぇ?僕の兄さんに絡もうなんてやつ、まだいたんだね。どうもありがとうございました。」

「どーいたしまして。じゃね、小田峰。」

「ん。」



弟くんが小田峰を自分の方へ引き寄せると、一緒に中へ入っていった。
…まぁ、一応家には返したことだしね。



…って、俺が納得するようなタマだと思ってもらっちゃ困る。
なんか、あの弟くんニオウんだよね〜。
とりあえず、バーに向かおう。



朔弥に事の次第を話す。
実際に会ったのは俺だから、なんとなく伝わりにくそうだったけど、そこは長年の付き合い。
俺がヤバそう、と言えば鵜呑みまではいかなくても7割がた信じてくれた。



「…そういや、最近族潰しに絡まれた奴らの話で興味深い話聞いたわ。」

「はぁ?俺、それ知らないんだけど〜。」

「悪ィ、悪ィ。」

「そんで?」

「なんかさ、途中で止めに入る奴がいるんだと。最初、族潰しの仲間かと思って殴ったりしちまったらしいけど、その逆らしくてさ。」



…なにそれ?
俺らの仲間かもしれないってこと?
でも、族潰しはいきなり出るから応援出せないし…。
変な奴もいるもんだ。



「顔は?」

「パーカーのフード、目深に被ってて誰も見てないらしい。」

「役に立たないなぁ〜。」



殴られ損じゃん。
有益な情報くらい置いてから抜けろよな。



ぎしりと軋みをあげるソファに勢いよく背中を預けた。
そのまま天井を見上げ、思い返す小田峰のこと。
増えた傷に、あの弟くん…。
目深に被ったパーカーの下には、誰が隠れているのだろうか?
なんとなく予感がした。



「あ〜、なんかスッキリしなーい!」

「久々に女でも抱けば?今日お前目当ての女、来てたと思うぞ?」

「ん〜、そういう気分じゃないんだよね。てか、女に興味ない。」

「男もいたと思うけど?」

「小田峰以外興味な〜い…あ」



うっかり口が滑った。
ギギギ…とぎこちなく朔弥を見ると、目を見開いてた。



「お前…」

「……あ〜っと…」



気まずくなり、俺はバーから出て行った。



いやいやいや!
俺ってば何言ってんの!?
バカなの?バカ過ぎなの?



ーーー小田峰以外興味ない。



自分の口から出た言葉を心の中で反芻する。
たしかに、朔弥に妙なこと言われたけどさ…言われたけど!!



「俺、小田峰のこと、好きなのか…」



落とした言葉に、ストンと落ちてくるものがあって、あぁ、そうなのか…って。



だから、気を抜いてたんだ。
空を切る音に反応が遅れて、やって来た衝撃に吹っ飛んだ。




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あきゅろす。
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