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君の名



「……」



「リオン隊長どれにするー?あ、やっぱりフリル?」




僕がそう言うと、リオンは睨む。
あ、フリル気にしてるのかな?


「これは??」

「いい、」

「んじゃ、これは?」

「遠慮しておく」


「もう!理想高いなぁ!!」


「お前の選ぶ服はフリルばかりだからだ。……というか、何故僕とお前は同じ部屋なんだ?!」


リオンがいきなり叫ぶもんだから驚いてしまった。

「いいじゃん別に。……男同士、だし。早く選んじゃおうよ!」

ああ、男同士、いい響き!
そう言いながら、僕はあるものに気がついた。


「ふふっ!リオン隊長!見てみてー」

そう僕が言うと、リオンは僕をみて固まってしまった。



「リオン様、ごきげんよう。マリアンでしてよ」

僕の頭には姉さんの髪型そっくりのヅラ。まあ、姉さんの髪の方がずっと、艶やかだけど。

僕がいつもより高い声、つまり地声を出せば姉さんそのものだろう。



「っっ!!!?」


「どうしたの?リオン様?」

姉さんっぽく言うと、リオンは下を向いた。これ、面白いなぁ。


「……」

「?リオン隊長?」

僕がリオンの顔を覗きこむと、頬に手を伸ばされる。


「っ!!?リオ……」


「……マリアン」


「……!!」


いっつもリオンは
マリアンマリアンマリアン!!
いい加減うるさい!!



「僕はマリアンじゃ、姉さんじゃない!!リオンはいつも僕を姉さんとして見てる!!」


僕はリオンの手を払い、叫んだ。
僕の初めての、拒絶だったかもしれない。

「……ハルク、」

リオンが何か言い掛けたのに僕はカツラを投げて、耳を塞いだ。


「僕は姉さんじゃないっ!!……僕は僕。ハルク・フュステル!フュステル家の長男だ!」



僕はそう言い、強引に話を終わらせる。







ああ、僕は馬鹿だ。
男のはずなのに、男として生きると決めたのに。
最悪じゃないか。
リオンだって、いきなり怒鳴られて困惑しているはずだ。
リオンをちらっと見ると目があってしまった。
リオンは僕をじっと見ていた。



「……何?」


つい強くなってしまう。

僕が悪いって反省しているのに、逆ギレする自分がわからない。






「……すまない」



「へ?」


いきなりのリオンの謝罪に、僕は間抜けな声をあげてしまった。





「……僕は、マリアンとお前を重ねてしまうことがある」


そう言うリオンに酷く胸が痛んだ。
下を向く僕に、リオンが肩に手を置く。



「最後まで聞け。……お前は勇猛な、僕の部下だ。僕が、お前を認めていることを理解しろ」

そう言ったリオンは顔を赤らめた。

凄く嬉しかったのに、それに比例するように胸が痛んだ。
リオンは僕を男として認めてる。

つい女だって言いたくなる衝動が僕を駆ける。


「リオン隊長、僕は……」


女ですと、口を開きかけたとき、リオンがそれを遮った。



「その呼び方を止めろと言ったはずだ」


「……分かったよ。リオ「エミリオだ」?」


「リオン??」


「……僕は二度も同じことは言わん。」


そう言うとリオンはマントを翻し、顔を隠した。



「エミリオって何?リオンはリオンでしょ?」
僕がそう言うと、リオンは不機嫌そうな顔をした。
いやいや、顔真っ赤ですが。




「……リオンという名前は偽名だ。エミリオが僕の本名だ」


「そうなの?!」

僕が驚いた顔をすれば、リオンはフンッとわらう。

「僕の本名を呼ぶのは他人がいない時だけにしろ」



他人がいないときだけ。
じゃあ、本名を教えてくれた僕は、なんなんだろう。




ただ、本名を教えてくれただけで
認めてくれただけで、
僕はどうかなりそうなくらい嬉しいんだ。






「なっ?!ハルク!?」



リオンが驚くのも無理はない。
僕だって自分に酷く驚く。
でもそれ以上に嬉しくて仕方がないんだ。僕はリオンに、エミリオに抱き付く。

リオンの耳が赤く染まることがわかる。


「おいっ!離れ…!「エミリオ」」

僕が耳元でいうと、リオンの体が強張った。






「っ?!」









「エミリオ!大好き!!!」










僕はそれだけ言うと、選んだ服をとって試着室に駆け込んだ。

チラッとエミリオを見ると、真っ赤になって固まっている。


あ、やりすぎたかな?
だって嬉しすぎたんだもん!
エミリオ、と呟いていてみる。



……姉さんは知っているのかな。





思わず考えてしまう。



なんだかんだ言って、僕が一番姉さんと僕を比べてるじゃないか。






自分をあざ笑いながら、冷たい服に袖を通し始めた。










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