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悪魔の求婚
8話 2部スタート
ナザリックの最高の知能の3人が集まっていた。
「私の思いはどうしたら、ヘマタイト様にお分り頂けるのか。」
「まぁ、ヘマタイト様のことです。簡単に予想できる話でしょう。」
パンドラズ・アクターが大きく頷いた。
「それはどういうことでしょうか。」
「少し、お話を聞いていれば、わかりますよ。
ヘマタイト様の精神年齢が発言と乖離していることを」
「その言い方は些か不敬ではないかね」
「不敬。ふむ。
私は思ったことを言うように守護者統括殿のデミウルゴスに言われているのでなんともォ。包み隠してもこれは意味がないことでしょう。
そもそも我々下僕が殺めたことは、気にされていないと思います。」
8階層にある個室で、デミウルゴスから珍しく、するどい視線が送られる。彼は基本、身内には優しい。その彼が、そんな視線を向けるのは大変珍しかった。
「理解しなくてはなりません。
一歩間違えば、ヘマタイト様から幻滅される可能性があるということをわかって頂きたいですねェ。」
「くっ」
この地をヘマタイトも去るということは考えたくもない最悪の状況である。
「で、その乖離しているというのは、詳しく教えてちょうだい。」
「ええ、アイィンズ様ァはいたって成熟された精神をお持ちでしょう。
同じように振舞われるヘマタイト様も同じように見えますが。
実に幼いのです。成長することを忘れてしまったような。
この言い方は、正しくはないですね。
成長する時間を奪われて、一瞬を気に成熟を良しとした、そんな感じでしょう。」
「はぁ?それがなにがいけないの?アインズ様をしっかり支えていらしゃっているわ。」
「まぁナザリックを運営するには問題ないでしょう。しかァアアし、そこにヘマタイト様の御心が追いついていません。」
「それは運営そのものがご負担になっていると?」
「運営は、ご負担にはなっていないでしょう。
そうではなくてですね。あーーーーーー。」
三つの空調な穴が二人を見つめる。
「これはお二人は苦労しそうですね。」
「そんなに複雑な問題なのか。」
(そうではなくゥ、アインズ様とヘマタイト様がということなのですが、理解できそうも、なさそうですね。しかし、これでヘマタイト様のご機嫌を損なうことはないですが、なにぶんお労しい。
それを見たアインズ様のご機嫌は損なうことになるだろう。
ヘマタイト様が一度亡くなれてから、過敏になっていらしゃいます。
しかし、ヘマタイト様の欲求と真逆のですからねェ)
帽子を深く被り直す。
「デミウルゴス様はセバス様とお話されては?」
「ん、それは」
いつもなら、それがヘマタイト様のためならと即答するだろうが、セバスとなると答えがどうも渋るようだ。
「ヘマタイト様とたっち・みー様はご兄妹ですから、近道になるやもしれません。
義理ではあるようですが、随分仲睦まじくされいたと」
「ふむ。私はそのような光景を見たことはありませんでしたが」
「まぁ、それは」
ウルベルトがインしているや、彼の想像した7階層にはたっち・みーが近寄らなかったためだろう。
「それ以上にヘマタイト様がウルベルト様の仲がよろしかったからでは?そのような印象なんでしょう。」
「なるほど」
そう言うと少し気をよくしたようだ。
「あとはシンデレラシンドロームという理解の方が早いのではないのでしょうか。」
「しんでれらしんどろーむ?」
「今後役に立つ情報かと」
「すぐ、資料を持ってこさせるわ。」
女性が「お姫様」に憧れるあまりに「いつか王子様が迎えに来てくれる」と思い込む、という特徴。
「ヘマタイト様がそういう願望が」
本を読んで、あまりデミウルゴスは納得いっていない様子だ。
「あら、でも。私も少しこの気持ちはわかるわ」
「そうなのですか。」
「ええ、アインズ様の腕に抱えられる、これほど幸せってないわ!
少し、強引の方が燃えるというものかしら」
「普通の者だといざ知らず、ヘマタイト様に選ぶ権利があるのは当たり前でしょう。
ヘマタイト様が欲しいというなら、その身を差し出すべきだと思いますね。」
「そうよ!!アインズ様に求められておいて断るなんて......生かしておかないわ」
(あーーーー違う所にいっていらしゃるーーー)
そんな二人をみて埴輪顔がさらに空虚を見る。
これは道のりが遠そうだ。
二人とも形は違えど、忠誠心が高い。半分話が通じていない。
「ヘマタイト様のお好みは私も存じあげませんから不安になりますね。」
そう言うデミウルゴスの言葉にアルベドの視線が落とされる。
「デミウルゴス、そのことなんだけど
多分、大丈夫だと思うわ」
「理由をお聞きしても?」
「いえ、私から言えた物ではないわね。」











御身であるヘマタイトは、いつも通りにウルベルトの部屋を訪れる。
僕達は、デミウルゴスに祝福の言葉を囁いた。
(仲が睦まじく、いらしゃたのだろう。)
デミウルゴスに会いに来ている訳ではなく、ウルベルトの部屋に用があるという理解だった。なにより、御方がウルベルトのことを思う時は一段と瞳が優しい。けして、配下に優しくないというわけではなく、別物だとわかるくらいには、毛色が違う。
(不敬な考えだ…)
あれを自分に向けられたらとどうしても思ってしまう。明確な悪意を向けられても、微笑むほどウルベルトに気を許している。
(アインズ様にも向けられていないあの瞳が)
ソファで、本を読むの姿も美しい。
アインズに任された仕事を片付けをしながら、その姿を盗み見る。
「あ」
「ヘマタイトさん、やはりこちらでしたか。」
アインズが、直接部屋に転移してくる。
デミウルゴスはすぐに席を立たち、礼をした。
「ああ、楽にしていいぞ。」
アインズが手をひらひらと振り、構うなと言った。
ヘマタイトのとなりにアインズが座ると、ソファは大きく沈む。
「どうしたの。そんな顔をして。」
ヘマタイトがアインズの顔を覗き込む。
デミウルゴスから見たら、そう変わらないと思っていたが、二人には伝わるものがあるらしい。
「部屋にいなかったので」
「ああ、私が出かけたと思ったんですか。」
「殆ど、自室にいる印象しかありませんでしたから。」
「あー、最近はスパも行きますよ。
あとはここですね。」
「ウルベルトさんの部屋ですか。」
「はい。」
御方同士の会話は素晴らしい光景であるはずだ。
「二人はよく、ここにいましたからね。」
「モモンガさんもでしょう。
ペペロンチーノさんも集まって無課金同盟とか言ってましたね。」
「懐かしいなぁ」
アインズがしみじみとしている。
「そういえば、ヘマタイトさん。」
「なんでしょう?」
「だいぶ、その。
怪我の具合は」
「あー。痛みは起きてからはないですよ。
それを心配してたんですか?
課金アイテムでレベルダウンもありませんし、なんの変わりもありません。
モモンガさんの超位魔法、また弾いてみましょうか?」
「防がれるなんて、思いませんでしたけど。」
「そりゃ、ウルベルトのも万全の装備なら受け切りますから」
「え。」
「スキルも使用していない前提ですがね。
初手なら確実に、受けきれます。
2回目は流石に満身創痍でしたね。」
ふーんと頷くとヘマタイトを見て、デミウルゴスの顔が蒼白になっていく。
「それだけ、受け切れれば、タンクとして本当に優秀ですね。」
ゲーム感覚が残るアインズはそういう実験も行う物だと納得する。
「ヘマタイト様はウルベルト様に……」
殺された事があるのでは?という答えに至る。前もいたずらだと言っていたのだから、それはあり得る話だ。
「デミウルゴス、顔色が悪いぞ。どうした?」
「どうか、アインズ様。後生です。
実験なら、私がお付き合い致します。
ですから、どうか、ヘマタイト様を殺めることだけは、お許しください。
超位魔法だとしても、ヘマタイト様がお亡くなりになる確率が無いに等しくても、私には……」
前回の蘇生は意識が戻るのに幾分か時間がかかっていた。もう目覚めないのでは?と不安に思うほどに。
で、あれば次は本当に腐らない肉に成り果てるかもしれない。
「デミウルゴス、その心配は要らない。
私はヘマタイトさんで実験などと」
アインズはそれをすぐに否定する。
しかし、隣にいるヘマタイトの表情は厳しいものだった。
「デミウルゴス、いつか、私は言ったよね。
ナザリックの危機であれば、私が盾になるのだと
それを何度言わせるの。
実験もそれはそれで、割り切るべきだと思う。」
「ヘマタイト様は次の蘇生で生き返れる保証はないのです!」
珍しく声を張り上げる。
さすがアインズも驚いたようだ。
「ヘマタイトさん、言い過ぎでは。
私は、けしてそんなことはしないさ。
それに実験にかまけている時間もないからな。」
落ち着かせるように、アインズが言う。
「モモンガさんまで。」
「ヘマタイトさん、私だって要らない怪我なんかして欲しくない。それは、分かって下さい。」
完全にヘマタイトの機嫌を損ねた様で、ついにアインズにさえ、そっぽを向く。
「あーーー」
流石にアインズも困ったようだ。
ヘマタイトがいうこともわからなくもないし、デミウルゴスが言うことも間違いではない。
これはどこまで行っても平行線だ。
「ヘマタイトさんあとで、二人で話しましょう。いいですね。」
「わかりました。」
こうもヘマタイトと衝突するのは珍しい。衝突するといっても、喧嘩には発展しない。意見の食い違いは多少あっても、大抵は話し合いで折り合いをつけてきた。
ただ、その話し合いすら僕達には負担が大きい。
緊迫した雰囲気が、デミウルゴスから伝わってくる。
「では、夕食あと位を見はからい、ヘマタイトさんの部屋に行きます。」
「はい。」
アインズは指輪を使用し転移する。
それをヘマタイトは視線のみで見送る。
尻尾が不機嫌そうに地面を撫でている。反対側を向かれているので、デミウルゴス からはヘマタイトの表情が読み取れない。主人の望むというならば、殴り殺されてもそれで御身の気が晴れるのならと思う。
「ヘマタイト様、お気がお晴れるなら、このデミウルゴスをお使いください。」
直ぐ側で跪く。
「分かった、隣に来い」
ヘマタイトが先程までアインズが座っていた隣を叩く。
命令に従い、隣に座る。
ヘマタイト方に向き直ると、重い物が胸に落ちてきた。
「!?」
何が起きているか、デミウルゴスは瞬時に理解が出来ずにいた。
殴られでもするのだと思った。
胸に落ちて来たのはヘマタイトの頭である。
「はぁーーーー。」
大きな溜息。
「あの、ヘマタイト様」
「なに?」
「何をなさって」
「うるさい。少し黙って」
口を噤む。
「子供みたいに駄々を言って悪かった。」
否定を言いたいが発言を禁止されている。
「あああもう!
そういうとこだぞ。」
ゴッと胸に軽く頭突きをされる。
「それは、…」
ガラス越しにヘマタイトを見る。
「申し訳ありません。ヘマタイト様の意向が理解でき」
キッと赤い瞳に睨まれる。殺気混じりの支配者らしい絶対的強者の視線だ。アインズはオーラ的なジリジリと焼くような気配だが、ヘマタイトのそれは忍び寄る恐怖ではない。その視線は先日、ヘマタイトと戦闘した時以外には受ける事はなかった刺し殺すような殺気。
(それほどまでにお怒りに…
ああ、ここで何とか、失態を払拭しなくては!!
ヘマタイト様もお隠れになってしまう!)
そう思うだけで、背中に寒い汗が伝う。
いつもは、そのような殺気に満ちた視線ではなく、優しい視線を向けて居られるのに、そこまで怒らせたと、心臓が早くなる。
「ふーん。」
不貞腐れたような、拗ねたような子供の表情に変わる。
「まぁ、そうであれと作ったのは、ウルベルトだし
お前を責めても仕方ないか。」
もう一度大きなため息。
(見限られてしまう。)
秒数単位で、色々な思考が巡る。
「失礼します!」
ヘマタイトの体を引き寄せて抱きしめる。
「どうか、私に失態を払拭する機会をッ」
赤い瞳が見開かれる。
「だから、お前に失態はないったら。
少し静かにして、聞こえないからさ」
デミウルゴスの胸に耳を宛てて、ヘマタイトは目を閉じている。
(私の心臓を聞いておられる?)
二度目の黙れという命令についに何も言えなくなってしまう。
腕を離せと叱責されていない事が唯一の救いだ。
何十秒たっただろう。緊張から、体感的には何分もこうしているように思える。
「ああ、温かい」
すりっと胸に頬を寄せる御身を見てどきりとする。
「デミウルゴス、私を幸せにしたいと言っていたでしょ。」
「はい。」
「私は、不幸ではなかったよ。
生きたいと思ったら延命できたし、多くの友人に囲まれて、人並みに恋だってしたさ。
私はそもそも幸せなんだ。」
デミウルゴスの胸に抱かれている御身にすでに殺気はない。
「はぁ。」
もう一度デミウルゴスの胸でため息をする。
(早いな。それに温かい。
生き物がこんなに他人の温もりが心地良いなんてね。
今まで五感なんて早く擦り切れてしまえと思ったけど。
温かいし、いい匂いがする。)
熱は痛みでしか無かったのに、ここに来てからなにもかも柔らかすぎる。
「更にヘマタイト様のご幸福を私に用意させていただける名誉を頂けませんでしょうか。」
「はははっお前は私が寝ているときに起こしてくれて、今みたいに胸を貸してくれたら、嬉しいよ。」
「幾分でもお使いください。
このデミウルゴス 、ヘマタイト様に求められるほどの幸福はありません。」
「ああ、この背丈で私は生まれてよかったよ。」
「っ!?」
その言葉の真意を図る事は造像された身であるデミウルゴス には難しく感じた。ナザリックで一番の参謀と作られたのに、御身の思いを汲み取れない。
「お前でも動揺するんだ。
ん?動揺する部分なんてあった?」
(この方は……)
無自覚らしい。
(ウルベルト様もさぞ、ご苦労されただろう。)
あまりの事に目を伏せる。
「さて、読書の続きをしようかな。
また頼むよ。今のうちに慣れておきたいし」










結局、数時間ほど読書をウルベルトの部屋で行い、飽きたのか眠りについてしまったヘマタイトを見る。
御身が毛布をないだけで風邪などひくとは思えないが、不憫に思えたので、別の部屋から、僕に持ってこさせた。
そっと、御身の身体に毛布をかける。
(御髪が)
顔にかかっている髪を直すために、不敬だと思いながらも触れる。






ザザッ………ピッ……チチチ







「ヘマタイト?」
その声は何度も思い返した懐かしい、心焦がれた声だった。
思い返し過ぎてそれが、現実か理解できずに居た。
意識が混濁しているヘマタイトの前に男の姿があった。
姿は異なっても、デミウルゴス はそれが自分の創造主だと理解する。
『ウルベルト様』
これはナザリック外の出来事であり、ヘマタイトの深層の記憶だと分かる。
記憶であっても、ウルベルトとの再会は、デミウルゴス にとっては身が震えるほどの感動だった。
「そこにいるのか。そこに居るんだな、ヘマタイト。」
ウルベルトはガンッとガラスを叩く。
「嘘だろう。」
この時、ヘマタイトはその言葉を聞いて、ウルベルトと再会していたが、混濁した意識では再会したことを覚えていないようだ。
ヘマタイトからはなんの返事もない。
「ああ、俺がやったのか。」
ガラス越しで表情が読み取れない。
『ウルベルト様!どうか、ナザリックにお戻り下さい。
ヘマタイト様はナザリックでお元気に……』
夢だとしても、そう伝えなくてはならない。表情は読めなくても、彼が何かを嘆いていると思ったからだ。
「俺の、ヘマタイト
ハーベルさんのが片付いたら、必ずお前を


迎えに来る。

次は俺がお前に会いに」
炎に記憶が包まれる。
何かまだ、創造主が言っている。
デミウルゴス はそれを聞き取ろうと、全身全霊で意識する。
徐々に部屋の描写も曖昧になっていった。






「ん。毛布ありがとう」
何事もなったようにヘマタイトは身を起こした。
「晩御飯をいただいてくるよ。
本は続きを読むからそのままにしてね。
……いいね?デミウルゴス」
「……はい」
「大丈夫?モモンガさんの仕事が多すぎて、疲労しているんじゃ…」
「けして、そのような事は…
ヘマタイト様が起きられたのを驚きまして」
「あー、そっか。
ごめんよ。
じゃ、いってくるよ。」
転移する、ヘマタイトを見送る。
そのまま、膝から崩れ落ちる。
「ウルベルト様……私は…何という………」
いつかのヘマタイトの造物主に似るという言葉を思い出す。光栄な事だと思っていた。

ーーあい……て………ヘマ…………。

「お許しください。ウルベルト様」
その言葉に誰も返答するはずもなかった。













食事中、アインズが部屋に入ってきた。
食事を中断しようと思ったが、彼は続けてくれと頼んできた。
「ずいぶんと美味しそうですね。」
「まぁ4年間ほど、まともに食べれる状況ではありませんでしたので、新鮮ですが
何を泣いてしてるんですか。」
「え。」
アインズは、その言葉に驚く。ヘマタイトはアインズの骸骨の表情がまるで、わかるように振舞っている。
「ヘマタイトさ「声色や角度で一目瞭然です。いくら一緒いると思ってるんですか。」
ピシャリとヘマタイトは言い切った。
「何か言いたいことがあるなら吐いてしまった方が楽ですよ。」
ふんっと大振りの肉を口にする。
「席を外しなさい。
ギルド長が、私との対話をお望みだから
何が会っても、呼ぶまで何人たりとも入れるな」
「かしこまりました。ヘマタイト様」
そう言い放つヘマタイトの姿はまさに美しかった。
ユリや、他のメイドが部屋を出てゆく。二人はその視線の端で見送る。
「ヘマタイトさん」
種族値を2段階極めた海神の種族姿だ。その美しい化物は、人のみであればその美しさに目を奪われるだろう。ただし、その神は人間の神ではない。そのカルマ値はマイナスを叩き出している。
「貴方は、貴方のままなのですか。」
「ん?」
赤い瞳が、オーバーロードを見据える。
「さて。それは、どうなんでしょうね。
私にもわかりません。」
横に首を振る。その問の意味が理解できなかったからだ。
「俺は、自分が怖くなりました。」
ぽつりとアインズが言う。
「超魔法実験を貴方で行って貴方が怪我をするのは明白です。ここはゲームではない、死んでしまったら貴方を失うかもしれないのに
俺はそれを作業の様に」
顔を覆う骸骨にヘマタイトは食事を中断し、側に寄る。
「俺はまだ、人間なんでしょうか。
人間を殺しても、虫程度にしか思わないんです。
どれだけ大きなモンスターと戦っても、恐怖心がわかないんです。
感情が、抑制されてしまうんです。」
「モモンガさん。」
骨の手を力強く、握る。
「なんですか。気休めはやめてください。
元に俺は貴方を殺してしまっているんです。
本当申し訳ないことを....
しかも同じ過ちを行うような
もう俺は貴方の友人も名乗れない!」
ヘマタイトはふぅーと息を吐く。
「歯食いしばれよ?」
「え”」
ゴッと重い音がした。椅子から崩れ落ちる。
骸骨の顔がヒビが入っている。精神的に冷静な頭は、それでも手加減してくれたと理解ができた。
「はぁ。
私は向こうでは芋虫で、人間ではありませんでしたが、嫌いになりました?
私に一発殴られたからって嫌いになりました?」
真っ赤な瞳が見下ろす。
「そんなはず!」
「建前上はそう言えるでしょう?」
「けして、そんな事は!」
「私だって、そうですよ。
私だって、どんな姿だって、どんな種族だって、私はモモンガさんが好きなんです。
友人ってそういうもんだって、思ったからモモンガさんを病室に招いたんです。
今更ですよ。」
「ああ」
地雷を自分で踏み抜いたんだとようやくアインズは理解した。
「貴方が間違えるなら、殴ってでも止めましょう。それで、私が殺されても、そうであるべきだと、いつだって何度だって、言ってあげます。
さて、今私は私でしょうか、モモンガさん」
「かっこよくて、優しいヘマタイトです。」
骸骨でなかったら、大泣きしているだろう。
「貴方は誰より優しい、私の親友です。」
ああ、笑う神がこんなにも自分には優しく美しい。
「不安であれば、何度だって言いましょう。
怖いなら、その手を取って一緒に歩こうじゃないですか。
こんな死にぞこないを4年も友人と言ってくれたモモンガさんへの恩義は中々返せそうもない。ペペロンチーノさんがいう、高感度MAXってやつです。」
「俺だって、長く一緒にいてくれたヘマタイトさんの事好きですよ。」
「ありがとうございます。
まぁ、モモンガさんの考える事はわかりますよ。私も結構残虐性が表に出そうな時があるし、変に頭が冷静です。
不安なら話し合いましょう。もし意見が違うなら殴り合いでもしましょう。」
「熱いですね。でも、殴り合いって……明らかにヘマタイトさんに有利では。」
「気にしたら負けです。
まぁ本気で喧嘩をしようもんなら、NPC達が全力で止めてきそうですけど」
それはこの世の終りが来た様な顔をして止めに入るに違いない。
「俺、ヘマタイトさんと喧嘩してみたかったな」
「そんな、ステゴロが趣味だったとは
まじで?」
骸骨の後ろに花が舞う幻覚をヘマタイトは見た。
大きな骸骨がもじもじしている。
「あ」
なにかに気づいたように机を見る。
「なんです?」
「ヘマタイトさん、それ」
「ああ、白身魚のキッシュですけど」
「共食いにならないんですか?」
「................」
冷めた目が、アインズを見る。
「失言でした。」
それ以上言うと「ロスぞ(PKするぞ)」と目が訴えいた。

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