短編
流れ星(銀→桂+坂/切)
「いってー…」
俺は防波堤に背を預けて空を見上げる。
夜空は満点の星空ってやつで、見てると何だか切なくなって泣きたくなった。
あぁ、今流れ星が流れてきて、願い事を言ったらお星さまは叶えてくれるのか。
なんて俺らしくもない珍しく乙女チックな発想。女子か、って自分に突っ込みたくなる。
「なんじゃー金時ー。病気かー?」
俺とは逆で防波堤に腕をついて海を見ながら気楽な声で聞いてくる、元戦友の坂本。
名前を間違ってる事にはあえてスルー。どうせ言ったって聞きやしないから。
久しぶりにこいつが江戸に来たもんだから、飲んだ。
坂本の奢りって事もあり、それはもう豪勢に飲んだ。
普段なかなか飲めない酒をここぞとばかり。
そんで2人して酔っぱらって。
気付けば酔い覚ましに2人で潮風に当たってたとこ。
「病気なんかねー。」
何だかんだ言って昔から気の合う坂本と酔っぱらってたせいもあって、俺は普段言わないような事を呟き始めた。
「どっかの天然電波やろーを思い浮かべるとさ、なーんか胸が苦しくなるんだよね。」
ははって苦笑混じりで言う。酔ってたって言い訳してるが、実はどっか冷静で。
俺は坂本がなんてゆうか待っていた。
「金時、おぬし…」
怖いんだと思う。所謂あいつと俺は幼なじみで。でも俺はあいつの事を友人としてではなく、好きだった。
でも男同士。許されないことだってわかってる。
もうこの気持ちを持ってるのも辛い。
でも、あいつに気持ちを打ち明けて振られるのはもっと怖い。
一度あいつと離れてわかった。
俺は、あいつが、小太郎がいないとダメなんだって。
だから友人として、幼なじみとして生きていくから。
だから、坂本、軽蔑してくれていいぜ。
そしたら俺は冗談だよ酔っぱらいがって、笑い話にして終えるから。
だから…
「金時。」
あぁ。
死刑宣告を待つ囚人の気分だ。
「あっはっはっはっー!」
「は?」
神妙な顔をして軽蔑の言葉を待っていた俺は、ビックリして思わず変な声を上げてしまった。
「金時ー!そいつは病気ぜよー!あっはっはっー!」
俺がぼーっと横目で坂本の横顔を見ている最中も、病気病気と嬉しそうに海に向かって叫んでる。
俺はこいつがなんでそんな嬉しそうなのかわからなかったけど、まだこの気持ちを持っていてもいいのかと想ったら少しだけ安心した。
今も胸を締め付ける痛みは当分消えはしないだろう。けれども隣でばか笑いしてる友人をちらりと見て、俺もつられて笑ってしまった。
もう一度空をのぞいてみる。相も変わらずキラキラしてる星を見て、どっかのバカみてーだなって思う。
思ったらまた痛くなった。
「いてーなー、こんちきしょー。」
暗い海に響く2人の男の笑い声は、夜空に輝く星だけが聞いていた。
Fin
後書き
一応補足を。
坂本は銀さんの気持ち知ってました(バレバレ笑)やっと本当の気持ちを打ち明けてくれて、嬉しかったんです。
きっと2人が付き合えるようにさりげなく協力してくれるでしょう!
なんかむしょーに切ないものを書きたくなりました。
天宮は切ない系が大好きです。
でも桂さんは可愛くて悲しい思いをさせたくありません。
なのでいつも銀さんがちょっぴり悲しい事に←
次はちゃんとラブラブなのにチャレンジしてみたいです!
読んでくださった方、
ありがとうございました。
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