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ディアマイロード(バク→獏/別体)
はいはい、わかりましたよ宿主様。
ディアマイロード
俺の宿主は、端的に言えば、我が儘だ。無い物ねだりで悪気がなくてある意味純粋でオタクで腹黒くて、でも、誰よりも。
「ねぇ」
宿主が、座ってテレビゲームをしている俺に乗り掛かる形で話しかけてきた。潰れそうだ。思いっきり体重かけやがって。
「そろそろ僕と代わってよぉ」
どうやら、ゲームの順番の交代を訴えているらしい。ついさっきやり始めたばかりであるような気がするのは俺だけか。
宿主がひたすらに「ねぇってば」「聞いてるの?」「ねぇねぇねぇ」と俺の体を揺さぶりながら訴えかけてくるので、コントローラを渡して返事とする。受け取った宿主はその瞬間にへにゃりと笑い、いそいそとゲームを始めた。
真剣な目付きで画面を見つめ、的確に操作をし俺が行き詰まっていた面も何の苦もなくクリアする。その様をぼーっと眺めていると、ずっと沈黙していた宿主が口を開いた。
「…おなかすいたなぁ」
指先では的確な操作をしつつ、視線だけをこちらに向けて言う。………器用だな。
「ねぇ、シュークリーム買ってきてよ」
言うと思った。
「もうシュークリームなくなっちゃったでしょ?」
「そうだな」
「ね、買ってきて」
俺の宿主様は本当に、我が儘だなぁ。
ねぇねぇお願い、なんて言われて。シュークリームを買ってきてやったときの宿主の笑顔。シュークリームをいっぱいに頬張っているときの宿主の笑顔。そんなものを思い浮かべたら。
「……しょーがねぇな」
言うと、また宿主が嬉しそうにへらへら笑う。
再び視線をゲーム画面に戻した宿主の髪をわしゃわしゃと撫でてやった。財布を上着のポケットに突っ込む。
「えへへ、ありがとう」
そう言うと、宿主は歩き出しかけた俺の腕を引っ張り、頬にひとつ、口付けてきた。
「いってらっしゃい」
言って、また笑う。
ああ、お前は、本当に誰よりも可愛い。紅く染まっているであろう自分の顔を隠すために、足早に家をでた。
願い事があるなら言って。
叶えられることなら叶えますよ、俺の愛しい愛しい宿主様。
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