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オレとオマエ(闇表/双子パロの続き)

※「キミとボク」の続きの話になります。



 本当は、ずっと前から。



オレとオマエ



 こんな形で相棒に触れることを、どれだけ望んだか知れない。誰よりも近い位置に居て、誰よりも俺をわかっていて、愛しくて愛しくて堪らない、家族として血をわけた俺の分身。
 この感情に気付いたのは、いつだっただろうか。まだ男が男に恋することが異常なことだとは気付いていなかったほど昔。生まれる前から一緒に居て、そう、俺たちは、いつも一緒だった。買い与えられたお菓子も、玩具も、洋服も、食べ物の好みも、すきな遊びも、なにもかも同じだった。いつも、同じことをしていた。相棒が読む本は一緒に読んだし、俺がするゲームの対戦相手は大抵が相棒だった。違ったのは、性格と体つき、顔つきくらいなものだろう。
 相棒は、ゲームでの俺の弱点やパターンはしっかり把握しているくせに、感情面には滅法弱かった。特に、恋愛の。
 俺たちが中学二年生の時か。俺は相棒に対する感情に戸惑って、それを紛らわすために女の子と付き合ったことがあった。その子に対しては、勿論恋愛感情はなかったが、誰かと無条件に一緒に居られると言うことは、楽しかった。ただ、やはり、相棒と一緒に居る時間には敵わず、却って以前よりももっと相棒のことばかり考えるようになった。なんだかその子に悪い気がしてすぐに別れたが、その時以来相棒は少しだけ俺から距離を置くようになって。彼女ができた、と言ったときは少しうつむきつつもおめでとう、と言ってくれたが、別れたと言ったらすごく複雑そうな色を浮かべて、そっか、と苦笑いしていたように見えた。相棒に自覚はなかったようだが、相棒も俺と同じ気持ちを抱いているのではないかと思い始めたのはそれからだ。
 そう、本当は。
 本当は、ずっと前から気付いていた。ただ、相棒は自覚するまでに時間がかかって。けれど、今日、やっと、相棒の口から答えが聞けた。まぁ、半ば言わせたようなものだが。これまでの俺の気持ちに免じて、これくらいは許してほしいものだ。

「っあああああーーー!!!」

 と、突然に腕の中の相棒が叫び声を上げた。耳元から生まれた大声に一瞬気が遠くなる。すぐ後に相棒がそれに気付き、ごめんねごめんねと俺の頭をさすりながら可愛い顔で俺の顔を覗きこんできた。なんだこの可愛い生き物は。

「あのさっあのさっ!」
「どうしたんだよ、相棒」
「あああ…あい、あい、」

 焦る余り上手く言葉にできないようだ。必死に言葉にしようとする様がとても可愛い。

「アイスっ!! わすれてたぁ!!」

 言いながら、帰ってきたときに放り投げたそのままの形で落ちているアイスキャンディー(だったもの二つ)の袋をひっつかんだ。もちろん、ほぼ溶けきっているのであろう、袋の中からたぷんたぷんという水音がした。

「もったいないよねっ」
「あ、あぁ…」

 言うのとほぼ同じタイミングで、相棒が袋の切れ目に手をかけて、一気に袋を破いた。開けた、と言うより、破いた。当然中身の最早液体と化したものがすごい勢いで飛び散るわけで。ばしゃん、という水音。

「………うわぁ…」
「相棒…、」

 相棒の腕や胸や顔や足のあちこちに水滴が飛び散っている。びしょ濡れになった頬や髪や肩から甘い蜜が滴り落ちる。………ちょっと、これは、かなり。

「………もうひとりのボク?」

 いやらしい。

「わ、…え、なにっ……?」

 相棒の濡れてべたべたになった手をとり、指を舐める。熱い指。相棒が慌てふためいている様が伺える。可愛い。愛しい。指が震えている。

「や、やだ…恥ずかしいよ、もうひとりのボク……」

 指をくわえたまま相棒の顔を見上げた。耳まで真っ赤に染めている。狼狽えた目が部屋中をさ迷って、俺の顔にもどってきた。これは、本気で困っている目だ。

「ね、ねぇってば……ひゃっ」

 指を甘噛みしてから解放する。そして相棒の耳に唇を寄せ、

「……愛してる、遊戯」
「…………っ!!」

 さっきよりももっと顔を赤くして、目を潤ませて、余程照れたのか、俯いて黙りこんでしまった。ので、頬についた水滴を舐めたり、額にキスをしたり、抱き締めたりすると、そのたびに「う」「わ」「ひゃ」などと奇声を発した。
 あまりにも可愛かったのでその唇にもキスをあげて、視線をかち合わせたまま、可愛い、と言うと、照れたまま固まってしまった。
 あぁ、なんて愛しい、俺の半身よ。長年ひた隠してきた自分の胸の内を明かすことが、こんなに幸せなことだなんて知らなかった。嬉しくて幸せで、この幸せを、絶対に手放したくなんかない。


 例えばこれが道徳に反することだとしても、禁じられた関係であっても、ずっと、ずっと、ずっと。
 俺は、お前と共に居ることをいとわないから。
 だから、どうかお前だけはずっと俺の腕の中に居てくれますようにと。



 

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あきゅろす。
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