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悪魔の求婚
5話
ナザリックは大いに荒れた。
モモンガ、ヘマタイトの2人がこのナザリックから外出するためだ。
ヘマタイトは留守を任せる守護者達やNPCに声かけをした。
「モモンガさんも気をつけてね。」
「ああ、ヘマタイトさんも」
途中まで5人で行動していたものの、町前で別れた。
ヘマタイトの後ろについてくるのが、デミウルゴスとユリだ。
街に入る際兵士に洗脳魔法をかけて、検問を突破する。
後は、デミウルゴスの能力で身分証を発行するだけだ。
「デミ 、任せていい?
少し、そこの椅子で休憩してくる。
ついでに商工会の場所も聞いておいて」
「はい。お任せください。」
デミウルゴス を見送ると、ホールの一番端っこの椅子に座る。
「ユリも隣に座りなよ。」
「はい、お嬢様」
ユリもデミウルゴス も使用人という設定にしている。
加えて、二人はお嬢様の護衛であるという話を受付に仄めかした。
お陰で、変に声をかけてくる者がいない。
「おつかれではありませんか?」
「大丈夫。ユリは?」
「問題ありません。」
しばらく待つと、受付の側に居た男性が案内にやってきた。
デミウルゴス は奥の部屋に入ったのにも関わらず、案内されたのは裏口に向かう方の廊下だ。
(やはりか。)
すぐさま、ユリに手を出すなと指示をする。
廊下に入ると奥に2人と案内役をかって出た男が掴みかかってきた。
案内役の男の足を蹴り折り、近くにあった花瓶を奥二人に投げつけやる。
なにが起こったかわからない男3人は、廊下で悶え苦しんだ。
「この者達の処遇は」
「それを裁くのは私達ではないよ。」
しばらくすると、職員が男達を引きずっていく。
「お嬢様!」
デミウルゴス が駆け寄ってくる。
「ああ、お前の心配が的中したよ。
“”私では手加減””が難しいからお前達をつけたのに。」
聞こえるようにつぶやく。
「お嬢様の手を煩わせてしまい、申し訳ありません。」
「お前が謝ることはないよ。
ただ、商談が上手くいく事を私は願っている。
さて、お前が来たんだ。商談場所は決まったんだろうね?」
「はい、お嬢様。
二階になります。」
デミウルゴス に案内されるまま、ヘマタイトは二階にへと上がる。
二階の一番奥の部屋に通される。
そこには、今までの人間とは少し雰囲気が違う男二人がいた。
「お騒がせして、申し訳ありません。」
「あぁ、私は気にしていない。
まこんな金になる宝石をちらつかせていれば、そうもなるかもしれない。この商談がうまくいけば、全て水に流すことになるだろう。」
「寛大な判断でしょうか。
ありがとうございます。」
「商談だが、うちの使用人に実績を積ませたいんでね。
私は基本黙らせてもらう。」
そう2人に目配せをする。
「かしこまりました。
お連れの方から聞いていましたが、本当にお強いんですね。」
「まぁ」
それだけ返事をした。
「さて、商談を始めましょう」












随分とあれからかかった。
最大限高く売れた。
これで当分の活動費にはなるだろう。
手続きをデミウルゴスとユリが行ってくれた。
先に宿をとらせてもらい、部屋で休ませてもらった。
(久々に出る人前がこれほどキツイとは)
リハビリが必要だ。
ナザリックのベットと比べて硬いが今はそれでも、寝そうなる。
「ヘマタイト様戻りました。」
「お疲れなら、寝てください。」
「デミウルゴスは?」
「はい。ヘマタイト様に言われた通り市場調査に向かわれました。」
「そうか」
「ヘマタイト様、本当にお疲れなら、お眠りになってください。」
ユリがヘマタイトに布をかけた。
「ユリ」
「お眠りになってください」
まぶたが落ちそうになる。
ユリはヘマタイトをゆっくり寝かせる。
「ヘマタイト様、おやすみなさいませ」






眠りたくはなかった


楽しい思い出ばかりではないから










あの日、楽しい思い出になるはずだった。
白いワンピースを着て、貴方が送ってくれた真っ赤なバラを胸につけた。
荷物らしい荷物はなかった。
貴方に会うのにこの身一つでよかった。
「早く、早く貴方に会いたい」
思いだけを抱いた。
ひとつだけだったのに、私は落としてしまった。
真っ赤な火が約束の花を焼いてしまった。


貴方に会いに行く足を無くした。


貴方の手を取る利き手を無くした。


貴方が好きだと言ってくれた声を無くした。


貴方を見つけるための目を無くした。


「あ、」
視界には貴方の好きな炎がある。
煙が肺を焼いていく。
炎が私の行く手を塞いでしまった。


貴方に会いたい。


会うとも謝るとこも叶わないなら




ヘマタイト様!




焼ける匂いの中かすかに香水の匂いがした。
炭になった私の手を力強く、悲しそうに掴んだ。










「デミウルゴス、お前、何をした」
「ご無礼をお赦しください。
あまりにも酷くうなされておいででしたので」
異様の体にもかかわらず、ひどい寝汗をかいたようだ。
「ユリは?」
「はい、ユリ.アルファは部屋の外に待機しています。
どのような罰でもお受け致します。」
「私の夢をみたのか」
「はい」
インプの能力なのか、夢に介入できるようだ。
「ありがとう
私を起こしてくれて
あまり、思い出したくないものだったから、起こしてくれて助かった。」
「あれは、ヘマタイト様の過去の出来事なのですか?」
「そうだね。」
「ヘマタイト様、誰が御身をそのような目に
どうか、このデミウルゴスにその者を殺すご許可を頂きたく」
リアルの世界にデミウルゴス がくることは出来ないだろう。
それでも、ヘマタイトはその手を握り返してしまった。
何秒間沈黙が続き、ようやく喉から声がでた。
「必要ない。」
その言葉を吐くだけで精一杯だった。
「すでにあれは終わったことだから」
デミウルゴスに自然を落とす。
「いいえ、ヘマタイト様
地獄の業火で何万回焼いたとしても、その罪が許されることはありません。ナザリックの僕達が皆、そう思うことでしょう。」
「言ってくれるだけで、私は充分だよ。」
それからデミウルゴス が何も言わなくなった。
握られている手が震えていたからだろう。
「似て居るところがないと思って居たけど、
ウルベルトとお前は似ているね。
心配性なところが良く似てる。」
「恩方であるヘマタイト様を心配など、私の思い上がりをお許しください。」
楽しかった思い出も、バカをした思い出も、今は色あせてしまった遠くの昔。
全てが愛しい思い出になっていた。
「そうだな。
お前への罰は、私を起こしに来る事にしよう。
その方が、私も安心して眠れる。」
「かしこまりました。このデミウルゴス 、命に代えましても」
「命に代えてもらっては困るなぁ
さぁ、ユリを呼んできてくれ。
あの子も心配しているだろうから、大丈夫だというのを伝えてあげないと。」


















ユリがもうこの世の終わりのような顔をしていた。
夢見が悪かったと伝え、心配しないようにと撫でてやる。
モモンガにも伝えてしまったらしく、彼のワントーン高い心配性な声が伝言でかかってきた。
2人には廊下で待つように指示をした。
「向こうのトラウマですよ。」
そう言えば、モモンガが納得せざる終えなかった。
『不眠と疲労無効の指輪をつけれないのですか。』
「他耐性が、削られますから
洗脳や混乱、毒の方が怖いと思うんですよ。」
『それは、そうでしょうけど』
「幸いデミウルゴスの種族スキルで、夢に介入できるみたいで、あの夢を見たらまた起こしてもらいます。
外に出る間は彼が手放せなくなりそうですね。」
『それ、デミウルゴスが喜びそうですね。』
「そうかなぁ」
『デミウルゴスはヘマタイトさんなや相当懐いてますからね。
いやーウルベルトさんを見てるようでしたよ。
ウルベルトさんもヘマタイトさんが大好きでしたから』
無茶振りされていた記憶しかない。
「それを言うなら、アルベドの方が貴方のこと大好きでしょうに。」
『そ、そう……で……すね。』
「な、何かあったんですか。
想像はつきますけど」
『アルベドが押し倒してきた』
想像の斜め上に至った。
「はははは」
『笑い事じゃないです!』
「まぁまぁ、モモンガさんも頑張って。
私も頑張るから
おやすみ、モモンガさん」
『おやすみなさい、ヘマタイトさん』
ログアウトする時の挨拶のように挨拶を交わす。
盗聴妨害アイテムを解除する。
「二人とも、いいよ。
廊下で待たせて悪いね。」
そう告げると、二人が入ってくる。
「今日の進捗を報告して、予定通りなら、明日ナザリックに帰還する。
のちに情報をすり合わせたあと、
セバス、ソリュシャン、シャルティアと共に私は王都に向かう予定だ。」
「我々は如何しましょうか。」
「デミウルゴス は今回で培った情報を使用し、物流を把握。あわせて、この世界のアイテム素材を調べてもらう。スクロール素材が優先かな。
ユリは、悪いけど今回の情報のまとめを頼む。」
「それでは、ヘマタイト様の護衛が」
デミウルゴスが心配そうに視線を向けた。
「シャルティアがいるから、大丈夫だろう。
そんなに私が心配なら、今言われている仕事が終えたら、モモンガさんに許可をもらっておいで」
「寛大なご配慮ありがとうございます。」
デミウルゴス がそう頭を下げた。
尻尾も左右に揺れている。
「来る気満々だね。」
「それはそうでしょうとも、
お側でお仕え出来るというだけで、我々は至福の喜びでございます。」
「そんな、働いていると倒れてしまうから、程々に休んでね。」


















ナザリックに戻れば、花でも咲いたかというほど、留守番組の守護者たちが出迎えてくれた。
「代わりはない?」
「ヘマタイト様から頂いた作物が大きくなっています。
予定通り一ヶ月ほどで収穫できそうです。」
「僕のほうも、問題なく育っています。」
「そう良かった。」
「ワタシノホウモ問題有リマセン。」
「うん。コキュートスもお疲れ様」
「ヘマタイト様お疲れのご様子、早く中でお休みになってくださいし」
「そうだね、お風呂に入ろうかな」
「では、すぐ用意をさせましょう。セバス頼みましたよ。」
「かしこまりました。」
アルベドの指示でセバスの姿が消える。
2日しか離れていなかったのに、下僕たちは何年ぶりにでも会ったかのような反応だ。
皆に一人一人に声をかけつつ、リング.オブ.アインズ.ウール.ゴーンで自室に転移をヘマタイトは行った。
「ヘマタイト様が麗しすぎるーーー!」
シャルティアが叫ぶ。
「至高の御方であるヘマタイト様からしたら、取るに足らない私達を労ってくださる。
最後に残られた慈悲深きヘマタイト様
あーやってアインズ様を支えられていらっしゃったのね。」
アルベドの言葉に全員が頷く。
「アルベドさん!ヘマタイト様の体調は優れなければ、すぐにアインズ様にお伝えするように
い、言われていたのはなぜなのでしょう。僕は元気そうに見えるんですけど」
「だよね!そんなには見えないもん」
「イヤ、我々ニ気ヅカレナイ様ニ振ル舞ッテイラッシャルノダト思ウ。」
「私も、同意見だ。」
「あら、デミウルゴスもなの。
マーレ、ヘマタイト様にバットステータスが付与されていないか、確認をしておいて
必要であれば、治療させて頂きましょう。」
「いや、マーレではなく、私はアルベドにお願いしたい。」
「それは何故かしら、デミウルゴス。私は回復魔法なんて使えないわ」
「ヘマタイト様はどうやら、夢見が悪いらしい。
私から確認を取らせてもらうが、それはアルベドの方の専門だろう。」
「ヘマタイト様が悪夢を見られていると言うの」
その場の空気が一瞬で冷たくなる。
「なんとお労しい
その夢の内容というのはお聞きしていますか?」
「私は専門ではないからね、はっきりと見てはいない」
「見たと言うことは、夢に干渉したのね。」
「詳しくは、私と二人で話をしよう。
その内容を皆に話すのはお望みではないはずだ。」
「わかったわ
では、私の部屋で行いましょう。」














その夢はあまりにも切なく、痛く苦しいものだった。
足が無くなっても、手がなくなっても、自分は何処かに向かわなくてはならないという意思があった。
命が終わるというその危機より、約束を守ることが出来ないという悲しさに胸が裂けてしまう。
「そんな夢でした。」
「ヘマタイト様がそれでお亡くなりならなかったのが幸いだわ。
それほどの傷をあのヘマタイト様に負わす相手がいるなんて」
「ええ、けれど事実です。
あのヘマタイト様に致死の怪我を負わせ、ヘマタイト様なされたお約束を守れなかった。
それがヘマタイト様が見る悪夢の原因だと思われます。」
「そうね。けれどヘマタイト様はその夢の解決を私の能力を借りてやるのは望まないと思うわ。」
「何故ですか、アルベド!」
「私から、貴方に言うことはありません。
それはけして言えないものだわ。
納得は出来ないようだから、私からヘマタイト様にお願いはしてみるけど」
「アルベド、それは本当にヘマタイト様の為ですか。」
「そうよ」
















アルベドに話があると言われてしまった。
しかも、お風呂で待ってるとか言われてしまい、逃げられない。
(モモンガさんがなんかいったのーーーー!?)
女の戦いほど怖いものはない。
手早く服は、ソリュシャンやルプスレギナに脱がされてしまった。
風呂場にはいると湯船の影に人影が映る。
「ヘマタイト様、どうぞこちらへ」
椅子に座らせられる。
「湯加減はどうですか?」
「もう少し暖かい方が好みかな」
アルベドは優しく洗ってくれる。
「ヘマタイト様」
「ん?」
「デミウルゴスにヘマタイト様の夢について相談をされました。」
「そうか」
なんだーそっちかーと肩を落とす。
モモンガとの関係は?と詰められたかと思った。
「それがどうした?」
「ヘマタイト様、その夢
私なら抑えることが出来るでしょう。」
「ああ、それはいいよ。」
そう何気もないようにヘマタイトは答える。
「不敬をお許しください。」
アルベドはデミウルゴスに聞いただけで夢の原因はわかってしまっただろう。
ヘマタイトはごまかすのは此処に来た彼女に失礼だと思った。
「怒ってないよ。ただね、これを見なくなってしまうと、いろいろと無くしそうなんだ。
この思いや痛みだけは、残しておかないとね。
アルベドもきっと分かるようになるよ。
お前もいい人に恋をしたからね。」
「...........ヘマタイト様」
「恋は病だよ。患うと死ぬかもしれないけど、人生は幸せだよ。」
「はい。」
リンスを流し終えて、アルベドと向き直る。
「アルベド、女の子同士の内緒の約束だ。
お前は何があっても、モモンガさんの味方で居てね。」
「当たり前です。私がアインズ様を裏切るなど!
いえ、そのような話ではないのですね。
はい、私はこの生命に代えましても、モモンガ様の味方でいます。」
「アルベドはいい子だね。
次は私が洗ってあげようか。」
「そんな!ヘマタイト様ッ」
「そうだね。目に入ると痛いから私だと失敗するかも
背中だけ洗って上げるよ。」
「...........拝命致します。」
丁寧に洗ってやる。
「あの、ヘマタイト様の恋のお相手は誰だったのですか。
まさか!アインズ様!?」
「いやーモモンガさんならきっと私は幸せだったんだろうけど
違うんだねー。
気になるんだ。」
「それは、こんなお優しいヘマタイト様の心を射止めた殿方がどのような人物かと」
「そっか、そうだな。
内緒だよ?」
耳元で小さく答えた。
アルベドは少し驚いて居たようだ。
「ヘマタイト様を置いて、いったんですか」
「私は怒っていないよ。」
「いいえ、いいえ!
なぜ、アインズ様もお怒りにならないのですか。
こんなに思っていらっしゃるのに!」
「アルベド、これが患ってしまった恋というものだ。
死ぬまで治らないんだよ。
お前が泣くことはない。
モモンガさんは絶対一緒にいてくれる。」
アルベドの大粒の涙を指ですくう。
自分の体も洗い終え、アルベドを引き連れ湯船にはいる。
いっぱいの湯が溢れる。
「ヘマタイト様、その恋は実るのですか。」
「ははははっ、それは自分でも言うのはあれだけど
きっと実る前に自分で腐らしてしまったからね。
だから、アルベドは大切にしなよ。」
赤い瞳がいつもより鮮やかに見えた。
























「はははははっ」
ヘマタイトの甲高い笑い声が響いた。
「いや、申し訳ない。くはははっ
それはないよ。なにがどうしてそうなった。」
アイテムを整理した結果貴重品になる素材を総合管理をしたくて宝物庫に来た。
ここには、モモンガが唯一作成したパンドラズアクターがいる。
彼はモモンガの姿で踊り回ったりなんやりしている。
「ヘマタイトさん、俺と踊りませんか?」
「少しだけだよ。」
骨の手を取る。
この姿を見られたらアルベドにどやされる。
ふわりと、ローブが揺れる。
「ヘマタイトさん、楽しいですか。
ずっと、俺とナザリックに居てくれますよね。」
モモンガがずっとヘマタイトに言ってきた言葉だ。
「その約束は出来ないよ。」
ステップが変わると次は黒い山羊の姿になった。
「俺と一緒に永遠にいてくれませんか。」
赤い瞳がその山羊を写す。
「永遠という約束なんて、出来ないよ。
パンドラズアクター、私の命が終えるまで、ナザリックの側に置こうと思ってる。」
埴輪のような顔に戻っていた。
「申し訳ありませンンッ!」
「どうしたの。」
「貴方までもが、モモンガサウゥマァ!を置いて行かれるのだと!
ご無礼をお許しください。」
「うんまぁ、そうじゃないかな。
お前の方が自然体で助かるよ。」
アイテムボックスからナザリックの宝物庫に置くアイテムを出していく。
「これウワッ!不足しているスクローーウウゥウ素材!」
「そうだよ。」
「ヘマタイト様麗しすぎるゥゥゥゥゥゥウウウウ!これが神級アイテムが作れるデータクリスタル!
さそがし、父上がお喜びになられるでしょう。」
「うん、良かった。」
「父上は来られないのでしょうか。」
「今はナザリックの外に出られている。」
「そうですか。」
かなり落ち込んだようだ。
パンドラズ・アクターは、宝物庫を出る事はできない。
「ちゃんと顔を出すように、私から怒っておくよ。」
「ンンンッ!可愛らしいお嬢様ァ!貴方 ノ寛大な!お心に!感謝を!」
「はいはい。興奮した時のモモンガさんみたいに壊れてきているよ。アイテム管理はお前に任せた。
あまりにも足りないようなら、私の部屋にこの分のストックがある。」
それを言うとまた彼は喜びに回った。
ユリが作ってくれた一覧を渡すと、敬礼までした。
「貴方に幸あれ」


















2日ほど経つと準備が出来た。
豪華な馬車に乗り込む。
「くれぐれも、ヘマタイト様をよろしくお願い致します。」
「はい、デミウルゴス 様。」
セバスとデミウルゴスが話している。
「ヘマタイト様もどうかご無理なさらずに。」
アルベドがそう伝えてくる。
「では、行ってくるでありんす」
馬車が走り出す。
自分で走るより遅く感じる。
「ヘマタイト様、お眠りになられますか?」
「起きたばかりだよ。
私を老人かなにかだと思っているの。
まぁ、なのにか時間つぶしが欲しいな」
「時間潰しでありんすか?
では、私と花嫁と」
「嫌な予感しかしないのでパス」
「そんなっ!」
「では、ヘマタイト様このようなものはどうでしょう?」
「ひっ?!何してるのかな!?」
まさか、この歳で豊潤な女の人の胸元に手を突っ込むことになるとは思っていなかった。
「あれ?何かある。」
ソリュシャンの中は水のようで、その中に硬いものがある。
「ああ、もの当てゲームか!
って…これまた不純な場所ね。」
両手をソリュシャンの胸に埋めてしまっている。
「羨ましい!」
(おっばいに埋もれるなんて、羨ましいよね。)
「ヘマタイト様にそう奥まで愛でて頂けるなんて!」
(そっちかい!!)
思わず突っ込んでしまった。
「私もヘマタイト様と遊びたいでありんす!」
「はいはい。
ババ抜きでもする?」
「ばばぬき?」
「カードゲームだよ。
ペペロンチーノさんも大好きだったゲームだ。」
「そんな、思考の恩方が遊んでいた玩具など」
「大丈夫、簡単なやつだから」
アイテムボックスからトランプカードを出す。
シャルティアの花嫁にも、やり方を教えてやると、どうやら出来るようだ。
「セバスもやるだろう?」
「私も参加してよろしいので?」
「もちろん。」
馬車に乗る全員にカードを配る。
シャルティアは配られたカードを輝いた目で見ている。
「ペペロンチーノ様がお遊びになられた玩具なんし!」
「ヘロヘロ様も遊ばれた」
珍しくソリュシャンも嬉しそうに微笑んでいる。
じゃんけんも知らなかったので、教えてやり、順番を決めた。
カードを引くと、この人数のせいか、なかなか手札が合わない。
「難しいでありんす。」
「頑張ってシャルティア。」
「はい、ヘマタイト様!」
「ソリュシャンは大丈夫そうだね。」
「ふふ、一番に上がれるように頑張ります。」
「あがりました。」
「セバスはや!?」
町に着くまで、みんなでババ抜きだけではなく、大富豪や真剣衰弱をやったり、カードだけで楽しく過ごした。
シャルティアや花嫁達も、あまり遠慮せずに話せるようになった。
「つきましたね。
では、行ってまいります。」
「二人とも頑張って」
ソリュシャンとセバスを見送る。
「次は何をしんしょうか??
四人になりやしたし、次はまたババ抜きでありんすか?」
「いや、その前に伝言をしたい人がいるから待ってね。」
シャルティアを宥めてから、ナザリックの中でずっと頑張ってくれている守護者にかけた。
「やぁ、コキュートス。今、大丈夫?」
[ハイ。]
「いつもお疲れ様、忙しくて労いも伝言になってしまった、私を許して欲しい。」
[ソンナ、滅相モ御座イマセン。
我々ハ恩方ニ創造サレタ身、尽クス事ハ当タリ前デ御座イマス。]
「コキュートス、よく聞きなさい。
この世には当たり前も永遠なんかないんだ。
言わなかった事を後悔する時がいつかきっとやってくる。
伝えたい事は、すぐ伝えるに限るんだよ。
だから、ありがとう。」
[勿体ナイ御言葉デス。]
「では、おやすみ。コキュートス。」
伝言を切る。
「あぁ、なんと、慈悲深い!
僕風情にその様に御心を砕いてくださるなんて」
「私は、お前を僕とは見てないよ。
シャルティアはペペロンチーノさんか作った可愛い娘さんに見えてるからね。
仕えてくれているという理解はしてるけど、心情は違うんだよ。」
「嬉しい御言葉でありんすえ。」
花嫁達も、シャルティアを大事そうに撫でる。
「シャルティア、お前たしかに愛されて生まれてきたんだよ。」
シャルティアにそう告げると大粒の涙が溢れでた。
よしよしとヘマタイトは彼女の体を抱く。
守護者達や僕達は確かに愛に飢えていた。
それぞれ形が違うものの、親の愛を知らずに大人になってしまった様に見える。
「ほら、花嫁達もおいで。
次はいつ構ってやれるかわからないからね。」
そういうと花嫁達も隣に座る。
ヘマタイトの肩に頭を預ける。
「セバスかソリュシャンが戻るまでだ。
戻るまで、私が抱いていてあげよう。
シャルティア、今も貴方は愛されている。」
「はい。ヘマタイト様。
私は愛されていたんでありすね。」
























「コキュートス、嬉しそうじゃないか。どうしたんだい?」
「ヘマタイト様カラ労イノ御言葉ヲ頂イタ。」
「それはおめでとう。」
コキュートスはこの見た目では、町に出れない。
ナザリックに守護者不在にするわけにもいかず、ずっと留守を守ってきた。
嬉しそうに冷気の息を吐いた。
[デミウルゴス !!すぐ戻って]
「何事ですか!」
[シャルティアが反逆したわ!]
「まさか、そんなはずは!ヘマタイト様はどうしました!?」
[それが、ヘマタイトのお名前も消えてしまっているの……
私はすぐにアインズ様にご連絡を!
貴方はすぐに討伐隊の準備をしてちょうだい!]
伝言が切れる。
「は、ぁ………」
絶望に視界が真っ暗になりそうだ。
(いや、お亡くなりになっていたなら、蘇生が可能のはずだ。)
自分にそう言い聞かせる。

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