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雪の街






「……僕は他人とは関わるつもりはない。友情だとか、愛だとか、余計な感情などいらない。邪魔なだけだ。」


分かってるよ。
リオンは姉さんが全てで
僕なんかは見向きもしないことぐらい。



でも、そんなのあんまりじゃないか。


僕だってリオンの傍にいるのに。



「……うん、」




僕はそう答えるしかできなかった。









『ここがハイデルベルクか?』

「うん。あ、そうかキースはハイデルベルク初めてだったね」



ハイデルベルクを出た後、リーネの村付近の神殿からキースを見つけたんだった。

そう考えた僕にリオンが声を掛けた。


「……ところで、依頼主はどこだ?」


あんまり話したくないんだけどなぁ。
つい本音がでちゃいそうだし。



「……確か、入り口にいるって聞いたんだけ「ハルク様に、リオン様じゃないですか!!?」


高い声が聞こえて、振り向くとピンクで包まれたあの娘がいた。


「、チェルシー!!」


チェルシーは僕に抱きつき、僕も抱きしめる。

「お久しぶりです!!急に出ていくんですもん!!ウッドロウ様も心配していましたよ?」

チェルシーは早口で僕を叱る。
僕より3つも下なのに、相変わらずしっかりしてるなぁ、と苦笑いしてしまう。



「ごめんね?チェルシー。僕だって城のみんなが大好きだけど、いろいろあってさ?」

チェルシーをあやすように撫でる僕を見て、というより一部始終を見てリオンは驚いていた。




「……ノーマルじゃないか、」



『ぶふっ!!』



リオンが呟いた言葉にシャルが反応したけど、ノーマルってどうゆう意味?



僕がリオンを見ると、なんでもない!とそっぽを向いてしまった。



「リオン様もご無沙汰です。お二人に会えて、踊躍観喜です!」


「あ、ああ」


「って何それ?」



「……踊りだすほど大いに喜ぶ、という意味だ。」


リオンが呆れたように言う。
あ、今馬鹿にしたな。
だってチェルシー、難しい言葉ばっかり使うんだもん。



「でも意外でした。ハルク様とリオン様が一緒にいるなんて」


そう呟いたチェルシーにリオンが眉間に皺を寄せた。


「……好きで一緒にいるわけじゃない」

「………」

『(うわぁ。……坊ちゃん、今のは禁句でしたよ)』


『(ハルク、どうした?)』

「(……別に)」



ハルクの反応にしまった、とリオンは顔をしかめた。






「……立ち話もなんですし、お城に行きましょう?」

「あ、チェルシーごめん。今日は任務で来たんだ。」

僕の手を掴むチェルシーに言うと、チェルシーは小首をかしげた。



「はい。ですから、お城に行きましょうよ?」

あれ?
……もしかして…、

「依頼主はウッドロウか?」



リオンの声で僕の脳内はパニックを起こした。

ウッドロウに会うの?!
無理だよ!
ウッドロウには絶対嘘なんかバレる!!
どんなに言い訳しても。
……良いことなんだけど。


とか思いながら、空を見つめる。
雪が降りそうな分厚い曇空だった。








……ウッドロウ、元気かな?








ひらひらと舞う雪が、僕に舞い落ちた。

















「ハルク!!!??」


「ぅ、わっ!!ちょっ、ウッドロウ!?」


ふわっ、とウッドロウの腕が僕を包む。
僕は真っ赤になって慌てた。
ふとリオンを見ると不機嫌そうな顔をしていた。
あれ?なんで?



「心配したよ。いきなり出て行くなんて」ウッドロウが耳元で囁くもんだから、僕は戦意喪失。
ウッドロウの輝く銀髪が綺麗だなー、なんてぼんやり考えた。


「……ウッドロウ、お前が依頼主か?」

リオンの冷静な声に、ウッドロウは少し驚いて顔をあげた。


声、というより、ハルクを引き剥がしたことに。



「……リオン、隊長?」

びっくりして僕はリオンを見ると、リオンは顔が赤かった。


「……なんだ。」

思いっきり顔を逸らすリオンの言葉に僕は少し笑ってしまう。

ははっ、疑問系じゃなくて否定系の、なんだ、だぁ。






「……ウッドッロウ、久しぶりだね」

「……ハルク、君を想わない日はなかったよ」

ウッドロウの優しい言葉に、微笑みに、心臓が早鐘をうつ。
ああ、だから僕はウッドロウが苦手なんだだ。





「いいから僕の質問に答えろ」

リオンはイライラしながらウッドロウを睨む。

「ああ、すまないリオン君。実はね、今日城で私の王位継承の披露宴があるんだ。それに招待したくてね」

「なっ?!僕は魔物退治だと聞いたが……?」

僕を見るリオンに頷く。
うん。だってヒューゴ様が言ったし。



「だって君はこんなことでも言わないと、なかなか来ないだろう?」

にっこり微笑むウッドロウに少しおびえながら、リオンとアイコンタクトする。



コイツは黒だ、と。











「フンッ、僕はそんなものに出る気はない」

リオンが髪をサラっと払う。


「……せっかくスタン君やルーティ君達を呼んでいるのに」
ウッドロウが残念そうだ。
多分演技なんだろうと僕の長年の経験上思う。


「……僕には関係ない」


あれ?リオンが少し怯んでる。
ウッドロウを見ると、顔を伏せていた。
やるなぁ、ウッドロウ。



「はぁ、是非と思ったんだが……。仕方がないね。ハルク、君だけで「リオン隊長も行きたいそうですっ!!」……。」


無理!リオンというウッドロウ除けがいないと、好き放題されちゃうよ!

ついリオンの腕をがっしり掴んだ僕に、リオンは顔を赤らめたみ



「なっ?!」


「(お願いリオン隊長!リオン隊長がいないと僕の何かが奪われちゃう!)」

僕はリオンの耳元で囁く。
リオンはその時点も耳が真っ赤で肩が跳ねたんだけど、内容に固まってしまった。


「っ!?…………仕方がない」



『あ、坊ちゃんそれはさすがに駄目なんですね?』



『何かって何かだよな』



「シャルティエ?他に誰か居るのか??」

「!!」


『キースだ。ハルクの指輪にいる』


「ほぅ、指輪に……。よろしく、キース」

キースは妙に納得したように普通に自己紹介し始めたけど……。



なんでウッドロウ、キース達の声が聞こえるんだ!?

驚く僕にシャルが教えてくれた。


『ああ、イクティノスのソーディアンマスターですからね』


そうか、王様は殺されちゃったんだった。だからウッドロウがソーディアンマスターに。
なんとなく、少し申し訳ない気分になった。















「ところで君たち、まさかその格好で披露宴に出るわけではあるまい?」

ウッドロウのその質問に僕ら2人は固まった。


「僕はこれしかない」



「同じく!さすがリオン隊長!忘れっぽいのは一緒だねっ」



「なっ!?お前と一緒にするな!僕は最初からこんな事聞いて入れば、ちゃんと正装の用意をしていた!」


「正装、ねぇ」

僕にとって正装ってドレスなんだけど。


「大丈夫だ。2人の服はこちらで用意しよう。」


ありがとう、とは言うけど。
ウッドロウの選ぶ服ってなんか僕の趣味に合わないんだよね。


なんか、可愛すぎなんだよな。







「だいたいハルク?なんで君はそんな服なんだ?」

「っ!!!」



しまった。ウッドロウに口止め!!つい忘れてたぁ!


「……あの服、動きづらくてさ。」





「あの服?ああ、メイド服か?似合っていたと思うが?」




「めっ!!メイド服だとぉぉっ!!???」

僕より早く反応したリオンは真っ青な顔をして、まさかウッドロウもなのか!?とか呟いていた。


「ど、どうしたんだいリオン君?!」


ウッドロウも驚いたらしく、リオンに駆け寄った。



「何故男なのにハルクはメイド服を着るんだ!?」





ヤバい。
バレる。
そう思った瞬間、




「何を言っているんだい?リオン君。ハルクは『『うわぁぁあ!!!』』じゃないか。……?」


キースとシャルという名の勇者達が叫んだ。



『坊ちゃん知ってますか!?メイド服って男性用もあるんですよ!!』




『俺も若い頃よくきたなぁ!メイド服!!』



「(シャル、キース!!まじありがとう!)」

僕は心のなかで叫び、リオンを外に押し出す。



「さ、リオン隊長!!正装に着替えないといけないし、早くメイド達のところに行かなきゃ!」


僕の発した言葉が棒読みでないことを祈りながらリオンの背中をぐいぐい押した。
リオンは押すな、と言う。
恐らく気づいてないだろう。





あっけにとられているウッドロウをみて、僕は口パクで、後で!と言うとウッドロウは頷いてくれた。





早いとこ偽装しないと!!
あとスタンがいるんだし!!

そう思いながら僕はリオンを押し続けた。





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あきゅろす。
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