予兆
時刻は夜だろうか。
空は暗く、月が浮かんでいた。
その月は赤く、ここがセイン達の居る世界ではないと暗に伝えている。
暗い殆どが枯れた木々の間を漆黒を纏った男が歩いていた。
〈何処に落としちまったんだ…〉
ブツブツと言いながら足元を見て歩く男から発せられた言葉は地上のものでなく、天界の言葉でも無かった。
〈やっぱあん時に落としたのか…取りに行くのめんでぇなぁ…〉
ポリポリと長く黒い髪を掻きながら面倒臭そうに呟き、はぁーっとため息をついた。
〈…仕方ない、行くか。〉
そうダルそうに言い赤い月を見上げた顔は、セインと瓜二つであった……。
******
ゾクッ!
突然悪寒を感じたセインはバッと振り返る。
「どしたん?」
「いや……少し寒気がしただけだ。」
「ふぅん…風邪か?」
不思議そうに尋ねてくるダクーにまさか、と頭を振って答えると再び歩き出す。
目的の街はもうすぐそこに見えていた。
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