text ケンカヲシン 『からかわないでよ』 『からかってないよ』 『うそだ』 『うそじゃない』 『うそだ』 『…うそじゃない!!』 いきなり声を荒げた。少し動揺する。 『君がうそだっていうたび、僕の気持ちがなんなのかわからなくなるだろ!!』 ベッドにばさっと腰掛ける。目元を手で覆いながら。 『…じゃあ僕の気持ちはなんなの?君を見たらコアの辺りがじんじん暖かくなるのはなに!コアの音が耳にまで届くぐらいうっさいのはなんなのさ!!』 シンジ君は泣き出しそうな苛立ったような顔をして、僕に背を向けて地べたに座った。 『……お願いだから期待させないでくれ…!』 肩が上がる。震えている。絞り出すように言った。 『…君は僕が、ヒトがもの珍しいだけなんだ…、君は自分とちがうものに興味があるだけなんだ、…勘違いしてるだけなんだよ!』 回り込んで胸ぐらを掴んで立たせた。 『ちがう!』 よろけたシンジ君の足が机にあたって派手な音を立てた。コップが倒れたんだ。 『シンジ君だけなんだ…、…他の人を見たって、こんな気持ちにならないんだよ!』『…そんな、のちがう!!うそだ!』 『五月蝿い!!!五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!嘘じゃない!!うそじゃ、ない!!』 ベッドに殴るようにシンジ君を叩きつけた。 『っ、嘘だ!!うそだうそだうそだ!!』すぐに上半身を起こして噛みつくように反論する。それに馬乗りなって、また胸ぐらを思い切りつかんだ。 『君は!僕といてコアがうるさくなったり熱くなったりしないの!!!』 『ぅ…っるさい!!!うるさい!!』 つっ シンジ君の目尻から服に、熱い水が流れ落ちた。 『…一緒に、いると、いつでも、いまでもここらへんが、熱いのは、…僕だけなの?』 ぼった シンジ君の頬に、おんなじような熱い水が落ちた。 シンジ君も負けず劣らず僕の手にぼたぼた落とす。熱い。じんわりとシンジ君の体温が肌になじんでくる。 『…な、んで、お前が泣くんだよぉ…』 手を払いのけようとする。負けない。絶対離さない。 『ちが、ちがうんだ…、ちがう、こんなの、』 鼻水を啜りながら、鼻の詰まった声でつぶやき始めた。 『僕は、…僕の熱いのは、君に、興味があるだけ、だ、…ちょっと、珍しいだけ、』『…』 『銀色の、毛、とか、…赤い目とか、ちょっと、珍し、く、て、…それ、だけだ、』 下を向いて、弁解する。尚も止まらず出てくる。 『シンジ君は、勘違いしてるだけだ。興味があると、好きを、…勘違いしてるのは、』 『シンジ君のほうだ。』 頬に両手を添えて、此方を向かせる。 『シンジ君だって、わかってるくせに』 まだ認めたくないのか、首を振りたがる。『僕は、シンジ君が好きなんだ。シンジ君もきっと、てゆうか絶対、僕のこと、好きなんだよ。』 『…自意識過剰、だろ、』 『シンジ君はその自意識過剰な奴に惚れたんだよ。』 『…、』 また下を向いてしまったので覗き込む。 『顔、赤い。』 『…ちがう、…これは泣いたからだ』 『ふぅん。そうなんだ。』 するりと前髪をなぞるように撫でた。 なんだと言わんばかりに此方を見る。 起こして、抱きしめる。まだどくどくとうるさい。 『好きだよシンジ君、ほんとに。』 『…、』 『好き。…、大好きだ。』 『わ、わか、ったよ!』 『シンジ君は嫌い?』 シンジ君は照れたように首もとに顔を埋めて、もぞもぞ言った。 『…、嫌いじゃない』 思わず幸せな溜め息をついた。 『素直じゃないなぁ。』 [*前へ] |