月に吼える銀狼
月に吼える狼・遭遇
月牙は傷だらけの身体でよろめきながらも森の中を歩いていた。
一体どれくらい歩いたのだろうか?
それすらもわからなくなるくらいに歩き続け、立ち止まる。
明るい空を見上げると、黒い鳥が優雅に飛んでいて……。
覚えているのはそこまでで、急にふつりと意識が途切れた。
《月に吼える・遭遇》
ふと意識が戻ればもう既に日は落ちていた。
(何だ…この匂いは…?)
嗅ぎ慣れない匂いに反応して起き上がれば驚いた表情の男。
「…っ!誰だ!?」
「やっと起きたか……それは此方のセリフだ。ここは黒龍一族の領土だぞ?」
警戒して唸る月牙を見て怯えるでもなく、眉を寄せながら言う男に少し警戒しながらその姿を眺めた。
肩に付く位の長さで艶やかな黒髪。
そこから後ろに向かって生える一対の赤が混じった黒い角。
縦長に裂ける瞳孔が入った赤紫の眼。
キリッと整った顔に全身黒と赤の王族を思わせる豪華な服装。
そして背に生える一対の黒い翼だ。
(先程鳥かと思ったのはコイツだったのか…。)
「黒龍一族…だと?そんな一族が近くに居たとはな…。」
「で?こんな所で銀狼が何をしていたんだ。」
「特に何かをした訳ではない…。ただ、旅をしている。」
黒龍一族は銀狼一族よりも上級一族だ。
無駄に逆らう必要もないので大人しく答えればいぶかしげな目線を送られた。
「……名は?」
「………月牙。」
目の前の黒龍は名前を聞いた瞬間、目を細めて口角を上げた。
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