商い物 花のそばにジャノメチョウ 2 夏休みに全親衛隊で伊豆へ合宿と称して、遊びに行ってから少し。 夏休みも終わり、2学期が始まりました! 楽しかったなぁ…。 本当は海外にしようか?って話もあったみたいなんですけど、何故かなくなりました。 投票で国内合宿に投票した僕にとっては嬉しい結果でしたが。 やっぱり国外旅行は高すぎて行きたくても行けれないですから…。 旅行の思い出話に、親衛隊員の友達と盛り上がっているとHRの時間になった。 そして、先生が連れて来た見慣れぬ生徒。 アフロヘアに相当目が悪いのか瓶底のような眼鏡をかけた新しいクラスメイトは、鈴木央太君というそうです。 だけど、第一声にビックリしてしまいました。 「鈴木央太だ!よろしくな!!あ、でも親衛隊とかいう最低なやつらとは仲良くするつもりねーから!!」 親衛隊員がクラスの1/3いるのに…。 仲間から友達くらいに仲良くなった隊員のクラスメイトを見ると、いつもは可愛い顔してるのに威嚇するチワワばりに怖い顔になってました。 後で、今日自信作の夏蜜柑クッキーあげよう。 さて、僕はめげそうになってます。 なんと鈴木君は僕の隣の席になりました。 そうしたら、授業中でも何でも大きな声で話しかけてくるし、放課後は腕を引っ張られて構内案内をさせられました。 強く掴まれた腕が痛みます。 なにより、今日のお菓子を心待ちにしてた親衛隊の仲間に直接クッキーを渡せなくて…。 クッキー自体は、友達に託したから食べてもらえたとは思うんだけど。 次の日、鈴木君は相変わらず大きな声でお喋りしてて、途中やって来た生徒会の皆様に連れられて何処かへ行ってしまいました。 けれど、ホッとしたのもつかの間。 お昼休みは食堂に行く僕は、廊下で鈴木君に捕まってしまい腕を強い力で引っ張られて、友達から離されてしまいました。 …それだけならまだ良かったんです。 ほぼ引き摺られて連れてこられた食堂で、合流したのは生徒会と風紀委員長と副隊長の皆様。 僕、終わった…。 悲しくて、どうしようもなくてボロボロ泣き出してしまいました。 鈴木君や生徒会の方々、風紀のお二人が何か言っているけど、耳に入って来ません。 だって、親衛隊規則の中に【所属の親親衛対象の方に2名以下の接触を禁じる。】とあるのだ。 破れば除隊。 花菱総隊長のそばにいられなくなるんだ、って思ったらもうダメでした。 「泣かないで…」 突然、優しく抱きしめられました。 覚えのある、柔らかな甘い香りは一番そばにいたいと願った方の香り。 「う、うぅ…はな、はなび、しそ、たいちょごめんな、さ…うぅ…」 「謝る必要はないよ、桐人君。」 「で、でも規則…」 「大丈夫。だって君は…」 ーーー私以外、目に入ってないでしょう? その言葉に涙も引っ込んだ。 「え?」 「と、いうか私以外その心に入れさせないけど。」 クスクスと笑う花菱総隊長。 僕は頭はそんなに良くないかもしれない。 でも、人並み以上に察する力はある。 料理はおもてなしの世界だから、相手の望むものを察する力がないとダメなんです。 そこで磨かれた力によって、僕は花菱総隊長の言葉の意味を理解してしまいました。 「君は本当に可愛いね。顔が真っ赤だ…。」 密着していた体を離されて、合わされた目線。 緩められた綺麗な目は、どこまでも正直に語っていました。 …愛しい、って。 その瞬間、僕は自分の心も正確に認識しました。 「あ、の…僕、そばに…いてもいいですか?花菱総隊長のそばに…」 「むしろこれから先も、ずっと私のそばにいてよ。でないと、閉じ込めてしまうよ?」 「っ!はい、花菱総隊長のそばに…ずっと!」 いつの間にか僕らを囲んでいた親衛隊の仲間たちが歓声を上げた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |