本当の気持ち 「天馬くんはね、春休み毎日見に来ていたわ」 あなたをね、とにっこりと俺を見ながら園長先生は付け足した。 どう反応していいか分からず、天馬先輩は見ると頬が微かに赤かった。 園長先生が話すには、俺が保育園で子どもたちの相手をし始めた春休み、この頃は学校がなかったし毎日来ていた頃だ。 ちょうどかずくんを迎えに来ていた先輩が偶然、子どもたちと遊ぶ俺を見て、それから何日か経って好きだって、恋だって気づいたらしい。 なんとも恥ずかしいお話である。俺と先輩は顔が真っ赤になっていた。 「そこで、私が色々教えてあげたの。同じ高校に入学する斎藤秋人くん、彼女はなしとかね」 くすくす、といたずらっ子のような幼い笑みを浮かべながら楽しそうに言った。 「それで一緒にいるってことは、上手くいったのね、良かったわ」 にっこり微笑む園長先生に苦笑い。半強制的に付き合わされたとは言えません。 いや、言いたくないのかもしれない。 先輩の気持ちを知れた。だけど、俺はどうなんだろうか。 「帰りましょうか」 もうほとんど真っ暗な道を、俺とかずくんと天馬先輩の三人で歩く。 天馬先輩は、あれから少ししか喋っていない。 まあかずくんがいるから場は和むけれど。 俺は必死に考えていた。 まだあって数日しかたっていない。 だけど…おれは… 「先輩、」 「ん?」 どうかしたのか?と目で言う先輩に少しだけ微笑んで言った。 「ずっと俺のこと、見ててくれてありがとうございます…俺も多分、先輩のこと、好きです」 言い切った。 顔が心なしか熱い。 そんな熱を冷ますかのように、ざわりと風が間を通り抜けた。 先輩は静かに俺の方へ向かって来た。 「秋人、」 ぎゅ、と力強く抱きしめられた。俺だってまあまあ身長あるほうだけど先輩の腕の中にすっぽりと収まった。 「ありがとう、な」 何かが体の隅々まで響き渡って、じんじんと体が温まる。 「あー!ずるいっかずもぎゅーしてー!!」 どんっと腰あたりに衝撃が、かずくんだった。 かずくんはきらきらした目でこっちを向いて笑っていた。 「帰りましょうか」 「…だな」 もう一度同じ言葉を呟いて、先輩の冷たい手と、かずくんの温かい手を取り、俺は歩き出した。 第一章エンド [前へ] [次へ] [戻る] |