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嘘
「ただいまーぁ!!」
勢いよくヒューゴ邸に入るとメイドさん達が、お帰りなさいませ、と出迎えてくれた。
「あれ?リオンは?」
「リオン様はマリアン様とお茶会でございます」
「…ふーん…ありがと!」
僕は必死に笑顔をつくり、一気に部屋に駆け上がった。
また、姉さんか。
いっつもリオンは、姉さんばっか。
姉さん姉さん姉さん!
僕の姉さんなのに!!
あれ?姉さん?
…そうか!この前からのモヤモヤはこれだったんだ!!
『(違うだろ)』
あー!!すっきりしたぁ!
モヤモヤ無しなら今日の任務はもっとうまくいってたのになぁ。
「今日はつかれたねー!キース。あの魔物は強かったぁ」
『ああ、あの体液はすごかったな。お前ずぶ濡れだったじゃないか』
キースが笑いながら言うと、ぞくっと虫酸が走った。
あれは気持ち悪かった。ざばっとヌルヌルした緑色のものが……。
「……シャワー浴びてくる!」
『あ、ああ。……ちゃんと俺はずせよっ!?』
「ああ、まだ前つい一緒にはいったこと照れてんの?のぞかないでよねー?」
僕は笑いながら無作造に替えの服と指輪を机に置いた。姉さんがいてよかった。洗濯してくれるからバレないし。
『馬鹿が!お前の貧乳なんかみるか!まだハロルドのほうがデカかったわ!』
「うわっ!キースさいてー!僕だってBはあるもん!」
『嘘つけ!!』
「本当だから!!あ、なんなら見る?」
『おまっ?!』
「あははっ!キースえろー!」
そう言い残し、シャワールームに入った。
あぁー。
気持ちいい!!本当にあれは気持ち悪かったなぁ。丹念に頭や体を洗った。
「Bはがんばりすぎたかな?」
自分の胸をみて残念になる。
だってサラシ付けてるから、成長しないんだもん。
「ふぅ」
あ、上着あっちじゃん。
やっとサラシを巻き終わって、重大なことに気がついた。
まだリオンは帰ってきてないし、大丈夫かな。
そう安心して、服を手に取った瞬間だった。
『っ?!ハルク!?』
頭上から声がした。
「っ!!誰?!!」
ばっ、と上を向くと吊されたシャルがいた。
「シャ、ル?!……どうしてそこに?」
『はい……坊ちゃんをからかったら、じゃなくて!!ハルク、あなたは……』
シャルのコアクリスタルが眩しい。
お願い、それ以上言わないで!!
『女の子なんですか?』
ああ、胸が苦しい。
「ごめん、シャル。嘘、ついてた。」
僕は肯定の言葉を出した。
嘘をつくことが、こんなに苦しいなんて。
急にリオンに申し訳なくなった。
『僕はむしろ嬉しいですよ!…ハルクが本当の事を言ってくれて。(ハルクが女の子で)』
「あの、さ。リオンには黙っててくれるかな?」
シャルに安心した僕はおずおずと言った。
『坊ちゃんですか?なんで?』
「リオンの、傍に居られなくなっちゃうから。」
リオンにバレたら絶対辞めろっ!とか言われそうだし。
それに、と続ける。
「女なんて、守られてばかりで、対等な立場で人と向き合えない。
僕は、その事が凄く凄く大嫌いなんだ」
僕が言い切るとシャルは少し笑った。
まるで坊ちゃんだな、と。
『ハルク……分かりました。僕のコアクリスタルにかけて誓いましょう。』
「本当!?ありがと!シャル大好き!」
シャルの言い方に笑ってしまったけど、僕は嬉しくて嬉しくて優しくシャルを抱きしめた。
『うわっ!?ハルク!?(うわうわっ!まるっきり女の子じゃないか!?)』
シャルがチカチカ点滅するのを横目に、キースにバレちゃった、と言えば
『時間の問題だったろう』
キースは呆れたように言った。
「そうかなぁ。僕は完璧な男装だと思ったんだけど。」
僕が呟くとシャルが笑った。
「僕は前々から怪しいなぁって思ってましたよ?」
「えっ!嘘?!」
『お前も年が上がるに連れて、バレやすくなるだろうな……な、なんだお前ら!?』
「今のエロい意味だったよね?」
『はい。キースはむっつりですから』
僕とシャルがぼそぼそ言っているとキースが怒鳴った。
『アホか!俺はただ……!』
だって、そういう意味でしょ?
と言うと、無言になった。
あ、からかいすぎたかな?
僕はいひっと笑い、キースにご忠告ありがとね、と笑いかけた。
『……ハルクが女の子、か』
『シャルー!リオンの所いこー!』
駄目だ、だってこんなに
坊ちゃんを想っているんだから。
シャルティエの呟きはハルクの声にかき消された。
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