短篇の書 B 二階から着替えてきた雅樹が降りてくると、キッチンに来て俺の背後で料理の様子を見ている。 「……………何だよ。」 「ん〜?美味しそうだなって。」 「まだ、野菜しか切ってないだろ……。」 呆れたように俺は言う。 「…違うよ。美味しそうなのは義兄さんだって意味。」 「―――っ!?」 雅樹は俺の真後ろに移動していた。 腰に雅樹の手が回り動けないように固定される。 「やめろっ!雅樹、離すんだ!」 「なんで?義兄さんだって期待してるでしょ?姉貴がいなくて溜まってるくせに。」 耳元で雅樹に囁かれ、俺は、背筋がゾクッとした。 ――そう、俺は、義弟と寝たことがある。 愛理が海外に行って一ヵ月たったあの日に。 どうしても自分の欲望を押さえ切れず、誘ってきた雅樹の手を振りほどけなかったのだ。 [前へ][次へ] |