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喧嘩







生憎ながら、僕は大好きでした









さようなら、リオン隊長















そう気味が悪いぐらいの笑顔で
凛々しく言い放つハルクに


僕はただただ


驚き目を見開くことしかできなかった。






















『……はぁ』

「……」

『はぁぁ〜あ』



「……煩いぞ、シャル」



わざとらしくため息をつくシャルに対して僕はコアクリスタルを指で弾いた。
シャルはいたっ、と言うが負けじと呟く。

『さっきのは、あんまりでしたよ……坊ちゃん』

シャルの言うさっきとはハルクのことだろう。


『なんであんな事言ったんですか?!』

きゃんきゃん騒ぐシャルを横目に僕は思考を巡らせた。



僕だって、あんな事を言うつもりはなかった。ただ、僕の大嫌いなものが……ホモということがハルクだった、というだけだ。


マリアンには約束したが、誰かに吐き出したいと思うのは人間の性だろう。



「シャル、お前は信じないかもしれないが……」

『え?……なんですか?』


「実は、ハルクはホモらしいんだ」


『えぇっ?!ホモ!?』



「僕だって理由なしに拒んだりなどしない……」



『ぶっ!!っ……そう、でしたね。小さいとき、くっ…!男に襲われたんでしっ、たね(お、面白すぎる!!)』

「?ああ、だからトラウマでな……」


所々吹き出してしまうシャル。
だってだって!!ホモはないでしょ!?
僕の肉体があったら涙目だったろう。

真剣な顔をする坊ちゃんに、そんなわけないと言ってしまいそうになる。

……だって女の子なんだから。






『坊ちゃんは反省してるんですか??』


「……何故僕が?アイツがホモなのが悪い」


シャルの言葉にツンと返す。



だが、アイツに睨まれたとき僕の中で何かが痛んだ。

いつもの人懐っこい笑顔が消え失せ、見たこともない悲しい目をしていた。その時、向けられる視線を感じてこんな顔をさせてしまったのは僕か、と自覚させられた。


『……でも大嫌いは言い過ぎでしょう?』

「……」


分かってるさ、ただ意地になっていただけだ。怖かったんだろう。まだ会って数週間なのに、ズカスガとぼくの心に入ってくるあいつ、が。











僕の精一杯の拒絶だったのかもしれない。




『坊ちゃん??』


「……シャル、僕はこれから何をすべきだろうか?」

珍しく僕に聞いてくる坊ちゃんに僕は少し驚いた。


『そうですね……まず、ハルクを探さないと』
それだけ反省してるんだろうと、微笑ましかった。




「シャルは、ハルクのこと気付いていたか?」



『いいえ、ただそんな風には見えなかったですね。……ただ、坊ちゃんが大好き!って、感じでしたね』

「……」


僕って演技力すごいなー!
自分に脱帽します!
坊ちゃんも照れてるのバレバレですよ?







そういえば、アイツは


大好きでした


とか言っていたな、と思い出す。



僕は馬鹿か?
自分で思い出して照れてどうする。







「あら?……何してるのエミリオ?」

「マリアン?」

「ハルクと任務のはずでしょ?」

マリアンの問いに僕は眉をひそめるしか出来なかった。

「任務?」

「ええ。……ハルクったら、忘れていたのかしら?ヒューゴ様が急にハイデルベルクに魔物退治に行って来いと「っ!!」エミリオ?!」

マリアンの言葉の途中で僕は港に走り出した。


あの馬鹿め!!独りで行く奴があるか!


そう思いながら、前もこんなことがあった、と考えた。
あの時は間に合ったからよかったが瀕死の状態だった。



学習能力のないやつだ。









港に着くと、ハルクが船に乗る瞬間だった。


「ハルク!!」
僕が呼ぶと、ハルクはびくっと肩を跳ね上げ無表情に振り返った。

「……なんでしょう?リオン隊長」


「……その話し方も呼び方もよせ」


なんだって言うんだ。一種の嫌味だろうが……ただ居心地が悪い。



「何故僕に任務を知らせない??」



僕がハルクを睨むと、アイツは悠々と答えた。


「リオン隊長の手を煩わせるほどでもないと思いまして」



「フン、以前死にかけたのは誰だ?」

僕が鼻で笑うとハルクはギクッとした。


「うるさいなぁ!だってあれ……は!」



ハルクはっとしたような顔をして、なんでもありません!と顔を逸らした。


こいつ、おもしろいな。
僕が笑うとハルクは驚いたような顔をする。




「リオン隊長、初めて僕に笑った……!」

「っ!?」

うわぁ、とハルクは喧嘩しているなんて思えない笑顔で僕をみた。


『そうですよ!坊ちゃんのスマイルなんて100万ガルド級ですよ!』


『いや、マリアンの前では0だろ』





「っ、煩いぞお前ら!!」








僕の叫び声と共に船は出航した。










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