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団長補佐


それは、突然起こった。


「遺跡船?」

「ああ。メルネス捕獲のためだ。」

「騎士団長がわざわざ?」

「だからこそだろうが。直ぐに出るからな、早くしろよ」

団長補佐の自覚を持て、とぽんと肩を叩かれる。
メルネスには直々に恨みはないけど、やはりガドリアを傷付けたからな。
住民は皆怯えてたし。
団長はあの時に息子死んだみたいだからな。ふう、とため息をつく。



「……強いやつ、いるかな?」


「おい、シャイロ!早くしろ!」



俺の呟きは団長にかき消された。



















遺跡船へつき、望海の祭壇の頂上にはたくさんの煌髪人がいた。
彼等が守るようにして囲んでいる人物。
それこそが、

「あれが、メルネス?」

正直驚いた。
そこには長い髪を光らせ、懸命に祈り続ける少女が。
想像していたよりずっと子供じゃないか。
「メルネス、お前にはガドリアに来てもらおう」

「ちょっとなにアンタ達!?なんでシャーリィを連れて行くわけ!?」

「そうだ!!……メルネスが、俺たち煌髪人はなにもしていない!!」

団長の前に飛び出したツインテールの少女を筆頭に、わらわらと煌髪人が不満をぶつけてくる。
知ってるよ、お前等が原料だということも、お前等はなにもしていないことも。

「黙れ!!!……お前等は存在自体が罪なんだ!!」

怒りを露わにする団長に釘を差す。

「団長!彼等はむしろ被害者だと何度も行ったはずだけど」

「……まぁいい。シャイロ、お前は見回りに行ってこい」

「りょうかーい」

ひらひらと手を振り、足を進める。
ツインテールの少女にごめんね、と呟くと頷いてくれた。




「……メルネス、か」

幻想的な通路を進んでいると、メルネスを思い出した。
あんな少女が、メルネス。
運命を司るという人物。
いや、人なのか?



「!」

思考を巡らせていると、殺気を感じた。

「雷電!!」


少し幼さの残る声が広場に響き渡る。
マントを翻し、バックステップ。
俺がいた足元には紫色の雷と苦無が。

「誰だっ!?」

そう叫び声を上げ、細身の片手剣を両手に構える。

「……へぇ、あれを避けますか。……やりますね」


そう呟く声の主は、紫色のだぼだぼの服を着て、顔の整った少年だった。
「お前、誰だ?」

俺が聞くと同時にタンタンとたくさんの足音が響く。

「ちょっとジェージェー!いきなり走んないでよ〜!」

はあはあと息を切らして、素直に言えば阿呆っぽい少女がいた。
あれ、誰コイツ?と俺に気づき指を差すと、少年はやれやれと肩をすくめた。


「そうだジェイ!私達は迷いに迷ったぞ!」
「ジェー坊、ワレェ、走るときワイの足踏んだじゃろ……」

「軽はずみな行動は控えろ!」

「シャーリィは!!?」

わらわらと彼の仲間が集まるなか、最後の青年の言葉に反応した。
シャーリィ……、ああ。

「メルネスか。悪いけど上には行かせられないからな」

そう言うと、少年が俺とマントをまじまじと見た。



「……ガドリア騎士、ですか」

「な、んだとっ!?」
我が祖国が!?と声を荒げる少女を見ると、なるほどと納得する。


「……違うよ、騎士ではない。俺的にはね?」
俺が呟くと、名前は?と促される。

「……聖ガドリア王国直属騎士団、団長補佐、シャイロ・アリネスだ」

「貴方が噂の団長補佐様か?!」

うん、と言うとビシッと敬礼する。
「お初にお目にかかります!!クロエ・ヴァレンスです!」
やっぱり、ヴァレンスか。



こんな少女が、と切なくなる。
いや、実際歳は変わらないけれども。

「他の奴らも名乗れよ?」

俺が言うと、はいはーい!じゃ、あたしねー!と元気に飛び出してきた。


「あたしは、ノーマ・ビァッティ!一流のトレジャーハンターよ!」

あははーと笑うノーマは、やっぱり阿呆に見える。
ノーマに続き、男共が名乗っていった。

「ウェルテス保安官のウィル・レイナードだ」
お、礼儀正しそうだな、この人。
皆のお父さん、というとこか。


「……セネル・クーリッジだ」
銀髪のセネルは、それどころではないという感じでチラチラと頂上を見ている。
メルネスか。まあ、団長も殺しはしないとおもうけど。


「モーゼス・シャンドルじゃ!!いや〜、男前じゃの〜!シの字は!」
カカカ、と笑うモーゼスに少し戸惑う。

「お前、へ、変態か?」

「なんでじゃあぁぁあ!!!」

だって半裸じゃないか。
下半身はもギリギリだ。
変態め。

「しょうがありませんよ、半裸なんですから」

「うん、あたしも一緒にいたら恥ずかしいもん」

「なんじゃとぉっ!?」

モーゼスはノーマにつかみかかる。
少年はやれやれと両手を上げる。
俺が笑っていると少年と目が合い、申し遅れましたとにっこり笑う。

「僕はジェイです。」

ジェイは愛想笑いを浮かべ俺に近づく。

「……不可視の、ジェイ!」

「はい。ですが、あなたのことはどんなに調べでも分からないんですよね」

そう言い、俺の喉元に向けて苦無を構える。

「あなた、強いですか?」

ジェイの質問に俺の口元は緩やかな弧を描く。

「さあ、……試してみなよ?」

「僕、知らないことがあるのは許せない質なんですよね」

「おい、ジェイ!?」


セネルの声を合図にジェイは苦無を投げつくた。

「よっ!」

俺は剣で弾き、爪を光らせる。

「爪術士か!?……爪が、蒼色?」

ウィルが驚いたように目を見張った。

「弧雷!!」

俺は片方の剣で弧を描き、もう片方で雷を落とす。

「…二刀流のアーツ系に、その爪の色。初めて見ますよ!」

ジェイは嬉しそうに目を輝かせ、苦無いを投げる。弾くと苦無が爆発し、爆風が俺を包んだ。
「っ!」

「セネルさん!早くシャーリィさんの所にっ!!」

「あ、ああ!」

「……させるか!!」

俺は走り出すセネル達に足元に転がっていた苦無を投げつけた。

「ごめんな?俺も任務があるんだ」

そう言い、俺は苦笑いする。
あそこしか、俺には居場所がないんだ。

「……では、悪いけど、死んでもらいますよ」

にっこり笑ったジェイは、直ぐに苦無を投げる。


「くそっ!」

避けていると、セネル達が駆け上がる音がする。


「行かせねぇ!「あなたの相手は僕ですよ!?」あー!もう!!」


「円尾!」

剣を二本地面に差し、ジェイを囲む。
ジェイが眉をひそめると同時に、内側の円陣から炎が吹き出し、外側からシールドで囲む。


「なっ!?」

「……悪いな」

「はっ!」


俺が、後ろを向いた瞬間、シールドが割れたと同時に苦無が肩を掠める。


「てめっ?!」

痛くはないが、服が破れ血がにじむ。


血なんか出した初めての怪我に少し感動。
……って、アレ!!?


「ジェイっ!!お前男、だよな??」


俺が焦ったようにきくと、ジェイはえ、ええ。と返す。



「わぁぁぁあっ!!」

慌てて肩を見ると……ありました。やっぱりありました。
固まってる俺の顔を覗き込む。




「……どうかしたんですか?」

不審そうに俺を見るジェイに少し涙目になる。
「ジェイぃ……」

ジェイに、恐る恐る手をどけて怪我を見せる。



「な、なんですかコレっ!?」

目をパチパチさせるジェイに、俺は時間が止まったようになる。






こいつが、俺の、夫に!?


「どうしようっ!!?」





肩にはアリネス家の血でできた紋章が。



隣には、将来夫にするべき人、ジェイが。





最後に脳内には母様と幼い俺の会話が蘇る。




「母様、なにー?」


『あら、シャイロ。実は、アナタに話があるの』


「?」


『……知っているとは思うけど、アリネス家の女は代々、血を流せられた殿方と結ばれないといけないのよ、つまり結婚しなきゃいけないの。』

「?……やだよー!おれ、男になるんだもーんっ!」

悲しそうに笑う母様の瞳が忘れられない。
『……もし、しなかった場合は紋章が、体を喰らい尽くてしまう』

『そして、最後は光り輝く蝶になるの』


「ちょーちょ?」

『……ええ。だからシャイロ、どうか血を流さないようにね?』

「はいっ!かあさま!」


ごめんなさい母様。
忘れてました。

だって、男に負けるなんて思ってなかったから。






「ちょっ?!シャイロさんっ!?」




俺、女でしたね。



シャイロ・アリネス、18歳。


18年目にやっと自分の運命をしりました。



俺はそこで意識を手放した。





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あきゅろす。
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