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もう一つの



「煌髪人は別の世界からやってきた、異種族と解釈していいのだろうか」

異種族……。
うすうすはわかってたけど、やっぱりか。みんなが驚く顔をする。
セネルは、信じたくないって顔だな。

「ああ。そうだろうな」

俺が頷くと、ジェイがコクリと頷いた。

「そうとしか思えません。白くて四角い船は、空から振ってきたんですから」

「にわかに信じろと言われても、困る」

突拍子がなさすぎて……と繋げるクロエはやはり戸惑いがあるようだ。




「でもさあ」

ノーマの呟きにみんなが注目した。


「よくよく考えると、煌髪人ってあたしらとだいぶ違うんだよね」

ごたごた言ってるノーマにジェイが続ける。


「そう。煌髪人は僕たち人類とは、まったく違う人種なんです」



「……!」




ちがう、か。
だったら、
口を開きかけた俺を遮り、セネルが顔を曇らせた。


「ふたりとも、やけに『違う』を強調するんだな」


「それが、誰かの考えでもあると、思いますから」

思い返して下さい、とジェイがみんなの顔を見渡す。
思考を巡らすと、人類と煌髪人が憎み合う理由、だと思う。


「憎み合う、理由」

「それであの光景を見たわけね!」

「誰か、が言いたいのは、人類と煌髪人があまりに違うことでは?」

「そこに、憎しみの根本的な理由があると?」

「やっぱ、和解すんのは無理って、言われてんのかな?」




「違う!!!」


突然声を張り上げた俺にみんなが注目する。


だったら、母様と

「煌髪人が僕たちの敵であることは彼ら自身も明言しています。事態は切迫しているんですよ」


煌髪人の母様と


「煌髪人が異世界からきたと知って、ぼくは正直、怖いと思いました。得体が知れないと言ってもいい」


人間の父様は、


「あなたは、皆さんは何も感じなかったんですか?」


俺は、何なんだよ!!?

「っ……」

声が、出ない。
言いたいことはたくさんあるのに、気持ちが高まりすぎて、喉を風が通るだけだ。






「水の民がどこからこようと、関係ない!」

声を荒げたセネルにジェイが首を傾げる。

「セネルさんにとっては、そうでしょうね。でも、クロエさんとモーゼスさん、シャイロさんにとってはどうです?」



「『関係ない』で、すまされる問題ですか?」


ジェイの目が、試すように光る。


「案外心の中では、僕と同じようにんがえてるんじゃないですか?」


そんな、こと

言わないでっ!!!!!

涙が溢れそうになる。



「……ぅ、」

声が漏れるのを必死に抑えた。
ダメだ、泣くな。泣くなよ!!





「ジェー坊!やめぇっ!!」

「……なんですか?」

いきなり声を上げたモーゼスはジェイを睨む。

「モー、ゼス?」

モーゼスに肩を掴まれ、泣くなと耳打ちさせられた。
……気づかれてたのか。



「ワイはなぁ、家族バカにされんのが一番嫌いでのう。……セの字も、シの字も、大切な家族がおるんじゃ」


あ、と顔を上げたジェイと目が合う。
ジェイはバツが悪そうな顔をして、呟いた。

「……ですがこれは、そう我が伝えようとしていることです」

「……そう我、だと?」

クロエが小首を傾げた。
もう話してもいいでしょう、とジェイが呟いた。



「現在そう我についてわかっていることは?」

「メルネスは、そう我の代行者」
ううんとセネルが唸ると、その通りですと目を細めた。


「……煌髪人は、そう我の意志に従い、人類を粛清しようとしている」



「何だか……あたしらの言ってる誰か、とにてる気しない?」


みんな驚き、各々に顔を見合わせるとジェイがよく気づきましたね、と頬を緩ませた。

「僕たちを導いている誰か、と煌髪人にとってのそう我。このふたつは、似ているんです!」

「すると何か?誰かっちゅうんは……」


「そう我、ってことか?!」

俺の呟きに、みんなが騒ぐ。


「オレ達に加担するのは変だな」

「なぜでしょうね?」

「「……!!」」

俺とセネルは顔を見合わせる。
セネルも気づいたか。

「静かの大地には、」

「もう一つのそう我が存在する!?」



「僕は、そう思います」


大正解と顔を綻ばせるジェイ。



「じゃあじゃあ、そう我の正体って?」

ジェイが指を指す。

「……海?」

「そう我とは海の意志。海そのものです」
だから、正反対の存在が空、か。




「逃げないで下さいよ、セネルさん。真実を見極めるんでしょう?」

「誰が逃げるか!」

「……俺も、もう逃げないよ」

「……シャイロさん?」

ジェイを、みんなを見渡す。



「俺は、ずっと考えてた。俺だけ爪術が戻らないことも、煌我についても、俺自身のことも」


分からなかった。
自分がなんなのか。
ずっと考えてた。
何故生まれたのか。


でも、何もわからなかった。
大きく、息を吸い込み、叫ぶ。




「煌我!教えてくれよ!俺自身の存在を!!」


瞬間、光景が頭を横切る。
光、輝く場所を。


「煌我が、答えてくれたのか……?」

「やったね!ロロ!」

「あ、ああっ!!」



うれしがる俺を横目に、話し合いの結果、そこには最後に行くことになった。












「……さっきは、すみませんでした」

「……そんなの気にすんなよ!可愛いな〜!ジェイは!」

謝るジェイを抱き締めて、苦無を突きつけられたのは余談だ。







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