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仲間

「……これ、雪か?」

「なんじゃ、シの字は雪初めてか!!」

辺り一面真っ白だ。
ゆらゆらと白いものが舞い落ちる。
触ると、すごく冷たい。

「モーゼス、寒くないのかよ」

俺がモーゼスを一瞥すると、モーゼスはクカカと笑う。

「ワイは強いからの!風邪なんかひいたことないんじゃ!」

「……ただの馬鹿じゃないですか」

なんじゃとー!と騒ぐモーゼス達に苦笑い。





「ん?なにやら不穏な気配が」

ノーマがそう呟き、空をみた。

「げげっ!?」

「ノーマ?」

ノーマの傍に近づくと、黒い蝶が。


「どひゃあ〜〜っ!!」

ノーマが尻餅をつく。
望海の祭壇にいた煌髪人だと!?



「ここにいたか、セネル!」

煌髪人はセネルを睨む。
相当恨んでいるのか、少し震えている。

「ワルター!?」
「ワルちん!?」
「ワの字!?」

……名前は一番のワルターだな!!


「打ち捨てられた地に逃げ込むとはな。だがムダだ。俺の目は、ごまかせん!」

打ち捨てられた、地?
静かの大地のことか?
アイツの碧い瞳がつり上がる。

「今日こそ、覚悟するがいい」

「何をっ!?」アイツが構え、俺らも構える。
一番近い俺が、切りかかろうとした瞬間。

「決着をつけてやる!死ね!」


そう、髪が光り輝く。
ヤバい、そう剣で防いだ。
紅黒い蝶が飛んできて、弾く。

「……なんだ。しょぼいな」

「アレ?こんなもんだったけ。ぜんぜん大したことないよ〜な」

わらわらと言い始める俺達。
「ど、どうしたことだ?」

ワルターも動揺している。
バカな!!とか呟いた。
少しかわいそうだが、敵だしな。
いひっと口元をつり上げる。



「「チャ〜〜ンス!!」」

ノーマとガッツポーズ!
やっぱりノーマとは気が合うな。

「そう我の恩恵を受ける俺が、貴様らに遅れをとるか!」

「甘いわよワルちん!あたしらだって、爪術使えるんだから!」


飛びかかろうとした瞬間、碧い蝶が目の前に出現。

「シャーリィのテルクェス!?」

テルクェス、がワルターを包み込んだ。ワルターがもがくが、連れて行かれた。
……今の、テルクェスって。





「なんで……?」





下を向くと冷たい雪が紋章に触れた。






「お〜っと、謎の光出現!」
次は何がでてくるんでしょ〜か!
ね、ロロ!と言うノーマ。


「……ああ」

駄目だ、分からない。
どうも暗い俺をノーマがもう〜と唸る。


「変な光景みるたび、すっげ〜疲れる気がする」

「……俺も同じだ」

ウィルが少し疲れたようにため息。
似合ってるぞ、ウィル。


「皆さん、どんな光景を見ました?」


「白くて四角い物体が、陸の近くに横付けされてる所々。」

俺も、私もと声が挙がる。
俺が頷くと、全員一致のようですね、とジェイが言った。





はぁ、とため息が漏れた。
疲れる。光景をみるのもだし、通常攻撃だけ使い続けるのも。
次に見たのは、あの船が出航するとこ。
その次は、寂れた大陸。


また、全員一致、か。












「う〜〜寒!凍える〜!」
あっためて〜、ロロ〜とノーマがすり寄る。

「……」

「もぉ〜〜!」

無反応の俺がつまらないのか、セネルにくっつく。



「何くっついてんだよ」

「行かないで、あなた。(いいから黙って聞いてってば!!)」

「俺で暖を取るなって(…なんだよ?)」

「へへへ。ばれた〜?(ロロの様子、おかしくない?リーダーなんだし、元気づけてよ)」

「……(リーダーってなんだよ)」


「こら、そこ!」

クロエが声を張り上げる。

「何で怒ってるんだ、クロエ?」

セネルの天然ボケ。
おもしろいな、コイツら。

「あはは」

俺が笑っていると、クロエが笑うな!と耳打ちしてきた。
これで、大体のやつは気づいたなと感じた。











「……シャイロ、どうしたんだよ?」

ずっと話さない俺をみて、セネルは声をかけてきた。

「ちょうどよかった。お前に聞きたいことがあったんだ」

「……なんだよ?」

「テルクェス、ってなんだ?」

は?と俺を見るセネル。
意外な質問だったようだ。
なんだそれ、と呟いた。


「……テルクェスっていうのは、水の民だけが作り出せる、海の聖霊あたりだ」

「水の民?」

俺が疑問符を飛ばす。
あとから、聞かなきゃよかったと後悔。

「……お前らでいう、煌髪人だ」






だったら、なんであの人は出せたんだよ。




……その答えは、一つしかない。






「ありがと」

俺はそれだけ残し、先に進んだ。




最後の、オブジェ。
俺は、嫌な予感がしたんだ。




「……戦場!?」

転がる煌髪人の無惨な死体。
戦が始まったのかと錯覚を覚える。
クロエが慌てる。
ガドリア出身はやっぱり慌てるよな。


「大陸のどこかみたいですね」

「オレ達は過去の光景を目のあたりにしているのか?」

ウィルが目を見開く。

「これは、いつの話しだ?」

「それは、わかりませんが……」


「とにかく、人類と煌髪人の間には大きな戦があったということだ」


ウィルが言い終わり、各々が辺りを調べる。

「シャーリィ!!?」
突然セネルが声を挙げ、メルネスを追いかける。
みんな、上の方に追いかけた。


まわりの煌髪人が邪魔で、よく見えない。
「見てみぃ、嬢ちゃんと同じ格好したやつがおる」

「メルネスってこと?」


「ぅわっ!」
俺もみたいと、前に乗り出すとバランスを崩し、倒れ込む。
いてて、と唸り、顔を上げた。



「……嘘」

息がとまると思った。
そんな、馬鹿な。
なんで、そんな格好して、そんな髪の色なんだよ。



「母様っ!!?」

俺が叫んだと同時にメルネスは消え、煌髪人も、母様も、景色も消える。


「……やっぱり、煌髪人だった!!!母様は、アイツらのせいで!!!」

おかしいと思ったんだ。
母様はよく、赤色のテルクェスを出したり、決して海に入ろうとしなかった。

それに……いきなり、クルザントの兵に連れて行かれた。



母様が、メルネス?
じゃあ、人間の父様との間に生まれた俺は??

「一体、なんなんだよっ!!!」

俺が叫ぶと同時に、ゲートが現れた。
俺が切りかかろうとすると、ジェイが叫ぶ。

「落ち着いて!!いいですか!?あなたは今、爪術が使えないんですよ!?力だけで戦うと、確実に死ぬ!」

あなた死にたいんですかっ!?と怒るジェイ。



「安心しろ!!私達がいる!!」



「っ、ああ!」





息を乱す俺に、みんなが頷く。
みんなの強い瞳に、泣きそうになる。






俺には、話を聞いてくれる奴らがいる。


俺には、俺の傍に居てくれる奴らがいる。

俺のために怒ってくれる奴がいる。





俺には、仲間がいるんだ。









剣を構えると同時に、一粒の涙が空に舞った。




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あきゅろす。
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