05
「え?啓吾くんとその友だちもなの?」
黒塗りのいかにもヤの付く仕事してます、みたいなベンツの中に小町と大地と翼、それから翼の姉である椿もいた。
今の驚愕の声音は小町だった。
内容は、どうやら秋人だけでなく秋人と同じく幼なじみである啓吾とその友だちも連れ去られたという事だった。
小町の言葉に続き、意気揚々と翼の姉である椿が口を開いた。
「やっぱり固定CPよね?不良たちも複数人いるらしいし……あ、時雨。子兎のワルツに直行よ!大地、道案内!」
時雨と呼ばれたのは運転席に座る男でその顔はいかにもそっちの仕事してます、なものだった。
どうやら組長の娘である椿の方が強いらしく、ほとんど命令口調で椿が言った。
「はい、お嬢」
「あ、えと、この先の曲がり角を左に曲がって……それから…」
それから数分後、子兎のワルツに黒塗りのベンツが止まった。
出てきた椿は躊躇いもせずに店のドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
開口一番に口を開いたのはスキンヘッドのこの店の店長、加賀誠。
椿はいつも周りにいかついやつらがいるせいか、同じく躊躇いもせずに誠に話しかけた。
「鬼塚天馬はどこ」
はたから見れば随分な態度で言う椿に苛立ちを感じたのか、近くにいた金髪でがたいのよい男が立ち上がって椿に詰め寄った。
「なんなわけ」
「お嬢ちゃんさあ、うちの大将になんか用あるわけ?抱いてほしいとかか?気持ち悪ぃな」
そう吐き捨てるように言い、椿の肩に触ろうとして手をやるが椿によってその手は叩かれた。
それからふっと鼻で笑って男を見下したような目で見た。
「あんたの顔がね」
「いやだ椿ちゃん、そんな本当のこと言ったら可哀想だよ」
椿が言ってから、それまで黙っていた小町が吹き出すように言う。
ちなみにワザとである。
もともと短気であり、女に馬鹿にされた事から一気にその男は怒り出し、椿の胸ぐらを掴み殴ろうとしたがそれは鬼塚天馬によって防がれた。
「鬼塚さん!」
「俺に何か用か」
天馬は秋人と一緒にいたとは思えない無機質など表情で椿たちに話しかけた。
椿は多少驚いたような表情をしたが、それはすぐに、にやりとしたまるでいたずらっ子のような笑みに変わっていた。
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