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雷ゴロゴロ




「クーロエっ!剣の稽古行こうぜ」

「あ、ああ……」

仲間達に女だと打ち明けて、すっきりした俺はクロエを剣の稽古に誘うことにした。
……そんなに性別って大事だったのか。
少し戸惑っているクロエを見て思う。



「黙ってて、ごめん」

「いや、私は別に気にしてはいない。……信じられないだけだ」

クロエが顔を洗い、帽子をかぶる。

「なに、俺そんなに格好良かった?」

「ば、馬鹿か!……慕っていただけた」

「……好きだった?」

「なっ!?断じて違うっ!!強くて、尊敬していたんだ!」

「んなの、女でもかわんねぇよ」

俺なんだからな、と言うとクロエはふふっと笑った。
可愛いなぁと思いながらクロエの手を引く。


「クロエ、行こ!」

「ああ……シャイロ」




















「……駄目じゃ、もう女にしかみえん」

「……死んでください」

朝一番のモーゼスさんの発言に嫌悪感。

「大体、ジェー坊は知っとったんか?」

「ええ。普通分かるでしょう……。僕を誰だと思ってるんですか?」

馬鹿なモーゼスさんとは違うんです、と嘲笑ってやるとモーゼスさんは、うぅんと唸る。
あれ?いつもならここで、なんじゃとワレェ!!とか煩いのに。


「どうしたんですか?」

「……シの字の体、柔らかかったしのう」

「……はぁ?」

少し照れているのが気持ち悪い、じゃなくて。

「なにしたんですか……?」

「……抱き締めたんじゃ」

「……死んでくれませんか?」

「し、知らんかったからのう!つい!」

コイツが情に流されやすいのは知ってる。けで、なんで頬を染めるんだ。


「死ね!!」


苦無を投げると、ギヒィッと悲鳴を上げた。……なんか、モヤモヤするなぁ。







「ふぅ」

「クロエ?」

稽古を終えた俺とクロエは少し休憩をする事にした。
突然へたり込んだクロエに驚く。

「どうした?」

「いや、やはり騎士団長補佐との稽古はキツいなと」

嫌みじゃないぞ、と言うクロエに視線を合わせてしゃがみ込む。

「なんだよ、お前ついてきてただろ!」

十分すげーぞ、といひっと笑うとクロエがにっこり笑った。

「ありがとう」

「ん。なぁ、今日はどこ行くんだっけ?」
「ああ、今日は昨日見えた所だろう」


ウィルに怒られる前には帰らないとな、と苦笑い。
クロエはくすくすと笑う。


「……な、クロエ」

「うん?」

「俺、人生で今一番楽しい!」

「……私もだ」

不意にクロエが俺の髪を解く。
パサリと肩に落ちた。


「どうした?」

「あ、あのっ!男装は止めないのかと……」

クロエが自分でもビックリしたように慌てていた。

「男装?別にそんなつもりないぞ?」

キョトンとして答えると、クロエが顔をしかめていた。











「遅いっ!!」



「いって!!」

「ぅっ!!」

ゴツンとウィルの強烈なげんこつをくらった。

「……ウィル。お前、拳になんか装備してる?」

あいたたと頭を抑えて聞くと、もう一発いくか?と構えられた。


「……あ、おはよ〜」

「…今起きたのか。ノーマ、クーリッジ」

「あ、おはよー!セネルにノーマ!」


「……ああ」

ふぁあと欠伸するセネルに苦笑い。
モーゼスが一生懸命起こしてたな。


「ウィル、朝飯は?」

「ウィルっち〜〜。お腹へったよ〜」

ノーマとセネルが食料を求めると、ウィルが悲しそうにため息。
お父さん兼お母さんだな。


「朝食ならキュッポ達が準備してますよ」
「またホタテかぁ〜〜」

「……いい加減飽きたよな」

少し残念そうなノーマに苦笑い。
分かるよ。毎日ホタテはキツいよな。


「……何か文句でも?」

「「ありません」」


ジェイ、頼むから笑顔止めてくれ。

朝食を食べていると、いきなりノーマが俺に寄り添う。

「ロロ〜。あたし、もうホタテ無理〜」

「うん。俺もキツい……。でも、見てみろよあの三兄弟の顔」

そっと耳打ちすると、ノーマはあちゃあ〜と頭を抱える。
なんだよ、あの妙に自信ありそうな顔は。

「……何かありましたか?」


その後、俺とノーマは首が引きちぎれるぐらい首を振った。
















「……ぷっ」

「モーゼスさん、子供じゃないんですから、そんなに騒がないで下さいよ」

「うひゃひゃひゃっ!!」

爆笑する俺にモーゼスはじゃあかしい!と頭を殴る。
いたた。そこはウィルからの古傷……。
言い合いを始めたジェイとモーゼスから、クロエとノーマに視線を移す。


「もしも〜〜し、クー?いつまでひっついてる気〜」

「す、すまない」

「あれれ〜?クロエは雷苦手なのかなぁ〜?」

「かわい〜悲鳴だったこと」

俺とノーマがからかっていると、クロエが顔を逸らす。
可愛くていいと思うけど。







「あー……。ジェイ、帰っていい?」

中に入った途端、振り返る俺のマントをがっしりジェイが掴む。

「……何を言っているんですか?」

「蒸し暑い……」

この空気だいっきらい、と続けるとノーマがあたしも〜と顔を歪ませる。

同時に、雷がドカン。
クロエ……可愛い。
ノーマの耳打ちにバツが悪そうな顔をして肩を震わせる。


「……守ってやりたいな、セネル!」

「……何の話だ」


いひっと笑うと、セネルがげんなりしていた。













「オウ、ジェー坊。今、ワイらが見たんは何じゃ」

「流れ星、かな?」

俺の呟きにジェイは頷く。
「はい、そうでしょうね。モーゼスさん、知らないんですか?」

知らんわけあるかい!!とモーゼスが熱くなる。

「何であげなもんが見えたかっちゅうことじゃ」

「わかりませんよ。そんなこと。」

ジェイのあっさりとした答えにげんなりした顔のモーゼス。
また俺はセネルの後ろで笑いを堪えた。



「……海?」

「海だったわねぇ」

「わけわからんわ」

「……綺麗な景色ベスト3とか?」

「はぁ……」

ジェイくーん。ため息大きいよー?



「……ふう」

セネルが肩をすぼめる。

「セネルちゃん、落ち着いて。大丈夫、みんながついてるわ」

「……セネル」

俺がセネルの背中を撫でると、大丈夫だと顔を上げて笑みを浮かべていた。






「うわ、デカい津波だな…」

だけど、それがなんだってんだ。
みんながうんうんと唸る中、ノーマが声を張り上げた。

「ちょっと、『誰か』ぁ!もっと分かりやすく説明してよ〜!」

誰か、か。
そう言えば、ジェイは知ってるみたいだけど、俺はやっぱり分かんない。
はあ、と溜め息が漏れる。
やっぱりまだ、爪術が戻らないことも。












またドカシャァーンと雷が轟く。

「クー、作戦開始よ!」

「ほ、本当にやるのか?」

「なぁ、なにすんだよ?」

「あれ、ロロ。今からクーがセネセネに抱きつくの」

雷……なるほど!

「……そうだな!!それは特権だ!」

言い切る俺とノーマが、クロエに行けと手を振る。

ちょうどセネルの目の前に行ったとき、雷が。


「き……!……ゃああ」

「何やってんだよ、モーゼス」

「どうもでかい音は苦手でのう。」

「はぁ……」

クカカと笑うモーゼスと、頭を抱えるクロエに爆笑。

「うひゃひゃひゃっ!!」

「……その笑い方止めてくれませんか?」
ひぃひぃと息を乱す俺をげんなりした顔で見るジェイ。最近、みんなこういう顔ばっかりだな。







「……?」

「う、海?」

クロエのきゃああっ!
と言う悲鳴に似た叫びに脳が覚醒。
って、おい!!


「落ち着け、クロエ。沈まないから、大丈夫だから」

ノーマとアイコンタクト。
ちゃっかりセネルに抱きついてんじゃんか。思わず緩む頬を引き締めた。

「本当にだ……。どうして?」

「僕たちがいるのが、現実の世界じゃないってことでしょう」

ジェイの言葉に勢いよくはなれたクロエを笑っていると、目の端に、映った。

「メル、ネス?」

「シャーリィー……!」

空を見上げるメルネス。
やっぱり、空を見るメルネスの瞳は悲しみの色を写していた。

「煌我、なのか」




俺の呟きにみんな空を見たげた瞬間。
またあの、異次元。
喜ぶウィルとモーゼスとは反対にイライラが積もる。








「あー!ゲートの阿呆!」


俺の叫びで戦闘が開始した。









「あれは何だ?」

「流れ星が落ちてきた」

「いいえ、あれは船。白くて大きな船よ」

そして、世界が真っ赤になった。



こんなことがあるのか、と目を疑う。

でも最後には、きれいな空になった。

久々に空を見ると、驚くほど綺麗だ。









「最後になって、情報がつながりましたね」

「しかし……にわかには信じがたいぞ」


頭を掻くウィルに苦笑い。



信じなきゃ、やってらんないって。







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あきゅろす。
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