短編
(浮気の蒲焼き/銀♀桂→高?/学パロ/ギャグ/甘)
「銀時、すまないが今日は急用があるため一緒には帰れない。」
すごく申し訳なさそうな顔をして俺に話し掛けてきた桂。
俺と桂は所謂恋人同士ってやつで、毎日一緒に帰っていた。
桂が急用がある時は大抵、家の事情が多かった。
だから俺は何も不思議に思わず、桂と別れた。
どうせ明日も会えるんだし。
いや、明日は土曜だから会えないわ。
失敗した、遊ぶ約束すれば良かった。
帰ったら電話するか。
なんて考えてる時、新八に話し掛けられた。
「あ、銀さんが1人って珍しいですね。浮気でもされましたか?」
「ばーか。あの堅物くそ真面目がそんな洒落たもん出来るか。」
「ひ、酷い言われようですね。でも確かに桂さんはしなさそうですよね。じゃあ久しぶりに僕と遊んでくださいよ!」
「えーどぅしようかなー。」
たまには新八と遊ぶのも悪くないと、くだらない会話をしている時教室の扉が開いた。
ガラガラ…
「あら?銀さんって桂さんとデートだったんじゃないの?」
「は?」
いきなり意味不明な質問をしてきたのは、新八の姉貴であるメスゴリラ改めてお妙。
「おい白髪。てめー今変な紹介しただろ。」
笑顔の後ろにどす黒いオーラを纏う。
女とは思えない、恐ろしいやつ…。
「あ、姉上!それで、どうしてそう思ったんですか?!」
新八が空気を変えようと頑張る。
姉とは違って、すごくいい子だ。
「だって桂さんさっきトイレで念入りに身だしなみチェックしてたわよ。」
………。
「だからてっきり銀さんとデートかと思って。」
そこで2人の視線が俺に集まる。
「いやいやいや。女子なら身だしなみ整えるの当たり前だろ!」
「でも桂さんって普段自分の容姿には無頓着ですよ。」
「そうよね、この間なんて頭に蝶々がとまってても気付かなかったし。」
いや、それは身だしなみの問題なのか?
「とにかく、身だしなみくらい普通だろ。きっと親戚一同がそろう葬式かなんかだよ。」
何故俺がこんな必死にヅラを弁護しなければいけないんだ。
でもヅラが浮気なんてするわけないし、あいつのためにも汚名はかぶらないようにしなければ。
俺っていい彼氏だ。
なんて自己陶酔してる時、また教室の扉が開いた。
ガラガラ…
「あら九ちゃん。」
「お妙ちゃん、新八くん、そして…」
何故か俺を見て気まずそうな顔をする九兵衛。
「なんだよ、なんか文句があるなら言えよ。」
「いや、文句ではないのだが…」
「九ちゃん、桂さんが浮気してるらしいのよ。だから銀さんピリピリしてるのよ。」
「…やっぱり…」
「だからヅラはんな事しねぇって…って、え?!…ぇぇえ?!」
「九兵衛さん!やっぱりってどうゆうことですか?!」
「九ちゃん何か知ってるの?」
新八とお妙は他人事だと思って楽しそうだ。
まるで浮気してた方がいいみたいな雰囲気出しやがって。
「いや、さっき桂さんが電話で誰かと待ち合わせしてるみたいな事を話ながら廊下を歩いていたんだが。それがとても嬉しそうで、はたから見たら恋する乙女だったんだ。」
「「「………。」」」
気まずい空気が流れる。
そして、3人の中ではもう浮気と決まったらしい。
「しょうがないわよ、銀さん。桂さんすごく綺麗だし、いろいろな人からアプローチされて、銀さんだけじゃ満足出来なかったのよ。」
「そもそも銀さんがもっと桂さんを大事にしてれば、こんな事にはならなかったんですよ!」
「お妙ちゃん達の言う通りだ。男らしく潔く諦めるんだな。」
……誰か1人くらい俺の味方しろよ。
いや、
てゆうか、
「それまだ浮気と決まってなくない?」
「……晋助。」
いきなり出た知らない名前に、今度は九兵衛に視線が集まる。
「桂さんの待ち合わせ相手、晋助っていうらしい。ちなみに、これから駅前で待ち合わせ。」
なんでそんな詳しいことまで聞いてるんだよ。
「お妙ちゃんに教えたら、喜ばれるかと思って…。」
声に出してもないのに答えられた。顔に出てたらしい。
「九ちゃん流石よ。でかしたわ。」
九兵衛はお妙に褒められて嬉しそうだ。
頬まで染めて、そんな様子を見ていると立派な女子だ。
「たく、くだらねぇ事でいつまでも騒いでるんじゃねぇ。あ、そうそう。新八、忘れてたけど俺今日バイトだったわ。だから遊べないわ。つーことで!」
俺は挨拶もそこそこにドアへ向かってスタスタ歩く。
後ろで新八が何か言ってるけど聞こえないフリをする。
ガラガラ…ピシャリ。
俺はドアを閉めてゆっくり深呼吸する。
すー…はー…
………よし!!
俺は思いっきりダッシュした。
それはもう親が突然倒れて急いで病院に駆け付ける親思いな息子並みに。
すれ違う同じ学校の奴らに何事かと見られるがそんなのシカト。
こっちは死活問題なんだよこのヤロー。
駅まで距離があるから、ヅラが普通に歩いていったならまだ間に合うはずだ。
俺はこれっぽっちも心配してないが、あいつらが言うから。
ヅラが無実なのに汚名きせられそうだから、しょうがなくよ。
しょうがなく全力疾走してんだよこのヤローーー!!!
ぜぇぜぇぜぇ………
「さ、流石に疲れた…」
店と店の間の路地裏で、駅前がよく見える位置に隠れる。
「ヅラは…」
「あ、銀さん!時計台の下にいるのそうじゃないですか?!」
「あらー確かに桂さんいつもと違うわ。」
「妙にそわそわしてるな。」
「言われて見れば、いつものヅラじゃない…」
俺はすごく落ち込んだ。
………ん?
「おい。何でてめーらいるの?返答次第じゃ銀さん怒っちゃうよ?」
俺は引きつった笑顔で聞く。
正直今の俺に余裕はない。
「そんなの銀さんの落ち込んだ様子見にきたに決まってるじゃないのー。普段やる気なさげにしてる銀さんのそーんな顔見れるなんて、楽しじゃなーい。」
「僕はお妙ちゃんが楽しければそれで。」
「僕はなんかノリで…」
こいつら全員追い返したいが、今は本当にそんな余裕なんてない。
「邪魔はするなよ…」
俺は百万歩譲って、こいつらを放っておくことにした。
「あ、銀さん!桂さんナンパされてますよ!行かなくていいんですか?!」
「ばーか、今行ったら意味ねえだろうが。それにナンパなんてヅラは慣れてるから平気。」
「やっぱり桂さんってモテるんですね。」
当たり前だろ。モテないわけないだろ、あの面で。中身はめちゃくちゃだがな。
ヅラはいつもは軽くあしらうけど、中には諦めの悪い奴もいる。どうやら、今ナンパしてる奴はそうらしい。
ヅラは嫌がっているが、相手は相当気に入ったのか一歩も引き下がらない。
もしヅラに触れようもんなら、すぐに飛び出してそのキモい顔面ぶん殴ってやるからな。
などと考えてる時、ヅラとナンパ野郎のそばに1人の男が近づいた。
「おい、てめー誰の女に手を出してんだよ。」
ナンパ野郎は固まった。
近づいて来た男は、学ランを着くずして着ていて、片目は包帯、もう片方の目で相手を射ぬくように見る。
完全に不良だ。
しかも生半可な奴ではないと、ナンパ野郎は悟ったらしく、ヘコヘコしながら足早に逃げていった。
「銀さん……今、俺の女って……」
「いやいや、ナンパ野郎がナンパ野郎を追い返しただけかもよ。ナンパ野郎がやりそうなこった、アハハハハ。」
俺は笑顔で壁の角を掴み、無意識で力が入ったらしい。
壁がバキバキと壊れてしまった。
「晋助!」
ピシッ!!
ヅラはナンパ野郎にこれ以上ないくらい、嬉しそうな笑顔になる。
反対に俺は石のように固まる。
俺にだってあんな笑顔見せたことないのに。
「ヅラと待ち合わせすると、メンドクせーよ。害虫ホイホイかてめーは。」
「ヅラじゃない、桂だ!そして害虫ホイホイでもない!」
楽しそうに会話する2人。
「……いや、まだ、わからないから…」
俺は意気消沈してした。
3人は可哀相に思ったのか、さっきみたいにはちゃかさない。
逆に女はもっといるとか言ってくる。
その後2人を付けて歩いたが、完全に恋人同士のようだ。
軽くウィンドウショッピングをして歩たり、気に入ったの店があったら入ったりして。
デートじゃん…
しばらくして、2人は近くの静かな公園に入り、ベンチに腰掛けた。
「てめーは相変わらず、趣味わりぃな。」
「む、エリザベスはすごく可愛いぞ。この人形だって完成度高くて素敵だ!」
エリザベス人形を握って、嬉しそうに話す桂。
しばし流れる沈黙。
それを破ったのは桂。
「……なぁ、晋助。その、久しぶりに…うちに泊りにこないか?」
桂は顔を真っ赤にした。
俺はいきなり立ち上がり、ヅラ達の方へ歩みを進める。
「ぎ、銀さん?!」
ずっと我慢して見てたが、もう我慢出来ない。
「おい、ヅラ。」
「っ銀時?!何故ここに?!」
桂は俺がいきなり表れた事にすごく驚いている。
なんだよ、俺がいたら悪いのかよ。
「そいつ、誰?」
俺は桂の横にいる片目の奴を睨む。そうしたら、そいつも睨み返してきた。
上等じゃねぇか。
俺は桂の手をとって立ち上がらせ、抱き締める。
「小太郎!俺はてめーが好きなんだよ!こんだけ夢中にさせといて他にも男がいるってどういう事なんだよ!」
「ぎ、銀時?」
「てめーが誰を選ぼうとなあ、俺はお前を諦めないからな!絶対俺が良かったって思わせるから!」
「……銀時。」
「だから!……だから、俺を捨てないでくれよ…。」
桂は黙った。
そして俺を抱き締め返して、赤い顔で俺を見て言った。
「銀時。すごく、嬉しいぞ。俺も銀時が大好きだ。」
笑顔で言ってくる桂が可愛くて、やっぱり絶対離したくなくなる。
「つーわけで、片目野郎!俺はこいつ諦めないから。」
「……ふーん。」
…んん?
俺の宣戦布告に相手は興味なさげに答える。
「銀時、何か勘違いしてないか?」
「っえ?」
「この子は俺の弟だ。」
「……………は?」
「3年前に俺の両親が離婚してな、その時俺達は別れた母と父にそれぞれ付いていったんだ。」
ヅラはまだ話してる最中だか、俺はすぐに状況を理解し、恥ずかしくなる。
「今は晋助の名字が違って高杉になってしまったが、こうやってたまに会っているんだ。」
そして桂は嬉しそうに、照れて言った。
「離れて暮らしていても、俺にとっては大事な弟だからな。」
高杉と言う奴は、一瞬嬉しそうにしたような気がした。
「ヅラ、やっぱり今日は帰るわ。」
「晋助?」
「なんかしらけちまったし、じゃあまたな。」
そのままダルそうに立ち上がり、俺の横を通ろうとした時。
「これからよろしく。」
と嬉しそうにニヤリと笑い、一言呟いた。「あ、そうそう。晋助は来年からうちの高校に通うんだ。銀時、仲良くしてくれな。」
「あ、あぁ…」
あいつ、絶対シスコンだ。直感で感じた。
「銀時。」
「ん?」
「さっき言ってくれた事、すごく、嬉しかったぞ。」
顔が真っ赤になるのがわかる。
あーそういえば、テンションに負かせて変な事言ったんだっけ。
「銀時の気持ち、嬉しかったぞ。」
頬を染めて抱き締めてくる桂を感じて、まぁたまには恥ずかしいを言うのもいいかと思った。
俺も桂を抱き締め返す。
きっとそばでニヤニヤしてるだろう奴らは、今はいない事にしよう。
こんな事になったのも奴らのせいだ。
明日絶対仕返ししてやる。
嬉しそうに俺に抱きつく桂を見て、やっぱり浮気なんてするわけないじゃねぇか。
最後の最後で信じられなかった自分の事は棚に上げる。
「まぁ、浮気されたって絶対取り返してやるけど。」
「ずいぶんと強気なんだな。」
クスクス笑う桂。
そんな姿も愛らしい。
綺麗な彼女を持つと、彼氏は大変なんですよ。
強気にもなりますって。
俺は腕の中にある大切な存在を確認しながら、絶対誰にも渡さないと心の中で誓った。
Fin
後書き
疲れた…
「弟は血の緒」で高杉弟設定に萌えて、
勢いで兄弟パロやってしまいました。
勢いでやりましたが、中々終わらず大変でした。
話が膨らんで、もっといろいろ書きたかったです。
銀時と高杉がもっともめるとか、でも話が収集つかなくなりそうで止めました。
兄弟パロと表記しなかったのは、ネタバレになってしまうのであえて表記しませんでした。
すみません。
桂と高杉の兄弟パロはすごく萌え設定なので、また書きたいと思います。
ちなみに「浮気の蒲焼き」は、江戸時代の流行語です。
読んでくださった方、
ありがとうございました。
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