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兄妹ごっこ



「ロロ、どこいっちゃったのかな〜」
あ〜と漏らすノーマさんに呆れる。
話の流れが分からないのかなこの人は。

「……とにかく、今は大沈下についてです。」
僕が脱線した空気を修正するとノーマさんは不満そうにぶー、と膨れて小さく呟いた。
「なによ〜。ジェージェーはロロが心配じゃないわけ?」

「……誰もそんなこと言ってませんよ」


僕だって、こんな話よりシャイロさんを探したい。でもそんな訳には行かないじゃないか。
彼女が目の前から消えた時、今まで以上にゲートが煩わしく感じた。大体、彼女の発したばいばいも意味が分からないし、別れみたいで気にくわなかった。

「ジェイ?光跡翼についてだが……」

ウィルさんに首を傾げられ、少し苦笑いした。





結局、一番考えてるのは僕か。



「はい。敵の最大の秘密兵器でしょう」

「大沈下を引き起こす装置、か……」

「リッちゃん、本気なのかな……」


「とにかく、」

黙り込んだセネルさんに眉をひそめながら注目を集めた。


「敵の目的がはっきりしたのは、収穫です。今までは曖昧でしたからね」
淡々と言い切る僕にセネルさんが怒気を含めて睨む。

「どうして水の民を敵呼ばわりするんだ。今までそんな言い方しなかっただろ」

そこか、とうんざりする。
この人は本当に、馬鹿だ。

「状況を正確に認識するためにはこの方がいいと思いまして」

あのな、とセネルさんが呟いた。

「みんな、本当にシャーリィが大沈下なんて起こすと思ってるのか?」

「それは……」

何も答えない僕等にセネルさんは声を荒げた。クロエさんは切なそうに顔を歪めていた。


「そんなことあるわけないだろ!シャーリィだぞ?!」




「……そう言われてもね。僕達はシャーリィさんのこと、よく知りませんし」

「だったら教えてやる。シャーリィはな、虫一匹殺せない性格なんだよ」

熱くシャーリィさんについて語るセネルさんにだんだんイラついてくる。


あのですね、と言い切るまえに、彼が遮り僕に詰め寄る。
「大陸を沈めて人類を滅ぼすなんて、そんな大それたこと、できるはずがない!」


……この人は、甘すぎる。


「おい、どうしたんだよ。俺の言ってること、信用できないのか?」


あなたの知っている彼女は、シャーリィさんはそうかもしれない。
でもね、彼女は今、違うんだ。


「大丈夫だって。きっとなんとかなる!」

「いい加減にして下さいよ!」

セネルさんが無理やり浮かべていた笑みを引きつらせた。

「どうして大丈夫だなんて、言い切れるんです?」

「シャーリィさんはあなたにとって何なんですか!」

「何って……!」

どもるセネルさんに冷たい目を向ける。
時には甘えだって必要かもしれない。
でも、あくまで時には、だ。


「今更妹なんて言わせませんよ。現にシャーリィさんはあなたに決別を宣言しているでしょう!」

「ジェイ!」
「ジェー坊!」


モーゼスさんとクロエさんが制す。
でも、止まらない。
すぐそこに、言葉がでているんだ。
彼女がいたら、僕はまだ少し考えて柔らかい言葉が言えただろうか。




「兄妹ごっこの時期はとっくに終わってるんだ!!」




セネルさんが息をのむのが分かる。
消えてしまいそうに、小さく小さく体を縮ませた。


「ワレェ……!」

「物には言い方ってもんがあるじゃろが!」
つかみかかる手を払い、睨み返す。

「言葉を選んでる場合じゃないでしょう。大沈下が起こってもいいんですか?」

淡々と言う僕を、モーゼスさんが睨みつけ、セの字気にすんなと呟いた瞬間だった。



「そうか……。別に悩む必要なんか、ないじゃないか」

顔を上げて明るい声色で目を光らせるセネルさんにクロエさんがどういうこと?と目を丸くした。

「大沈下さえ、起こらなければいいんだ。それなら、誰も文句はないだろ?」

「シャーリィを説得する」

「セネル……それは……」

「俺が話せば、きっとシャーリィはわかってくれるはずだ」

内心呆れながら、興奮するセネルさんに毒ずく。

「あなたのその自信がどこからくるのか知りたいですよ」


僕が言った瞬間、辺りが光り輝く。
みんなが振り向くと、グリューネさんが脳天気に笑う。

「そう我ちゃんが、わたくし達のこと、呼んでるみたいねぇ」
「きっと俺達を手助けしてくれるんだ!行ってみよう!」


「ど〜しよ……?」

渋る僕等にん?と声を漏らし、ウィルさんが眉をひそめる。


「……何か聞こえんか?」

「そうですか?僕にはなにも……」

聞こえるのは波の音だけ。
みんながしんと耳をすます。




―く、

「……あ、」

声を上げたクロエさんが目を丸める。


「……シの字?!」


「あっちから聞こえてくる……」
ノーマさんの指の先を見ると、光り輝く場所が。


早く、こっちに来てくれ



「シャイロさん!」



脳内に響く声は少し苦しげに聞こえた。







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あきゅろす。
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