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僕の時間
03




「!ッうわあああぁぁあ!?」
「えっ!?」


…ッちょ、また!また僕、タクトの仕事の邪魔したああああぁぁあ!!!


「ご、ごめっ…タクトさっ、ぼ、ぼくまた…っ!」
「あー!ちょっと、落ち着いてレミくん!」
「もっぼく…っ!ほんと、どうしたら……っ!」
「どうもしなくていいから!ほら、さっきので消えたわけじゃないし!…余計な文字が増えただけだから、消せば大丈夫だから!」
「ううぅ…すいませんん…っ!」
「あああ…っちょっと、泣くなって…っ」


もう、なんでこんな事になってしまうんだろう…!
今日は厄日なんだろうか…もう僕、今日は絶対タクトさんと一緒にいない方がいい…っ!


そう思いながら後悔していた時だ。


ピン!と、
今更なことに気付いた。



「……あ…あれ…?…タクトさんって…仕事、……パソコン…?」



あれ。じゃあ、僕がコーヒー零したあの原稿用紙は?
僕が男のくせに変態よろしくフリフリのメイド服着るはめになった原因の原稿用紙は?
あれは…まさか…


未だにタクトの膝に乗ったまま、固まったみたいに動けず、視線だけでタクトを促す。
バツが悪そうに、タクトはヘラと笑った。



「…あー、気付いちゃった?言っとくけど、俺別に嘘とか付いてないからね」

「…つまり?」

「…あー。…本物はこっちデス」


そう言って指差されたのは、やっぱり目前のデスクトップパソコンで。


「…ッ!僕こんな服着る必要無かったじゃんかッ!こっンの変態いいぃぃいい!!!!!」
「っのわッ!!!」


目の前の男の頬目掛けて全力でグーで殴った僕は、やっぱり男でした。



*          *           *





「…はぁ…レミくん、いきなり殴ってくるからビックリしたー…」


破るように脱ぎ捨てて、自分の服を着終えた僕の機嫌は…無論、良くない。


「あっさりよけておいて、嫌味ですか?どうせ僕は人殴ったことなんて無いですよ!」

「良いことじゃん!むしろレミくんが喧嘩慣れしてたら、俺が困る」


あっはっは。

僕に殴られ掛けたことなんて、本当はどうでもいいタクトが大袈裟に笑う。
…っほんと悔しい!


「大体、嘘ついて無いとか、かなり屁理屈ですよ!パソコンにもUSBにもデータ取ってて、あの原稿がただのメモ代わりだったなら、そう言ってくれても良かったじゃないですかっ!」

「だから、そう言ったじゃん?」

「さっきねっ!!」


反省なんて文字が全く見えないのは、きっと現状が彼のシナリオ通りだからだろう。意地悪く笑うタクトは、心底腹が立つが、楽しそうだ。


「…っあ!そういえば、ショックが大きくて忘れてましたけど…、あのメイド服って…なんでこの家にあったんですか……?」

「ふっふっふ。知りたい?」

「…べつに」

「なんだよ、嫉妬?可愛いなぁ、もう。元カノとかそんなんじゃないから。もちろんレミくんのたー…「知りたくなかったあああああぁぁああっっ!!!」


とりあえず。


不意打ちでもいいから後で一発入れることにして、



教訓その1。




『タクトの話を無闇に信じるべからず』




僕はその日、こっそりと
心の内に書き留めた。


ーENDー

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