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昔話
トリスは僕を守ってくれた。
でも僕はそんなの望んでなんかいなかったよ。
それはまた僕の髪が長かったときの話。
僕と姉さんはよく双子と間違えられるようにそっくりだった。
「……ハルク?」
「トリス!!」
僕に馬乗りになっていたトリスは、バルバトスではなくトリスになっていた。
「ハルク!ごめんな!痛かったろ?ごめんな」
トリスは僕を抱きしめた。
あぁ、トリスだ。トリスの温もりと香りが僕を包む。
「トリス、は悪くない、よ」
背中は痛かったけど、精一杯微笑むと、トリスは申し訳なさそうに、血に染まった僕の髪を撫でた。
「ごめんな、ハルク。俺、長く保ちそうにないんだ。」
トリスの碧い瞳が綺麗に揺れた。
「トリ、ス?」
嫌な予感がした。
トリスの何か諦めたような決心したような瞳が、怖くて仕方なかった。
「ハルク、俺、な、お前が大好きだ。お前と過ごせて、幸せ、だった。」
「トリス!!?嫌だ嫌だ嫌だ!!」
なんで、と呟く。
なんで、そんな最後の言葉みたいに言うの?!
トリスは泣き叫ぶ私に軽く口付けると、目に涙を浮かべた。
『 』
僕の耳元でそう呟き、トリスは自分の剣を胸に突きつけた。
「トリスっっ!!」
僕がそう叫ぶと、トリスはにっこり笑った。
「大丈夫だ、ハルク。また絶対、逢える。」
そう残し、心臓を貫いた。
「っ!!!!!!」
僕は声にならない叫びを上げた。
『ハルク、大丈夫か?』
思い出して泣いていた僕にキースが声を掛けた。
うん、と呟くと、リオンと目があった。
リオンは心配しているように僕を見つめていた。
「リオン、今日は姉さんにとっても悲しい日だから、姉さんの所に行って慰めてきなよ?」
僕は素直にそう思った。
そうしたら姉さんもよろこぶよ、と続けようとしたらリオンは顔を赤くして怒鳴った。
「あまり僕を馬鹿にするな!!目の前で泣いているやつを放っておけるわけないだろう!?」
リオンは
僕を見くびるな、と呟いた。
『坊ちゃん?』
シャルは意外だったのか驚いている。
姉さんを選ぶと思っていたんだろう。
『ほぅ……』
キースは意味深に驚いて感心している。
でも一番驚いたのは僕だ。
姉さんを、絶対選ぶと思っていたから。
「り、お………っ!!」
また泣いてしまうのはきっと、リオンのせいだ、と決め付けた。
僕の目からは涙が溢れて、溢れて、リオンの腕にすがりつく。
リオンは少しびくっと反応したが、優しく僕の頭を撫でてくれた。
きっと顔を真っ赤にしているんだろう、と考えた時、不意にトリスの言葉を思い出し、口をついた。
「『ハルク、リオン、俺は僕はお前が大切だから、君の部下だから、お前を君を』」
「『守ることが使命なんだ』」
僕がリオンにそう言うと、リオンの瞳が大きく揺れた。
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