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放課後デート
 

あっと言う間に放課後になり、俺は現在進行形で帰宅中だ…先輩のバイクの後ろに乗せられて…

奇声は発しなかったが、力いっぱい先輩の腰を抱きしめていた。



止まった先は一件の喫茶店みたいな所。

『子兎のワルツ』
と言う名前らしい。




「入るぞ」

ぐいっと先輩に手を引かれ、喫茶店に入った。
さすがにおしゃれなドアのガラスが割れそうだし先輩は蹴らなかった。



カランカランっ

軽快な音が鳴り、その喫茶店へ足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ」

低く、脳に直接響くような声だった。

びくりとして振り向くと、そこにはスキンヘッドで耳はピアスだらけで明らかに一般人ではないことが分かる。



「誠、いつもの」

「かしこまりました」


どうやら誠さんと言う人らしく、礼儀正しくしていて先輩の方が立場が上のようだ。

そして誠さんはこちらを向いた。
ぎろりとした細い目が俺のそれと交わった。


「どちら様ですか?」

俺を見据えながら誠さんが言った。
あんまり気持ちのよい目線ではない。試しているような、見定めているようなそんな目だった。




そんな冷たいような目に耐えられず俯くと、俺の頭が重みを増した。先輩だった。


「斎藤秋人、俺のたった一つのやつだ。……傷付けたら、てめえでも、誰でも許さない」


その言葉に、赤面。
つまりは…そう言うことだ。


誠さんを見てみると面食らったような顔をしていた。

それからなにか思い出したようにまた無表情に近い顔に戻ったが、目が、優しくなった気がする。



「失礼しました、秋人さん、で宜しいですか?」

「え?あー…いや、普通に秋人で良いです。それに、敬語も…俺の方が年下ですから」


そういうと誠さんは笑った。微かに、だけれど、確かに笑った。

先輩も少し驚いていた。
誠さんの笑った顔は珍しいらしい。



「そうはいきません、あなたは大事なお客様ですから……奥の個室へどうぞ」

やんわりと断られた。
大事、ではないと思う。

だって大事なのは鬼塚先輩の方だから。






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あきゅろす。
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