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商い物
4

あれから小田峰は、より一層朔弥に近づかなくなった。
柄にもなくしょんぼりする幼馴染に、大爆笑したくなるのをなんとか堪えるのがすごく大変だった。



「峰〜。み〜ね〜…」

「ったく、いつまでもしょぼくれてないでよ?ほら、飲め!」



捨てられた子犬が親を呼ぶように小田峰を呼ぶ声のなんと情けないことか。
てか、笑える。



けど笑ってばかりもいられないんだ。
最近ちょっとおかしな事が起こってる。
昔っから族潰しとかを名乗るやつが乗り込んできたけど、ウチがやられることはあまりなかった。
返り討ちにしてたってのもあるけど、あんま治安のよくないこの街じゃ、族潰しの対象になるチームがいっぱいいたから、そんなに遭遇率は高くなかったんだ。
それが、最近になってよく下っ端が潰されるようになった。
下っ端って言っても、勝手にうちのチームの名前を名乗ってるだけの下っ端も下っ端だけどね。
それでも、まぁ名乗ってんなら恥ずかしくない力見せやがれ、って事で弱者はチームから抜けさせた。
弱いやつなんかいらねーもん。
そしたらさ、今度は潰されはしないけど絡まれるようになってきたらしい。
手口は闇討ち。
手段は選ばないタチみたいだ。



「早めに族潰し、潰さないとね〜。」

「だな。あんま舐めたことしてっと、どうなるか…味わってもらおうか。」

「それまで、小田峰は自宅直帰ね。」

「あ?何でだよ?」

「狙われたら厄介でしょ〜?」

「…あーっ!くそ、峰ぇぇぇえ…」



本当、小田峰のこと好きだな。
まぁ、俺も小田峰に手ぇ出されたら嫌だし…。



「てか、殺すかも…」

「あん?どうした龍?」

「ん〜ん、何でもなーい。」



その後、2人で作戦を練り、チーム全員に伝えると酒を飲んで、そのまま溜まり場の仮眠室に泊まった。



あの時、想像したら胸がざわついた。
それから芯が冷えて静かな殺意に変わった。
うっかり口から溢れた言葉は本心だ。



「らしくないなぁ…」



もし、小田峰が誰かに傷つけられたら、俺は犯罪者になってでも殺すかもしれない…。



明日からは、ここへ来なくなるそいつのことを考えると、なんだか部屋が寒い気がした。
早く寝てしまおうと、深く毛布を被ると馴染みの声が呼びかけた。



「龍、」

「…なに?」

「峰の送り迎え、お前に頼むわ…」

「はぁ?」

「お前の方が懐かれてるし…なにより、お前なら安心して任せられる。」

「まぁ、懐かれてんのは確かだけどさ〜…。」

「峰のこと、好きだろ?」



その後、爆弾発言を落としてくれた。



「オンナとして。」

「はぁぁぁあっ!?意味不明!!なんだよそれ!!」

「ははっ!お前が取り乱すの久々だな。けど、想像したろ?もし峰が、って。…お前、すごい殺気だったぞ。じゃ、おやすみ。」



ちょと待て!!
とんでもないこと言うだけ言って、寝るんじゃねぇよ、このクソ幼馴染がぁっ!!!



その夜は悶々としてなかなか寝付けなかった。
ぐっすり眠る朔弥をぶん殴りたくなった。




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