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家族





「殺せ、煌髪人どもを殺せ」

「陸の民どもめ、よくも!貴様達さえ来なければ!」

「メルネスだけは、何としてもお守りしろ!」



「水の民よ。今こそ箱船に乗せて送りだそう」

メルネス、と声が挙がる。





「今こそ、新たなる始まりを」

母様の冷たく、幼い声。
その母様の声は、少し震えていた。












「家族、か」

ベースキャンプでの会話を終えて、寝静まる頃。ふと目を覚ました。
横には、セネルとモーゼスが転がっていた。
夜はこの格好でいいかと思い、マントと上着を脱ぐ。
マントを一番薄着、訂正。半裸のモーゼスに掛けて、砂浜に胡座をかく。


「……はぁ」


「どがぁかしたんか?」

「あれ、モーゼス?」

俺の横にドカッと座ったモーゼスは、欠伸をしながら上を見る。


「メルネスのことか?」

「……いや、」

首を振ろうとするけど、戸惑う。
彼は、俺を拒まないだろうか。


「母様、とか言うとったじゃろが」


「……あの、さ」

モーゼスの真っ直ぐな瞳に口が開く。


「家族、ってなんだろうな」

「シの字?」
「モーゼスにとって、家族ってなに?」

「そうじゃのう……守るべき人達、じゃろか」


モーゼスが海の遠くを見つめた。

いつものギヒィッとか言ってるモーゼスなんかじゃなく、とても凛々しくて戸惑う。
「辛い時とか、悲しい時に傍に居てくれて、嬉しい時や楽しい時は一緒に騒ぐ、大切な存在じゃ」



「……俺には、そんな人達いないな」



俺が下を向くと、モーゼスはちょっと待ちぃ、と頭を小突く。



「ワイらがおるじゃろが」



「……ガドリアの騎士団長補佐なのに?」
「そがぁなこと関係ないじゃろ」



「お前ら、馬鹿だよ……。みんな……」



俺がモーゼスに向き直ると、モーゼスが嬉しそうに俺の頭を撫でる。
……コイツ、年下だったよな。


「じゃからこそ、ワイらの家族じゃろ?」
うん、と頷くと、モーゼスは砂浜に寝転んだ。




「な、モーゼス。俺の話、聞いてくれるか?」

「おう」

「俺の母様、メルネスだった」

「……言うとったな」

「……おかしいと思ったんだよ。子供の頃、よくテルクェスを出してくれたし、絶対に海水に入ろうとしなかった」

「……」

「でさ。いきなり、クルザント兵が母様を連れて行ったんだ」

「……シの字」

「でも、クルザント兵でも母様を愛した父様は、帰ってこない。俺は一人ぼっちになった」

「……もうえぇ、シの字」

「……誰も、いなかった」

「もうえぇ!!」


「……な、モーゼス。煌髪人の母様と、人間の父様の間の俺は、一体なんなんだ?」


「しっかりせぇ!シの字!!」

モーゼスが俺を抱きしめる。
モーゼスと向き合う形で、顔がよく見えた。

「……なんで、お前が泣くんだよ?」

「ワレが泣かんからじゃろが!!!」

涙ぐんだモーゼスの瞳に俺が写り込む。
酷い顔だな、全く。
泣きたいなら、泣けよ。

「……馬鹿やろ、っ」

そう呟き、下を向くと、モーゼスが頭をガシガシ撫でる。









「今は、ワイらがおるからの」



「!……うん」


それだけ頷くと、モーゼスが俺をまじまじと見る。






「……ワレ、女みたいじゃの」

少し照れくさそうに言うモーゼスに、少し罪悪感。
……仲間に、隠しごとは無し、だよな。





「……俺は、男なんて言ってない」

「はぁ?なにを言うとん……

そう言い、髪を解く。
手櫛で整えると、モーゼスが目を丸める。


「れっきとした、女だ」

忘れてたけど、と苦笑い。



「はぁあっ?!そうだったの、ロロ!?」

「な、何じゃとぅっ!!?」

「そうなのか、シャイロ?!」

「私としたことが!!」


「なっ!?そこ言うんですか!?」

「本当なのか、シャイロ!!?」




「あれ?本当だけどさ、別にどーでもよくないか?」







『はぁぁぁぁあっ!!!!??』

最後はみんなでハモった。
なんだよ、お前ら。


「あらぁ?シャイロちゃんはハーフの女の子なのかしらぁ?」



こいつら、起きてたのかよ…!



仲間6人の悲鳴と、グリューネさんの脳天気な声が響いた。








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あきゅろす。
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