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嫉妬とおんぶ


「おい、ハルク。起きろ。」


「起きてる、おき、てる……ぐぅ」


「おいっ!?何回目だと思っている?!」



だって眠いんだもん、仕方ないよ。
睡魔には勝てない。
リオンは僕を呆れた顔で見た。


『無理だ。こいつは起きない。』

「……」


『まるでスタンさんですね』


シャルの呟きに、はっと目が覚めた。



「スタ、ン?スタンのこと知ってるの?!」


「なっ!?知りあいなのか?」

リオンが少し驚いて聞いてきた。


知り合いもなにも、




「僕はいままでリーネの村にいたから」



『え!?そうなんですか!?』


「うん。だからリオンの事、聞いたら興味もっちゃって、よく聞いてたんだよね」

そう僕が言うと、リオンはすこし赤くなっていた。


「あ、スタンがよく言ってたよ!
リオンは強くていい奴で、俺の友達なんだ!って」

僕が言うと、リオンはふんっ、て鼻でわらった。




「馬鹿め。僕はあんな奴と友達になった覚えなどない。」


僕は少し笑ってしまった。
それにリオンは不機嫌そうな顔になる。


いやいや、顔赤いからね。
照れ隠しって分かるようになったなぁ。最近。




『とか言って、坊ちゃん本当は嬉しいくせ「窓から捨てるぞ、シャル」ひいぃっ!』



『シャルも大変だな』

というキースに、うん、と呟いた。
















「おはよう。ハルク、リオン様。」

下に降りると、姉さんが掃除をしていた。
「おはよう、姉さん」

「おはよう、マリアン。今日も暖かいな。」

「あら?今日は任務はないのかしら?」

「いや、今日は魔物退治にな。」


「そうなの。気をつけなさいね。」


姉さんが微笑むと、リオンはマリアンは心配性だな、と少し赤くなった。


リオンは姉さんを優しい瞳で見つめる。
うわぁ、リオン態度ちがうなぁ。

心の扉全開!!

ってかんじ。

気がつけば僕の口元は下がっていった。



『ハルク?どうした?』



あれ?


なんか、変な感じ。


なんで、胸がズキズキするんだろう。




「大丈夫、だよ」



僕はキースにつぶやいて、リオン達に気づかれないように去った。





行く先は、昨日ヒューゴ様から退治して来いと命令された、魔物の巣窟。








「あ゛ーっ」

僕はため息を大きくついた。
なんでだろうな、すごくモヤモヤする。



『どうしたんだ?』

キースが心配そうに問う。


わかんない、よっ!と、新しく貰ったマントを翻す。
服は全部リオンの色違いのおさがりなんだけど、全部姉さんが準備してくれた。






そういうことまで何故かイライラした。






『おい、ハルク!ここに魔物の気配がするぞ!!ここが、魔物の巣窟じゃないか?』


「ふーん」



せっかくキースが教えてくれたのに、イライラして流してしまった。
ごめんなさい。後で謝ろう。



『おい、ハルク?お前さっきからおかしいぞ?』


「別に!早く片付けて、リオンに見せつけてやろっ!」




リオン、と言う時だけ思わず顔が強張った。
なんなんだよっ!!もうっ!




僕は強く言い、にひっと笑った。

「こーゆう時は、キース。晶術だけ使おっ!!!」



『あ、ああ。(……コイツ、相当イライラしているな。イライラすると、晶術を使いたがる癖がある。嫌な癖だ。)』





魔物の数は約45匹。
まぁ、余裕かな。



キースの属性は火と水。
今日は少し難しい術をしてみようかな、と目を閉じる。




すぅ、と息を吐いて、キースを取り入れる。



『気力を温存するぞ!』


「はいよっ!!エクスプロード!」


僕的には十分抑えたつもりだったたんだけど、はぁ、とキースがため息をついたのが分かった。








「タイダルウェーブ!!」

次は水の晶術、と大量の水が敵を打ちつける。
もーすぐ最深部だ。


ぼくは、ゼエゼエと息を切らす。
晶術は威力は強くて、たくさん敵を倒せるんだけど、気力がすごく消費される。





「つか、れたぁ」

『だからいっただろ?馬鹿め』

「うる、さいなぁ」


キースを睨みつけると同時に、地面が揺れた。



「ぅ、わっ!!?」

不意に目線をあげると、今までの魔物とは桁違いの大きい魔物がいた。

コイツが親玉か。
しかも鳥タイプ。





「最悪。僕が空中戦嫌いなの知ってる?」



気力は残り少ないし、回復用に回すべきだろう。
刀を使うしかない、んだけど。
……一度言ったことは守りたい。





『ハルク!?諦めて刀を使えよ!』

「いけるいける!!」



僕はそう言うと、ふくの袖を捲り上げた。体術なら結構得意だし、いけるかな。



「はぁっ!」

僕盛大にジャンプして上から跳び蹴りを喰らわせる。ついでにパンチもお見舞いしておいた。


ぐぇっ、と音と共に鳥が落下した。


よし、今から総攻撃をくらわせれば…!



殴りかかろうと構えた瞬間。









あ、れ……?



『どうした?!』


いきなり視界が揺らいだ。思わず片足をついてしまう。



まさか、こいつ毒持ち……?!
聞いたことがある。
体表面に毒があって、生身でさわると毒状態になるらしい魔物。


『ハルク!ボトルを使え!』

ぼ、とる?
なんだっけ?そ、れ?

ぼーっとして、リカバーやパナシーアボトルを使うことに頭が回らなかった。



徐々に体力が減っていくのがわかる。







「リオンに、謝りたかったな。」

そう呟くと僕は目を閉じた。







とおくから、こえがきこえる。

だんだんちかくなっていく。



「おい!ハルク!!返事をしろ!」


目をうっすら開けると、目の前に綺麗な顔があった。


声がでないから、
りおん、と口をうごかすと、リオンは安心したように息をつき、アップルグミを僕にたべさせる。


良かった。体力は少し回復した。ふらふらとした足取りで立ち上がり、話そうとするとリオンが手で制した。




「話したいことはたくさんあるが、まずコイツを倒してからだ。」


うなずくと、リオンは僕に休んでいろ、とうながした。



どうやらパナシーアボトルも、きれてしまったらしい。





僕は、渋々頷いた。






『坊ちゃん、こいつに素手でさわらないようにしてくださいね!!』



「わかっている!!」



リオンはシャルともう一本の剣を構える。


「はぁっ!」

リオンはどんどん敵を攻めていく。
リオンは空中戦は得意なようで、軽々しく敵を斬りつける。



最悪だ。気力をもっと温存していればよかった。
まだ毒状態で戦えなくて、足を引っ張っている自分が本当に嫌になる。



「キース、僕ってなんなんだろう?」


僕がそう呟いた瞬間だった。



「くっ!」

とリオンが声を漏らし、苦痛に顔を歪めている。
敵は爪でリオンの腕を引っ掻いていた。
リオンの肌あたったようで、リオンも毒状態だった。







「っ!リカバー!!」

僕は思わず唱えていた。
ぽぅ、と光がリオンを包むと同時に僕の体力も限界だったようで、僕は意識を手放した。














『それにしても、なんでハルクは刀を使わなかったんですか?』

『アイツが今日は晶術しか使わないと決めていたからな』


「ふん、くだらんな」


リオンのキツい一言で目が覚めた。



うるさいなぁ、と言おうとしたら異変に気がついた。



あれ?
なんか、浮遊感?





気づけば、目の前にはリオンの後頭部。

これはアレかな?
まさかのアレかな?


僕の顔は一気に赤くなる。



「う、わっ!?リオン!?」


僕はリオンの上で暴れた。
暴れますとも!
恥ずかしすぎる!



「暴れるな!耳元で叫ぶな!」



リオンは怒鳴る。
だってだってだって!!




『何を恥ずかしがる必要がある?』




キースのからかうような口調にイラッとした。
くそ、コイツ根に持ってるな。




全くだ、と言うリオンだって耳真っ赤じゃないか!!!





密かにキースにファックポーズを取っていると、リオンがおもむろに口を開いた。



「何故一人で行ったんだ??」


多分不機嫌そうな顔をしているんだろうなぁ。


「……姉さんと楽しそうだったから」


邪魔しちゃ悪いなーって思って、と続けると、リオンが慌てて


「なっ!?」


耳を真っ赤にする。
ああ、まただ。
すごくイライラする。


リオンは見えないだろうけど、僕はきっと不機嫌な顔をしているんだろうなぁ。

いきなり黙った僕を不思議に思ったのか、おい、と声を掛けられた。





顔を見られたくなくて、

僕はリオンの肩に顔を埋めた。








「っ?!おい、ハルク?」


「ごめん。疲れた」







僕はぶっきらぼうに言い、すぐに寝たフリをした。




リオンは諦めたように僕を一回担ぎ直して歩き始めた。





「……リカバーの件、礼を言う、ぞ」

そう呟いたリオンに、聞いていないフリをしてリオンを掴む手に力をいれた。










その様子をヒューゴが見ていたことを知る由もなく。









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あきゅろす。
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